報告
玉座の間を出て、俺たちはリサにソファーが置かれている広い部屋に案内された。ここは、客間だそうだ。
王城というのはどこの部屋もこんなに広いのか。
どこもかしこも見たことない広さだ。
ソファーに3人が並んで座り、俺は部屋を見渡していた。
すると、先ほど玉座の間で椅子に座っていたおっさんが部屋に入ってきた。
「待たせたな。」
そう一言いうと、対面のソファーに座った。
なんか、先と人が違うようだ。威圧が全くないただのおっさんだ。
「まずは、リサ。よく無事で戻ってきてくれた。して、リント村はどうだった?」
「はい、まずリント村ですが魔獣による被害は見受けられませんでした。村人にも聞き取りを行いましたが、そのような被害はなかったと言っておりました。そして、魔獣除けの結界もすべて発動しており、問題ありませんでした。念のために、結界の重ね掛けを行いました。」
リサは淡々と報告していく。馬車の中とは違いしっかりした印象を受ける。
しかし、この報告なんかおかしくないか?
問題がないにもかかわらず、一国の王女を向かわせたのか?
「うむ、報告ご苦労。村に被害がなくて何よりだ。して、リサよ、魔獣に襲われたそうだが?」
「はい、王国へ帰る途中でオークの群れに襲撃されました。騎士の方々が勇敢に戦い、そして、ユウ様とサヤ様が加勢していただいたおかげで、私は無事戻ってくることができました。ですが、騎士方々には亡くなった方や、負傷者が出てしまいました。」
リサは、自分の為に戦った騎士達を想ってか、悲しそうな表情をしていた。
「そうか、騎士達はよく、リサを守ってくれた。我が国誇りの騎士達だ。後で、騎士の元に行くとしよう。そして、ユウとサヤには感謝してもしきれぬ。ありがとう。」
この人初めてあった人に頭下げたよ。
というか、この人俺たちのこと全く聞かないな。娘を救ったと言っても、普通なら俺たちは不審者だぞ。
そんなことを考えていると、頭を上げたおっさんがこちらに笑いかけてきた。
「お主らのことをなんで聞かないのかと考えておったのであろう?もちろんそれは、娘を救ってもらった者というのもあるが、余は人を見る目には自信があってな。それに、短い時間であったであろうが、娘が信頼しきっているようなのでな、その信頼は裏切ってくれるなよ。」
最後らへんは冗談めかして言ったが、これがおっさんの本質なんだろうな。
国王にしては人が良すぎるように思うがな。
「褒美を与えるためにここに呼んだのであったな。リサ少し席を外してもらえるか?褒美に関していくつか聞くことがあるのでな。」
「分かりました。では、ユウ様、サヤ様後程。失礼致します。」
そういうと、リサは部屋から出て行った。
リサの奴最後まで沙耶をサヤ様って呼んでたな。
というか、今まで沙耶がしゃべらなかったのが、リサにサヤ様と言われてから笑いをこらえてるとか。
肩が小さく震えてるから、横にいるとめっちゃ気になるんだけど!
顔俯かせて、ちらちら見えるニヤケ顔が見えるしよ!
「ふっふふ。フッフフフ…」
もう堪えなくなったよこの子!普通に笑ってんじゃん!
前にいるおっさん不思議な顔してるよ!
「サヤは嬉しいことでもあったのか?」
「いえ、あなたの娘が猫かぶりすぎてもう可笑しくて可笑しくて。」
おいおい、沙耶よ。その父親に言ってどうする。
「ハッハハ。そうかそうか。リサ、お主らには自分を見せておったのだな。羨ましいぞ。」
おっさんもおっさんだ。ほんと、この人よく人が変わる。
「リサは、父親である余にいつもあの調子でしゃべってくるのだ。もっと、自分を見せてほしいものだ。
昔は、とうさま~って言ってな、元気よく抱きついてきたのに。あぁ、考えただけで悲しくなってきたわ。」
そう言いながら、涙をぬぐってる。えっ!ほんとに泣いてんのかよこのおっさん。
「と、余の自己紹介がまだであったな。」
切り替え早いな!
「余は、フォート=ミラージュだ。このミラージュ王国の国王をしておる。それでだ、突然で悪いのだが、お主らに一つ依頼を願いたい。」
国王からの直接の依頼か。
金くれんのかな。
俺は、そう思いながら国王を見、沙耶の奴はまだ横で笑てたわ。




