真夜中に
フォート国王からの依頼を受けた後、食事をご馳走になった。
今日は、王城に泊めてくれるそうだ。沙耶は、依頼までの時間王城の書庫に行くそうだ。
魔術に興味が出たらしく、魔術について学びたいそうだ。
俺は、軽く体動かしたいというと、フォート国王が王都の騎士団訓練場に案内してくれて今、騎士団の集まる小屋で騎士と対面している。
「国王様、こんなところまでどうされましたか?」
「うむ、娘を助けてくれたこの者が、身体を動かしたいということでな、少しあいてをしてやってもらえるか?」
「はっ。了解しました。」
「では、余は執務に戻るのでな後は頼むぞ。」
フォート国王は騎士と少し話すと、早々と王城内に戻って行った。
すると、先ほどまで話していた騎士がこちらに来た。
「私は、ここの騎士団の副団長を務めている“レイ=サージュ”だ。レイと呼んでくれ。君は?」
茶色い髪を長く伸ばし、後ろで1本にまとめている。
顔も整っており、爽やかな男だな。
「俺は、キサラギ ユウだ。ユウって呼んでくれ。」
「ユウは、武術や剣術の経験は?」
「どちらもあるよ。4年間だけだが、“師匠”に徹底的に仕込まれたからな。今でも、鍛錬は怠ってないからな。」
沙耶や家族にも言ってないが、毎日朝と夜に軽く鍛錬は行っていた。
これは、俺に力の使い方を教えてくれた師匠の教えでもあるからな。
鍛錬は怠るなと。
「師匠がいるのか。なら、期待はできそうだな。では、軽く体を動かそうか。
模擬戦だよ。そこに並べてある木刀を使うといい。」
そう言って、レイは隅に数十本並べてある木刀を指さした。
軽く体動かそうで、模擬戦かよ!
この人、顔に似合わず戦闘狂か!
そう思いながら、木刀を一本手に取った。
「準備はいいか。外に訓練場所があるからそこでしよう。」
そういうと、レイに連れられて、小屋の外に出た。
他の騎士達も興味があるようで、一緒について出てきた。
そして、俺とレイは間合いをあけて立っている。
それを見るように騎士達が周りに集まっていた。
先まで訓練場で訓練していた騎士達もてを止めて、周りの見学している騎士達に混じっていく。
鍛錬がてら、軽く体動かしたかっただけなんだけどな。
どうしてこうなった!
まぁ、いい。模擬戦とは言え相手は騎士だ。
俺はレイに集中する。
レイは木刀の剣先をこちらに向け構える。
さて、俺も構えるとするか。
俺は、両手で刀を持ち、刀身を左に傾けた形で構える。
そして、腰を落とし姿勢を低くした。
「それがユウの構えたか。変わった構え方をするのだな。」
「あぁ、これが俺にとって一番の構えなんだよ。そういうレイは、基本的な構えだな。」
「基本はおさえておくものだ。それでは、お互いに準備はできたようだし始めようか。」
そういうと、レイはこちらに突っ込んできた。
おいおい、合図なしかよ!
さすがは騎士、剣筋が鋭いな。
俺は、突っ込んできたレイの剣筋を受けずにかわした。
だが、レイは横る方向をよんでいたのか、すぐに俺に剣が襲い来る。
さすがに次は避けれないな。
そう考えると、避ける態勢から受けの態勢に瞬時に切り替えレイの剣を受けきる。
重いな、スピードだけじゃなく重さもあって攻撃力半端ないな。
これは、直接くらうと痛そうだ。
「ほう、瞬時に態勢を切り替えるか。それに、反射能力に私の剣を受けきる能力。すごいな。遠慮なんてしてる暇はなさそうだ。」
そういうと、レイの剣に込める力が一気に変わった。
いやいや、最初から遠慮なんてしてないだろ!
俺はレイの剣の力を流し、後方へ引いた。
「次は俺からいかせてもらうぞ。」
そういうと、一気にレイとの間合いを詰めた。
レイは反応しきれていない。
隙だらけだな。そう感じながら、剣を振るった。
「くっ!」
反応したのか?いや、おそらく反射だろうな。天性的なものかそれとも経験がそうさせたのか。
まぁ、どっちでもいい。これでチェクメイトだ。
防がれてすぐに俺は、レイの後方に回ると木刀を軽く首筋にあて止めた。
「私の負けだ。完敗だよ。強いんだな。」
そういうと、レイは爽やかな笑顔でこちらを振り向いた。
負けて、これかよ。
こいつ戦闘狂決定だな。
周りの騎士達は、それを見て盛り上がっていた。
「俺もいい運動になった。ありがとうな。」
「いや、私もこれほどのモノを経験するとは思わなかったよ。もしよかったら他の騎士達とも手合わせしてやってくれないかな?いい刺激になると思うんだ。」
「いや、今日はあと素振りとかぐらいにしておきたいかな。」
「そうか、残念だ。なら、あとは自由にしてるといいよ。もし、また模擬戦とかしたくなったら呼んでくれ。だが、騎士団長には模擬戦見られない方がいい。あの人なら、襲い掛かってきそうだ。」
おいおい、そんな騎士団長いいのかよ。
獣を想像してしまったぞ。
というか、周りもう真っ暗じゃねえか。騎士ってこんな時間まで訓練してるのかよ。
「自由にって言われても、もう真っ暗じゃないか。」
「そうだな。だが、明かりは絶やしてないから訓練はできるだろう。」
「それは、そうだが。こんな時間まで訓練してるのか?」
「私たち騎士は交代で王城に待機しているんだ。何かあってもすぐに動けるようにな。
だから、私たちはまだ仕事中なんだ。訓練も大切な仕事だぞ。」
それを聞き、苦笑いしながら王城に目を向けると、ある人物が目に入った。
「レイ、悪い!木刀2本借りていくな!」
そういうと、レイの持っていた木刀を借りて王城に向かって走った。
「あっ、おい!どうしたんだ?おーい!」
レイの呼ぶ声をよそに俺は走っていった。
先ほど見えたのは、玉座の間でフォート国王の横にいたガリヤだ。
国王に聞いてた人物ですぐにわかった。
そして、その人物が歩く方向にあると思われるのが、リサの部屋だ。
リサの部屋は前もってフォート国王から聞いていたから間違いない。
ガリヤが嫌な笑みを浮かべてたのが気になる。
王城に入り、全力で走ってリサの部屋まで向かう。
おかしい。走っていて気になったのは、誰ともすれ違わない。
そんなことが頭に過った時、それは突然起こった。
目の前に魔術式が突然現れた。
そして、目の前が真っ赤に染まった。
ドーン。
俺は、瞬時に1本の木刀で防御の構えを取ったが、間に合わなかった。
目の前で爆発が起こり、俺はそれを直撃した。その勢いで後方へ激しく飛ばされ、廊下に置いてある花瓶を割りながら壁に激突した。




