死にました?…死んでませんよ!
~リサ=ミラージュside~
扉をノックされ、私は真夜中の訪問者がユウ様だと思い、扉をを開けた。
しかし、扉の前にいたのはユウ様ではなく、中年太りしたおじ様ガリヤ=サーベルだった。
「ガリヤこんな夜更けにどういった用事でしょうか?こんな夜更けに来るのは失礼ですよ。」
ユウ様じゃないと知り、落胆する私。
それもあってか、ガリヤへの対応が冷たくなってしまった。
「あの、小僧ではなくて残念だったのう。」
ガリヤはそういうと、ニヤッとして私を見る。
私はそれを見ると、ガリヤを睨んだ。
何ですかこの人は。
「いえ、ユウ様もお暇ではないでしょうから仕方がないことです。また、後日本日のお礼は言いに行くつもりです。」
「それができればいいのですがね。」
「それは、どういうことですか?」
「そのユウ様という小僧は、そろそろ私の手下に殺されているころだと言ってるんですよ。相手が死んでいれば、お礼なんて言えませんからのう。」
ガリヤの言葉を理解するには時間がかかりました。
ユウ様が殺されてる?だって、ユウ様はあんなに強いんですよ。
「嘘です!ユウ様が殺されるわけありません。」
「あなたがどう思おうとかまいませんがな。じゃが、これだけは言っておこうかのう。あの小僧は、あなたに会ったから死んだのじゃよ。あなたはオークに襲われて死ぬはずじゃった。なのに、あの小僧が邪魔をした。そして、またここでもあなたを守ろうと儂の邪魔をしようとしたのでな死んだんじゃ。すべては、あなたが生き残ってしまったからじゃ。あなたがあの小僧を殺したんじゃよ。」
私がユウ様を殺した?私に会ったからユウ様は殺された?
私に会わなければユウ様は死なずに済んだ。
「うわぁぁぁ。」
私はその場に崩れ大粒の涙を流していた。
すると、目にユウ様がオークを倒して行くカッコイイ姿が浮かび、そして、馬車で話しているときに見せた無邪気な笑顔が浮かんだ。
私は、何を諦めてるんですか。
私は、ユウ様に出会って恋を知った。
あの人と一緒にこれからを生きたいと思った。
生きていたいと思った。
私にそれを教えてくれたユウ様をどうして信じていないのですか!
私は自分の愚かさに怒りが沸き上がった。
そして、涙をぬぐい立ち上がった。
「ユウ様は生きています。」
「泣きじゃくるのは終わりですかな?言ったはずですよ、あなたがどう思おうともかまわないと。あなたもここで死ぬんですからな。」
そういうと、ガリヤは腰に携えていた剣を抜き私に振るってきた。
私は、死にたくない!
生きたいって思えたんです!
ユウ様にまた笑って会えるのを信じてます!
なので、死ぬのが怖いです!
惨めでもいい、ただ生き延びることだけを考えた。
私に振るわれた剣を後ろに転がり避けた。
「こんなところで死ぬわけにはいきません!私は生きたいんです!」
私は、ガリヤを再び睨び叫んだ。
「よく言った、リサ!」
どこからでしょうか。ユウ様の声が聞こえた。
生きてると信じたユウ様の声が。
~キサラギ ユウside~
俺は、リサの部屋があるといわれてた場所までついた。
その部屋は扉が開いていた。
「こんなところで死ぬわけにはいきません!私は生きたいんです!」
突然そんな声が聞こえた。
リサの奴、ちゃんと生きたいって思えてるじゃねえか。
フォート国王が言ってたこと間違ってたのか、それともリサが変わり始めたのかはわからない。
でも、ちゃんとその言葉が聞けた。
「よく言った、リサ!」
俺は、リサのその言葉に胸が震えた。
そう思うと、一言叫んでいた。
「なっ!その声、小僧か!」
なるほど、黒幕はやっぱりガリヤだったか。
俺は、部屋が部屋に入るとそこには剣を抜いたガリヤとガリヤを睨むリサがいた。
リサは俺に気づいたようで涙した。
「ユウ様、よくご無事で。」
「あぁ、沙耶が助けてくれてな。沙耶は今も戦ってるがな。」
「はっはは、そうかあの娘の方が相手をしておるのか。じゃが、あの娘も時間の問題じゃないかのう。ルクスは強いぞう。」
「あぁ、強いだろうな。現に俺は殺されかけた。でも、沙耶は勝つよ。」
「どこにそんな自信が。」
「グダグダうるせえよ。沙耶は勝つ。それ以上でも以下でもない。だから、俺は俺の戦いに集中する。」
「チッ」
このおっさん当たり前のように舌打ちしてきたよ。
うわぁ、この人の本性もなんかわかってきた気がする。
この世界の人は猫かぶりばっかりかよ。
「それよりも、少し話そうぜ。反乱勢力のガリヤ。」
「反乱勢力?」
「あぁ、この国には現国王に付き従うものと、それに反発する者がいるそうじゃないか。
そして、ガリヤはその反発するものってことだな。それが、現在勢力を伸ばし反乱勢力までなった。
そして、その反乱勢力の狙いはミラージュ王国第二王女リサ=ミラージュの命だな。」
「え?」
「はっはは。そこまで分かっておるなら何も話すことはないじゃろうに。」
それを聞くと、リサは驚いていたが、いやいや、どう考えてもこの状況になればわかるでしょ。
「いや、あんたらの事情なんてどうでもいい。だが、聞きたいのは、俺と会った時オークと戦っていたのは誰なんだ?」
「オークと?あぁ、あれは儂らの仲間じゃよ。騎士なんざあそこには一人もいなかった。」
「何人も死んでたぞ。」
「儂らの目的は、この国をより良い国に変えることじゃ。それには、現王家の人間は邪魔なんじゃ。じゃから、それを達成するための犠牲じゃ。誰かが命を張ることでこの国を変えることができるんじゃ。それに、死んだ者も本望であろう。この国を変えるために死ねたんじゃ。戦力はまた補給すればよいしな。」
ガリヤはそういうとニヤリと笑った。
「ふざけるな。」
こいつの話を聞いてくると怒りが沸き上がってくる。
「ふざけたこと言ってんじゃねぇよ。国を変えるために死んだ?命を捨てることで帰れる国なんざロクな国じゃあねぇよ。そんな国は滅べばいい。それに、お前は、そいつらのことただの駒としてしか見てないだろ。死んだら補給すればいい?人の命を何だと思ってやがる!人の命はお前の駒でもものでもないぞ!失った命は戻ってこないんだぞ!命をなくしたものの家族は大切なものはその死を受け入れなきゃいけないんだぞ!
俺はお前の考えが嫌いだ。死んでその考え直してこい!」
俺は、右腕を肩より高く上げ、左腕を腰あたりまで落とし、木刀を構えた。
「そんな木刀で何ができるというんじゃ。」
「木刀甘く見るんじゃねえよ。これも立派な武器だ。」
俺はそういうと、左足に思いっきり力をこめ一気にガリヤとの距離を詰めた。
ガリヤは反応できてない。
俺は、ガリヤの心臓目掛け木刀を突き上げる。
ガーン。
木の打ち付けた音が響く。
魔術がそこには構築されており、防がれた。
想定内だ。次の動作に移るまで時間もいらない。
そのための2刀流だ。
正面から斬撃を数回行った後に、瞬時にガリヤの後方に移動し斬撃を放つ。
しかし、斬撃を放つ度に木刀の乾いた音が鳴り響くばかりだ。
くそ、全部防がれている。
「何をしている小僧?儂を殺すのであろう。どうした、一撃も届いてないではないか。」
ガリヤの奴は、余裕そうにいやな笑みをこぼしてるだけだし。
魔術発動の発動に予備動作ないのかよ。
ドカッ!
背中に急に衝撃が走った。
「がはっ!」
後方には魔術が構築されており、そこから攻撃を受けたのか。
俺は、態勢を崩しそのまま転がってしまう。
直ぐに態勢を立て直したが、ガリヤの剣が目の前まで迫ってきていた。
反射的に後方に飛んで回避したが、危なかった。
これは、一つ手札斬らないと無理そうだな。
そう思うと、また木刀を構えなおした。
「《リミット解除》」
俺は、自分に言い聞かせるようにそう呟いた。




