それぞれの想い〜リサ=ミラージュsid〜
私は、両親と楽しい時間を過ごした記憶がない。
別に記憶喪失とか小さい時過ぎて覚えてないだけというわけではない。
両親と過ごした時間が少ないのだ。
私が生まれてから今まで面倒を見てくれたのは、王城に勤めてる世話係だ。
両親よりも長い時間一緒にいて、両親よりも家族だと思えるほどだ。
お父様やお母様は、いつも忙しそうにしている。
私がいつも見ているのは、そんな国王としての父、王女としての母だった。
家族として見れることがない。本当に家族なのかと思ってしまう。
でも、いつかは私もそんな風にならなければいけないと世話係が言う。
だから、私は王女として立派であろうと生きてきた。母の背中を見て、父の偉大さを感じて。
私にはそれが生きる意味だった。
私が15歳になったある日、お父様から呼び出しがあった。
お母様は、隣国のアインス王国に行かれていて王城にはいなかった。
何か会ったのでしょうかと思いながら、呼ばれた客間に出向くと、そこにはソファーに腰掛けるお父様とその横でたっている中年太りした40歳ぐらいのおじ様がいた。
「リサ、この男はガリヤ=サーベルだ。余の副官をしておる。立って話すのもなんだ、そこへ座れ。」
私は、言われたとおりにお父様の前のソファーに座った。
「お父様、どういったご用件でしょうか?」
「うむ、リサ=ミラージュよ、お主に遂行してもらいたい依頼がある。この依頼の遂行は王命令である。
依頼内容だが、リント村に魔獣が入り込み、被害が出ているそうだ。リサには、被害の確認と魔獣除けの結界を掛け直ししてくれ。
リサは、魔法に関しての知識と魔術が使えると世話係より聞いておる。魔獣除けの結界も熟知しておるそうだな。」
私は頭が真っ白になった。私は冒険者ではない。今まで教えられてきた知識と魔術の使用が出来るだけだ。
お父様が言った依頼は、通常冒険者が遂行するものだ。それも、魔獣による被害が出ている。
次第に頭は働きだし、私の中を不安が埋め尽くしていた。
「国王様、娘一人にこの依頼を行わせるのは酷でしょうから、私が騎士を何人か見繕い護衛につけましょう。」
「うむ、頼んだ。」
「はっ。」
「では、リサ3日後の明朝に出発してくれ。」
そういうと、お父様は部屋から出て行った。
ガリヤが言った護衛。それがいるだけでも少しは不安が拭える。
でも、お父様私の返事すら聞いてくれなかった。
それから3日はすぐに過ぎた。
これも王女の務めだと自分に言い聞かせ、護衛の騎士たちがいる王城の門に出て行った。
「これよりリサ王女がリント村の危機を救う為に出国される。自らがすすんでいかれる誇り高き我らが王女に喝采を!」
「「「うぉぉ!姫様!」」」
馬車に乗り、王城の門を出ると大勢の国民が左右に立ち並んでいた。
この国は、こんなにも人がいたんですね。
始めてみる城外の町並み。そこに住む人たち。
周りの人たちは盛り上がってる。でも、私には高揚感などなかった。
こういうときはどうするのが王女として正しいのでしょうか。
そう思いながらも、何もせずただ馬車の中に座っているだけで、町の外に出て行ってしまった。
町を出ると、そこからは何もなくリント村に到着した。
「リサ様、遠路遥々お疲れ様です。王女様がこのような辺鄙な場所にどのような御用事でしょうか?」
馬車を降りると、背の低いおばあちゃんが迎えてくれた。
どうやら、この村の村長らしい。
「この村に魔獣による被害が出た言うことで様子を見に来ました。」
私がここまで来た経緯を説明すると、村長は首をかしげた。
「そういった魔獣の被害は、聞いておりませんな。ですが、せっかくきていただいたのです。盛大に歓迎いたします。今日は、お休みになってください。」
魔獣の被害がない?私は、被害が出たってことできたのに?
私は不思議に思いながらも、案内された家に荷を降ろす。
その後、村に掛けられている結界を確認しに騎士たちと一緒に回った。
すべて回り終わった。おかしい。結界すら異常がなかった。
となると、魔獣ではなく、魔物?魔族?それとも他種族?結界は魔獣にしか効かない。
結界に異常がないとすると、それが考えられる。
色々、考え付く限り考えてみたが、一番頭にあるのは、“偽の情報”ということだ。
いえ、人を疑うのは王女としていけませんね。そう思いながら、村にいた人たちに話を聞いていった。
収穫としては、ゼロですね。結界にも異常はないし、村の人たちも被害なんて出てないといっていた。
被害がないことはいいことなのに、なぜか落ち着きませんね。
今日は寝ましょう。
そして、次の日私はリント村を出た。
王都への帰り道、突然馬車に衝撃が走った。
外を見ると騎士たちが剣を抜いていた。
そしてその前には、オークの群れと交戦していた。
しかし、見る見るうちに騎士は倒れ、そこには血溜まりができていった。
あぁ、私ここで死ぬのかな。未だ戦ってる騎士を信じずに私はあきらめていた。
これじゃあ、王女失格ですね。王女らしく生きようとしたのに…
何も出来なかった…
悔いがあるとすれば、人として恋してみたかったな。
好きな人と一緒の時間を過ごすってどんな気持ちだったのでしょう。知りたかったな。
大切な人、家族が欲しかった。
あれ?なんでだろう、目が熱い。
あぁ、私泣いてるんだ。
死ぬことは怖くないのに。涙があふれてとまらない。
もっと我がままに生きればよかった。
すると、馬車の横を人影が過ぎていったように見えた。
私は、その人影がいった方を見ると、見たことない服装の男性が1人でオークを倒していっていた。
圧倒的だった。
私には、その姿がとてもカッコよく見えた。
「流石お兄ちゃん。かっこいいです。」
すると、いつのまにか馬車の横にいた女の子がそう呟いた。
こんな可愛い子が一緒にいたなんて。
私は少し落ち込みました。
はっきり言って、私は一目惚れでした。颯爽と現れて、圧倒的な力で倒していく。
こんな人が私のそばにいてくれたなら…
私は我儘に生きたいんです。
王女としてではなく、人として!
そう考えると、体はすぐに動いていました。
戦闘が終わった、男性の元まで行き、馬車の中に連れてこれました。
頑張れ!私!
馬車の中では、恥ずかしいですけどピッタリとくっついていました。
お名前をお聞きすると、ユウ様とおっしゃるそうで、あぁ、これが恋なんでしょうか。
一緒にいたなんて子はサヤと言ってましたが、なんて失礼な子なんでしょうか。
ユウ様に酷い言葉を言ってます。
なんと、ユウ様と一様サヤは、魔術とかそう言った知識がないそうです。
魔術を使わずにその力すごいです。
教えて欲しいとのことでしたので、一生懸命教えました。ユウ様によく思ってもらえたでしょうか。
ユウ様とサヤのステータスには驚きましたが、なによりもユウ様が魔法を普通に使ったことに驚きました。
魔法を使えるなんて、流石ユウ様です。
最後にサヤが童貞の想像力はとか言っていましたが、童貞ということは…
なんだか、嬉しいです!
あぁ、王都についてしまいました。
ユウ様にあった高揚感が消えたようでした。
お父様に呼ばれたのですが、ユウ様とこのまま別れるのは嫌です。
なので、付いてきてくださいというと、付いてきてくださいました。
これだけで、気が楽です。
そして、玉座の間で戻ってきたことを確認するとお父様はすぐに出ていってしまいました。
いつも通りですね。
わかっていましたよ。
そう思いながら、呼ばれた客間に行くとお父様は遅れてきた。
そして、報告を聞かれて全て答えた。
報告後私はすぐに部屋を出ていくように言われた。
ユウ様とサヤは残るように言われて。
ユウ様ともう一度会いたいが為に出た言葉でしたが、ちゃんと言えました。後程と。後でちゃんと会えます。そう思いながら私は部屋に戻った。
お父様はユウ様とサヤにちゃんと褒美を与えたでしょうか。
どんな話をしているのでしょうか。
気になります。
ソワソワしながら、私は部屋でウロウロしていたいた。
日が落ち、暗くなりった。
ユウ様は部屋に来てくれなかった。
そういえば、部屋を教えていませんでした…
落ちた気分のまま、食事を終わらせて、部屋に戻りました。
あぁ、また会えるでしょうか。
会いたいです、ユウ様。
落ち込んだまま部屋から外を見ていた。
時間は、いつのまにか0時を過ぎていた。
すると突然、部屋の扉がノックされた。
誰でしょう。こんな時間に…
まさか、ユウ様!
期待に胸を膨らませながら扉を開けた。




