女の子と…
俺たちは、騒ぎながらも王室に着いた。
そして、王室にいるフォート国王の目の前にガリヤを転がした。
ガリヤはまだ気絶してるけど。
「ユウ、これはどういうことだね?」
「どうも何も、あんたからの依頼を遂行しただけだ。」
そういうと、フォート国王は椅子から立ち上がり、ガリヤを見下ろした。
「あの、ユウ様。お父様からの依頼とは何なんですか?」
「あぁ、言っていなかったな。もともと、今日反乱勢力が動く可能性があるから、俺たちにこの王城に泊まり何かあれば動いてほしい。そして、一番に優先するのはリサの命だ。そう依頼してきた。おそらく、このおっさんは、リサが依頼を遂行中襲われているのを知っている。そして、再び襲うとすればその日に来る。反乱勢力とやらにも計画があったんだろうな。」
「うむ、そうだ。ユウの言った通り余はリサが襲われたのを知っておった。それが、反乱勢力が引き起こしたといことも、今夜また襲い来るであろうことも。リサ、お主を囮に使ったんだ。父親として失格だな。謝って済むことだろうとは思っておらぬ。だが、謝罪だけはさせて欲しい。すまんかった。」
フォート国王はそういうと、リサに向かい頭を下げた。
そして、顔を上げると俺と沙耶を見てきた。
「そして、ユウにサヤ、無理な依頼をしてしまったが、娘を守ってくれてありがとう。」
次は、俺たちに頭を下げてきた。
沙耶はそれも気に食わないのか、不機嫌そうにそっぽを向く。
「礼なんていらない。それよりも、依頼完了の報告をさせろ。」
そういうと、フォート国王は頭を上げた。
「うむ、そうだな。何があったか教えてくれ。」
「まずは、この王城で俺たちと戦闘をしたのは、ルクス=サイフォンという男とガリヤ=サーベルの二人だ。まずは、ルクスだがサヤが報告を頼む。」
俺がそういうと、溜息をつきながら話始めた。
「はぁ、ルクスはお兄ちゃんを殺そうとしたので殺しました。」
「それだけ!?てか、殺してたのかよ!」
「当たり前です。お兄ちゃんを殺そうとしたのですから。」
おいおい、そのお兄ちゃんはガリヤに人の命について説いていたんだぞ。
「ルクスの亡骸は?」
フォート国王は、サヤに聞いてきた。
「書庫の前にでも転がってるんじゃないですか。」
サヤは興味なさそうに淡々と答えた。
サヤよ、お兄ちゃんとして妹が心配になるぞ。
「分かった。他の者に回収に向かわせておこう。」
「じゃあ、次はガリヤについてだな。俺が付いた時には、ガリヤはすでにリサの部屋にいて剣を振るっていた。だから、倒してこうして気絶している。それと、ガリヤを倒した後に、リベルと名乗る魔族がいたが、戦闘にはならず魔族は消えた。」
「魔族だと!?まさか、反乱勢力に魔族が加担しているとは…」
「それと、人を強制的に魔の者にすると思われる石を使用している。ルクスはその石を飲み。ガリヤはその石を飲む前に沙耶が防いだ。」
「禁忌のあの石のことか!?」
「どの石かはわからんが、そうなんだろう。」
リベルから弾きとばした石はリベルが消える際に持っていってしまったから実物はないけどな。
フォート国王は終始驚いていた。
「うっ。」
と、ガリヤの奴目が覚めたみたいだな。
「うむ、報告ご苦労であった。ガリヤが目覚めたようだな。そ奴から事情を聴くとしよう。お主らはどうする。部屋に戻って休んでもかまわんが。」
「いや、俺は残るさ。国の事情とかは興味ないが、ここまで巻き込まれたんだ。最後までいさせてもらおう。」
「「私も残ります。」」
沙耶とリサも思うところがあるのか残るそうだな。
「うむ、ではガリヤよ。起きろ。」
「フォート国王!?」
「お主、今回のことはどういうことだ?」
「私は失敗してしまったのじゃな。話すことは何もない。殺したくば、殺せ。」
ガリヤの奴、そういうとフォート国王から目を逸らした。
すると、それに反応したのは沙耶だ。
「ふざけないでください。」
「がはっ。」
見えない何かがガリヤを殴り、その衝撃で数センチ浮かびあがる。
あぁ、風か。俺たちの間にわずかな風が引き起ったことでわかった。
「私はすぐにでも殺したいんです。ですが、こうして生きている意味が分かりますね。私たちはあなたの情報が欲しいんです。それとも、死ぬよりも苦しい思いしたいですか?」
「ひっ!」
沙耶からはあからさまな殺気があふれ出していた。
「もういいです。」
そういうと、沙耶はいつのまにか水でできた剣を握っていた。
「どこがいいです?耳?それとも親指?あぁ、それともあなたの粗末なものを切り落として女にしてあげましょうか。」
沙耶は、笑顔のままガリヤに笑いかける。
そういうと、ガリヤの足の間に剣を刺した。
「分かった!分かった!話す、話すから!」
「最初からそう言えばいいんです。立場弁えてください。」
沙耶さん妹ながら怖い。
今回の戦いで沙耶の闇の部分をめっちゃ見た気がする。
沙耶だけは怒らさないでおこう。
「どうしたんですかお兄ちゃん?」
笑顔で俺を沙耶が見てくる。
「い、いや、何もないぞ。」
「そうですか、ふふっ。」
何笑ってるのこの子!
「ガ、ガリヤ。では、どうしてこのようなことをした?」
「それは、この国が腐っておるからじゃろう。儂らはこの国を良くするために国に革命を起こすんじゃ。
国王なら知っているじゃろう“穢れの民”を。20年前じゃ。前国王が戦争を起こした際に、その国王は軍師たちの考えを受け入れず、自分が考えた無謀な策を戦士たちに強要した。その策が行われてから、半日で、その戦いに参戦していた大勢がそれにより命を落とした。そして、戦に敗れて何人もの民が奴隷として、隣国の“サクハラ王国”に捕らわれた。しかし、国王は戦を途中で抜け、一人だけ王都へと逃げた。
そこまでにある村も見捨てて。そんな、国王に異を唱えに行ったものたちがいた。しかし、国王はそれを聞かず、その者たちをミラージュ王国の一番端の村まで追いだした。そこにいるものを穢れの民といい差別してじゃ。
今、その者たちが何をしていると思っておるか?
その者たちは、すぐに盗賊の標的となった。もちろん、その中には戦士がいたから何度も抗ったが何度も来る盗賊たちに戦士たちは消耗し、負け死んでいった。そして、大人の男、老人たちは殺され。女子供は、奴隷として売られ。今では、この国の奴隷として生きておる。
そして、私の父もそこにいた。父は殺され、母にその報告が来たら、母は自ら命を絶った。
全ては、この国の王家の腐敗が起こしたことだ。
儂はそんな国を変えるために反旗を掲げたんじゃ。」
ガリヤは憎しみをかみしめた表情でフォート国王に訴えた。
しかし、それに答えたのはフォート国王ではなく沙耶だった。
「20年前?どうして、それでリサが殺されかけているのですか?リサは生まれてもないじゃないですか!確かに、その前国王は愚王です。そんなことがあれば怒りを抱くことも分かります。ですが、王家の者だけであるリサが標的にされるなんて、あなた達は前国王のような愚かな真似をしようとしているのですよ!」
「サヤ…」
沙耶が怒りを露わにしていた。今にでも飛びかかりそうな勢いだ。
「確かに、その小娘には悪いとは思っておるが、王家を滅ぼすためには重要だったんじゃ。」
「リサは、あなた達の目的のための駒じゃない!国王もリサを囮にするし、あなた達は自分たちに目的のために殺そうとするし…リサをなんだと思ってるんですか!」
「「…」」
沙耶の怒りを受けたガリヤと国王は黙ってしまった。
あぁ、このままだと話が進まないな。
「沙耶、落ち着け。お前がどれだけリサを想ってるかは分かったから。」
「そんなんじゃないですよ。この人たちが許せないだけです。すいません、話の腰を折ってしまいましたね。」
「サヤ、ありがとうございます。私嬉しいです。」
リサが沙耶に潤んだ目でそういうと、沙耶は照れ臭そうにそっぽを向いた。
案外、いい二人なのかもしれないな。いつもの言い争いさえなければ。
「では、次は俺から質問だ。お前と一緒にいた魔族はなんだ?」
「あ奴は、儂らが計画を立てておると、当然現れた。最初は、敵かと思ったが、儂らに加勢すると言ってくれたのでな、当分の間利用させてもらったんじゃ。」
「人が魔族と手を組むなど!ガリヤよ何を考えておる!」
「もちろん、信用しきっていたわけではないが、じゃが戦力としては申し分なかった。だからじゃ。」
「利用されてたのはガリヤじゃねえか。」
「…」
俺がそう呟くと、再び黙ってしまった。
はぁ、まぁこれぐらいわかればいいか。
「じゃあ、フォート国王後の処理は任せる。俺たちは部屋に戻るわ。」
そういうと、沙耶とリサの手を引いて外に出ようとした。
「うむ、ご苦労であった。明日の朝、依頼の報酬を与える。また、ここに来てくれ。」
俺たちはそのまま、王室を出た。
「ユウ様、サヤ。今日はありがとうございました。」
リサが立ち止り俺たちに頭を下げてきた。
「やめてください。お礼を言われることはしていません。」
「そうだな、最後はリサがいてくれたから勝てたんだし、リサお前があの時に成長したから俺たちが今こうして生きてるんだ。お礼を言うのは俺の方だ。ありがとうな。」
リサは、顔を上げてこちらを見てきた。
その顔には涙が流れていた。
「あの、お二人にお願いがあるのですが、今日は一緒に寝ていただけませんか?」
まぁ、あんなこともあればな。
「一人で寝るのが怖いのですか?」
沙耶さん直球で言いますね!
「怖いですよ!怖いですから一緒に寝てください。」
「仕方ないですね、お兄ちゃんだけを誘ってたなら少しお仕置きをしようかと思いましたが、私が一緒なら間違いは起きないでしょうからいいですよ。」
了承しちゃうんですね!
案外あっさりと!
間違いって何ですかね!お兄ちゃん信用されてないのかな!
「あぁ、お兄ちゃんを信用してないとかじゃないですよ。その逆です。リサがお兄ちゃんを襲わないからが心配なんです。」
「私、そんなことするように見られてたんですか!」
「「…」」
「あ、はい。なんか、わかったんで答えなくてもいいです。」
まぁ、そんなこと言いながらリサが怖がってたのは知ってるし、戦いが終わってからも今まで少し体が震えてるのも分かってる。
「俺もいいぞ。俺的には嬉しいだけだしな。」
「ありがとうございます。」
そういうと、俺たちが最初用意された部屋とは別の部屋に案内された。
広い部屋に大きいベッドが置いてある。
そして、ベッドで俺を真ん中にして可愛い女の子が左右を挟んでいる。
なんだ、この状況は!童貞の俺には荷が重すぎるぞ!
すると、急に左手を握られた。
「ユウ様、今日だけはお許しください。」
俺だけに聞こえるような声でリサがそう言ってきた。
まぁ、いいかと思い右をチラっと見ると、
沙耶と目が合った。
「ジー」
「言葉にしてるよこの子!」
「なんですかお兄ちゃん。寝るんですから静かにしてください。」
「理不尽に怒られた気がするんだが!」
「うるさいです。」
「はい。」
そんなこんなしながら俺は、女の子二人と一緒に一夜過ごしたのだった。




