先ずは腹ごしらえだ!
俺と沙耶とリサは3人で、王都の街を歩いていた。
リサは、王女なので騒ぎになりかねないと、ローブに顔を隠している。
白いローブか。ミレイヤが着ていたローブよりも綺麗だが、正体を隠す為に着るのに、逆に目立つだろこれは。
そう思いながら、街の人の反応を確認するが、まったく気づいてなさそうだな。
「先ずは、食事にしましょうか。ちょうどお昼ですし、ユウ様もお腹が減っているみたいですし」
そういうと、リサが一つの家を指差した。
「あそこにしましょう。騎士の方々が美味しいと言ってたのを聞いたことがあります。一度行ってみたかったんですよ!」
リサは機嫌よさそうに俺たちの手を引き、店に入った。
「いらっしゃいませ~」
出迎えてくれたのは、エプロンを着た少女だった。短い赤い髪に頭には犬の耳らしきものがある。そして、腰あたりから、尻尾らしきものがチラチラ見える。
「お客様、そんなに熱く見られては困ります…」
「えっ!いやいや、そんなつもりじゃ…っ!」
急にその少女が顔を赤くして両手を頬において、クネクネし始めた。
そんな少女とは裏腹に、俺の横では、俺に向けられる冷たい視線があった。
俺は、そんな視線を受けながら、背中に嫌な汗をかく。
というか、あの少女がクネクネした瞬間、俺の手を握るリサの手にものすっごい力がかかったんだが!
横を見るのが怖い!
「冗談ですよ~」
少女はそういった。
その冗談で、俺は今ものすっごい冷たい視線を浴びさせられてるんだが!
「お兄ちゃん、冗談なんですか?」
沙耶の冷たい言葉が横から聞こえた。
俺は、必死に頷いた。
もちろん、前を向いてだ。
だって、今横見れないんだから仕方ないだろ!
「お兄ちゃん、どうしてこっちを向かないんですか?」
それは、沙耶とリサが怖くて見れないんだよ!
リサの握る手は、ますます強くなってるし!
「お客様~お好きな席に座ってください~」
少女はマイペースだなおい!
この状況を作り出した元凶、あんただろう!
「お兄ちゃん、あとでじっくり話し合いましょうか」
「ユウ様、先ずは座ってからお話です」
「はい…」
俺は、沙耶とリサの冷たい視線を一身に受けながら、4人がけのテーブルに座った。
「ユウ様、どうして、熱い視線であの子を見てたんですか?」
座ったとたんこの話ですか!
「そ、それは、あんなフサフサな耳と尻尾が生えた人を見たことがなかったから」
「ユウ様は、獣人族をご存じないのですか?サヤもですか?」
リサは驚いたようにこちらを見てきた。
「私も、知りませんでしたが、街を歩いている時に、何度かそういった人をお見かけしたぐらいですね。まさか、お兄ちゃんが街にいる人が様々な方がいたのに気づいてないとは…」
なんだ、沙耶、その残念な人を見る目は!
だって仕方ないじゃないか、始めてみる街に街並みを楽しんでたんだよ!
「そうですか…と、その前に食事を頼んでしまいましょう。何にしますか?」
そういって、リサは俺たちに文字の書かれた物を見せてきた。
なんだ、これは!読めない…
「私は、これにします。」
そういって、沙耶は一つのメニューを指差した。
「えっ!沙耶読めるのか!」
「当たり前です」
「ユウ様、もしかして、文字が読めないのですか?」
なんか、街に着てから俺何も出来てなくないか…
てか、沙耶なんで読めんの!
こんな文字見たことないぞ!
「サヤは、読めるようですね」
「それは、書庫で勉強しましたから。お兄ちゃんみたいに無学で生きていけるとは思ってないのです」
妹よ、その言葉、お兄ちゃんにものすっごく突き刺さるのだが…
「大丈夫ですよ、お兄ちゃん。私がずっと一緒にいれば問題ないんですから」
沙耶はそういうと、満面の笑みでこちらを見てきた。
なんだ、そのうれしそうな表情は!
「なっ!サヤ、私がユウ様と一緒にいれば問題ないんですから。その言葉はちがいますよ」
「あはは、可笑しなこといいますね」
「サヤこそ、あはは」
今度は、二人が睨み合ってるんだが!
「お客様~ご注文決まりましたか?」
すると、横から先の少女が出てきた。
おぉ~さすがマイペース少女。雰囲気とかもう関係なしに来るな!
「私はこれを」
「私はこちらをお願いします」
「じゃあ、俺はオススメで」
「かしこまりました~」
はぁ、オススメで通ってくれてよかった。
でも、文字は勉強しないといけないな。
そうしながら、俺たちは賑やかな食事の時間を過ごしていった。
「銅貨20枚です~」
「白金貨1枚でお願いします」
リサはそういうと、袋から白金貨を一枚取り出し、少女に渡した。
「白金貨!?少し待ってくださいね~」
そういうと、少女は走っていった。
そして、すぐに戻ってきた。そして、こちらに袋を一つ渡してきた。
「金貨99枚と銀貨99枚、銅貨80枚入っています」
「ありがとうございます」
リサは、その袋を受け取った。
なるほど、
白金貨1枚=金貨100枚=銀貨10000枚=銅貨1000000枚
で、3人分の食事で銅貨30枚ほどの価値か。
ちょっと待て、フォート国王から貰った白金貨って、10枚だろ。
結構な額貰ってんじゃないのか?
まぁ、あって損はないか。
そう思いながら、店の外を俺たちは出た。
「ユウ様、食事中におっしゃってました冒険者の話なのですが、今から登録に行きましょう」
俺たちは、食事中に今後の話をしていた。
そのときに、冒険者の話があがり、俺たち3人は冒険者に登録しようと話していた。
「いいのか、リサは別に登録しなくてもいいんだぞ?王女がそんなことする必要もないだろうし…」
「ユウ様、言いましたよね。私もユウ様やサヤと一緒にいたいんです。私だけ除け者なんて嫌です」
「お兄ちゃん、それ以上言うのはダメですよ。リサが決めたんです。心配なのは分かりますが、私達と一緒にいるんですから問題ないでしょう」
「サヤ…」
なんだ、沙耶に裏がある気しかしないのはなぜだ!
お兄ちゃんは信じてるぞ。沙耶がリサの事を思って言ってることを!
「冒険者になったら、リサに実力の差を教えてあげますよ。お兄ちゃんには私がふさわしいってことを」
聞こえましたよ、沙耶さん!
俺が信じると言った、1秒後ぐらいに裏切られましたよ!
お兄ちゃんびっくりですよ!
リサは聞こえてないのか、機嫌よさそうに歩いていた。
そして、リサの後について、冒険者登録に向かうのだった。




