剣買います!
俺と沙耶とリサは、ミレイヤに案内されて、ミレイヤ御用達の鍛冶屋に来ていた。
「ダンのおっちゃん、こんにちわ!客連れていたぞ!」
ミレイヤはそういうと、鍛冶屋の扉を勢いよく開けた。
おいおい、ミレイヤは扉は勢いよく開ける人ですか!
向こう側に人がいたらどうするんだか…
「ちょっと待ってろ、打ち終わったらそっちに行く」
すると、店の奥から声が聞こえた。
「おっちゃん、今何か造ってるみたいだから、店に出ている物を見ておこう。ユウとサヤ、王女様はどんな武器をご所望だ?」
「私は、武器はいりませんね。防具が欲しいです」
「私もサヤと同じです。ミレイヤさんは、ユウ様の武器選びを一緒にお願いします。防具はどこに置いていますか?」
「それなら、向こうだな」
そう言って、ミレイヤが指さした方に沙耶とリサは歩いて行ってしまった。
「なら、ユウだな。ユウはどんな武器が欲しい?」
「俺が欲しい武器か…」
俺は、元居た世界で慣れ親しんだ刀が頭に浮かんだ。
元々、大太刀に及ばんばかりの長さの刀を使っていたのだ。
今でも、あの刀が欲しいところだが、ないものをねだっても仕方がない。
でも、それを基準に選んでもいいだろ。
「刀身が細く長いものがいいな」
「細く長いか…私の奴ではまだ太いか?」
そう言って、ミレイヤが腰に携えている剣を抜いて見せてくる。
これは、見ただけでも分かる。業物だ。
白く輝くその剣は、俺の目を惹く。
しかし、刀とは違い剣は、真っ直ぐな形状をしているが、その分『軟』ではなく『硬』が高められており、刺突に適した武器だな。
刀はその逆で、片刃で少し反り返っており、『軟』を保持し斬撃に適した武器だ。
まぁ、剣で斬撃を放つことができないわけではない。
それこそ、剣との相性次第だな。
だが、ミレイヤの剣は細身ではあるが、これでも太い。
「あぁ、もう少し細めがいいな」
「ほぉ、ミレイヤ嬢の剣よりも細くか」
すると、後ろから男の声が聞こえ振り返った。
そこには、ひげを生やした50代ぐらいのおっさんがいた。
「おっと、これは驚かしちまったな。俺は、“ダン=クレスター”だ」
「あぁ、俺は キサラギ ユウだ」
「で、坊主、お前が欲しいと思っている武器だが、あると思うぞ。ちょっと待ってろ」
そういうと、ダンはまた店の奥に行って、しばらくすると戻ってきた。
「これはどうだ?」
ダンが戻ってきた時には、剣を1本持っていた。
鞘に収まっているが、細く長いのが分かる。
ミレイヤの使っている剣よりも、もっと細くされいる。
「抜いても?」
「構わねぇよ」
ダンに聞き、その剣を鞘から抜いた。
黒く輝く剣だった。
うん、手に馴染む。
何度か剣を持ち替え、確認した。
「ダンさん、これで決まりだ」
「ユウ、そんなに早く決めてしまってもいいのか?その剣の材質も聞いていなければ、他の剣も見ていないじゃないか」
「あぁ、これでいい。いや、これがいいんだ。手に馴染むこの感覚は久々だ。それにな、武器は人だけが選ぶんじゃない。武器だって人を選ぶんだって、師匠に教わってるんだよ。だから、この感覚を直感を信じたい」
「なら、いいんじゃないか。いい師匠だ。ユウの師匠ならきっと強いんだろう。戦ってみたいな」
おい、戦闘狂そういう話に持っていくかね。
師匠なら、教育してあげるとか言って、普通にボコりそうだけどな。
まぁ、世界が違うんだし無理だろけどな。
「そうだな、坊主は良い師に恵まれてるみてぇだな。よし、その剣は銀貨5枚だ」
「銀貨5枚!?安すぎないか、ダンのおっちゃん!」
「いいんだよ、そいつは細くて長いから、使い勝手が悪いと売れなかったんだ。それに、その刀身だ。重心が掴みにくいんだ。そんな奴が、使い手を見つけたんだ。そんな喜ばしいことはねぇよ!娘が婿に行くようだ」
なんか泣いてんぞこのおっさん。
でも、そこまで武器に感情を入れれるからこそのこの業物か。
これは、ミレイヤが御用達になるのも分かるな。
「お兄ちゃん、決まりましたか?」
すると、沙耶がいくつか物を持ってきた。
「ユウ様、私たち決まりましたよ」
「おう、俺も今決まったところだ。ところで、何を買ったんだ?」
俺がそう聞くと、沙耶とリサは手に持っていたコートを羽織った。
リサは、赤色のコート。
沙耶は、白のコートか。
「魔術とかに耐性があるようですよ。お兄ちゃんは、これを」
そう言って、俺に1枚渡してきた。
なんか、沙耶とリサがすごい眼差しで見てくるんだが!
ここで着ろということか。
俺は、コートだろうと思い羽織った。
「ユウは、黒が好きなのか?剣も黒でマントも黒か」
俺だけ違うじゃん!
マントじゃんこれ!
それも真っ黒!
夜に着ると、車に轢かれそうになるぐらいの闇に溶け込める黒さだよ!
あっ、この世界に車はないんだな。
「お兄ちゃん、グッジョブです」
「ユウ様は黒がいいですね」
あぁ、この二人はなんか嬉しそうにしてるし。
まぁ、喜んでるならいいだろう。
そう思いながら、俺たちはダンに金を払って鍛冶屋を出た。
「それじゃあ、ユウ。剣を買ったことだし、騎士団に戻って、戦おう!」
あぁ、そうだ。剣を買った後はこれがあったんだ…
俺は、ミレイヤに手を握られて、また、騎士団の訓練場に戻って行った。
沙耶とリサはそのあとをついてきていた。




