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妹と召喚されました!  作者: 雄也
王都編
15/78

馬車内で(3)

俺は沙耶の隣に移動し、リサに二人で向かい合う形で座りなおした。

そして、興味心身でリサを見た。

そんな二人をリサは嬉しそうに微笑んでいた。


「魔力の素質を調べる道具として、こちらを使います。」


リサはそういうと、近くにあった袋から丸い板のようなものを取り出した。

丸い板の中には、円形に堀があった。

そして、円形の外側と内側には見慣れない文字と線が複数あった。


「ユウ様とサヤは、この道具を見るのは初めてですか?」


「はい、初めて見ました。これはどのように使うのですか?」


「そうですか、ではこの道具の用途と使い方をお教えしますね。

この道具は、“マイフェス”といって、板に魔術式が施されています。円形に穴が掘られており、その周囲に掘られているのが魔術式です。

この魔術式は、魔力に反応してその魔力の素質を色にしてみることが出来るのです。

ですが、これは素質を見るものであり、魔力の強弱や魔法、魔術の不得意を見るものではありません。

分かるものは、個人の魔力で操れる元素が何であるかです。一度実践してみますね。」


そういうと、リサはマイフェスを両手で持ち目を瞑った。

すると、堀の中が光だした。最初は黄色く輝き、しばらくすると赤色く輝き出した。そして、また黄色く輝きだした。それが何回か繰り返した。


「私が操れる元素は、「光」と「火」ですので2色が交互に出ました。このように、魔力の素質で操れる元素が色で出ます。

「火」=「赤」、「水」=「青」、「地」=「茶」、「風」=「緑」、「空」=「白」、「光」=「黄」、「闇」=「黒」です。

一般的であれば、1人1つの元素が操れる場合が多いです。複数の元素を操れる人もいますが、多くても4つまでしか聞いた事がないです。

そういった素質を見る為にも、この道具は便利なんですよ。では、ユウ様とサヤの素質を見ていきましょうか。」


説明が終わると、リサはこちらに笑顔でマイフェスを渡してくる。

それを沙耶が受け取った。


「魔力とは、どのように流すのですか?」


「そうですね、では先ずマイフェスを両手で持って目を瞑ってください。」


沙耶はリサに従い、両手でマイフェスを持ち目を静かに瞑った。


「では、マイフェスを持つ両手に力が溜まるようにイメージしてください。決してそれを放出するようなイメージをしてはいけませんよ。」


沙耶は頷き、馬車内の空間が静まり返った。

すると、板がゆっくりと光りだした。

「青」→「緑」→「白」→「黄」

4色が交互に光り輝いた。


「もういいですよ。4つの元素ですか。素質は素晴らしいものですね。」


沙耶はそれを聞くと、満足げに俺にマイフェスを渡してきた。


「次はお兄ちゃんですね。期待してますよ。」


そこまで期待されても困るんだが。

そう思いながら、両手でマイフェスを持ち静かに目を瞑った。


「えっ!」


しばらくすると、リサの驚いたような声が聞こえたので目を開けると、持っていたマイフェスが「赤」、「青」、「茶」、「緑」、「白」、「黄」、「黒」と交互に光っていた。

マジか。これって全元素操れるって事じゃないのか。


「「…」」


というか、それを見ているリサと沙耶が黙ってるのが、なんか怖いんだけど。


「お兄ちゃん、これだと妹が哀れになるじゃないですか。自重してください。」


「期待してたよね!てか、素質に対して自重しろって無理じゃね!」


「期待を超えすぎるのもダメですよ。でも、さすがお兄ちゃんです。」


沙耶はため息まじりで言ってきたが、なんだか嬉しそうだな。


「うそ…全て操れるなんて聞いたことない…この兄妹規格外すぎですよ…」


リサは、いまだ驚いた様子でブツブツと一人でつぶやいていた。


「リサ?」


「い、いえ、すいません。少し考え事してしまいました。ユウ様とサヤの魔力の素質は分かりましたね。」


「あぁ、ありがとう。そういえば、魔法と魔術ってどう使うんだ?」


そういいながら、リサにマイフェスを返す。


「では、次は魔術と魔法の発動についてですね。先ずは魔術からですが、こちらは先ほど使用したマイフェスにあったような術式に魔力を流すことにより発動させます。なので、魔術は知識や知恵の要素が大きいんです。魔術を使うには明確かつ正確な術式を描く必要があり、頭の中で描くのも実際に物質に描くのも術式を覚えていないといけません。また、術式は構成することはできますが、それは性質によって術式の基が変化します。そういった知識も必要となります。ですが、そういったことが誰しも出来るわけではありません。ですので、魔術を手軽に使う為の“ロール”という魔術道具があるんです。ロールは、一枚の紙に術式が描かれており、それに魔力を流すことで使用することが可能なんです。ですが、紙の精度により発動できる魔術は異なります。発動までに掛かる負荷に紙が耐えなければいけませんので、中級以上の魔術は紙にこめることが出来ません。それに、一度使用すると、紙が壊れてしまいますので、1枚につき1回が限度です。手軽には変わりありませんので、私が今持っておりますロールで魔術を使用してみましょうか。」


そういうと、マイフェスを袋にしまい、その袋から2枚の紙を出してきた。

その紙が広げられると、そこにはマイフェスと似たような感じだけど、まったく違う術式が描かれていた。


「こちらは、初級魔術の“ライト”が描かれています。私が持つロールは火と光を基とした物しかありません。それに、3人共通の元素が光ですので、こちらで行いましょう。先ほどマイフェスを使ったので、魔力の流れは多少なりとも分かっていただけたと思います。ですので、次はこのロールに魔力を流してください。」


そういうと、リサは俺とサヤに1枚ずつロールを渡してきた。

前いた世界とは違った紙だな。これが、ファンタジーで言われる洋皮紙か。

そう思いながら、ロールを見ていると横から急に光りに照らされた。

横を見ると、沙耶が持っていたロールが破れ、その上に光りの玉が浮かんでいた。


「サヤお見事です。一度使用するとロールはそのように壊れますので。ライトは術者から直接魔力を送りこんでいますので、魔力をコントロールすることで、光りの明るさを変化することが出来ます。また、動かすのも消すのも術者の意識でできますので、魔力のコントロール練習してみてください。ですが、一度消してしまうと、魔力の供給が途切れますので、ライトを再び出すには、新たに術式を描く必要があります。」


沙耶はそれを聞くと頷いた。すると、光りの玉が明るくなったり暗くなったりして、馬車内を動き回り、しばらくすると消えていった。


「サヤは魔力のコントロールお上手ですね。初めてでここまで出来るのはすごいですよ。次はユウ様ですね。」


あぁ、二人に見られながらやるのは緊張するな。

そういいながら、ロールに魔力を流した。

すると、一瞬にして目の前が光りに覆われた。


「っ!お兄ちゃん何やってるんですか!もっと暗くしてください!」


「ユウ様、魔力流しすぎです。コントロールに集中してください。」


え、コントロール、コントロール。魔力のコントロールを一生懸命やってみる。

なにこれ、難しいんだけど!沙耶のやついきなりこれをコントロールできたのかよ!

やるな、妹!

すると、しばらくすると魔力がやっとコントロールできてきたのか光りが弱くなってきた。


「目がジンジンします。お兄ちゃんんおバカ。」


「ユウ様は、魔力のコントロールが苦手なようですね。初めては、仕方ないですよ。」


沙耶は涙目でこちらに訴えてくる。これは、仕方がない。反省してます。

リサは、苦笑いで慰めてくるが、その優しさが心にくるんだが!


「え、えぇと、魔術はこのようなところです。ユウ様は、出来るだけ魔力のコントロールを覚えてから使用してくださいね。

次は、魔法ですね。魔法は、言わば創造する力です。頭の中でイメージし創造するので、これは魔術とは違い知恵や知識を必要としません。ですが、精神力、集中力、創造力が必要となります。私は魔法が使えませんので、見せることは出来ませんが、言えるのは、集中力と創造力が桁違いに必要だと言うことです。創造し生み出す力、それは神にも等しい力だと言われており、私達は魔法を“奇跡の力”と呼んでいます。先ほど、魔術と魔法は人によって得意不得意があるといいましたが、ほとんどの人が魔術を得意とし、使用します。逆に、魔法は使用できる方がおられないのです。ですが、古き記録には、魔法使いと言われるものが実在したと言われており、現在も知識として魔法の知恵が受け継がれているのです。ですので、魔法についてはこれぐらいしか教えることが出来ません。申し訳ございません。」


リサは申し訳なさそうに頭を下げる。

創造する力か。出来るかは分からないが、一度やってみるか。

俺は、両手を前に出し目を瞑った。


「お兄ちゃん?」


「ユウ様?」


沙耶とリサは何をしているのだろうとこちらを伺っているようだ。

俺は、創造することに集中し始めた。

馬車の進む音、空気の音、沙耶やリサの声も聞こえなくなった。

聞こえるのは、自分の心臓の音だけ。感じるのは、自分の身体だけ。

頭の中は、暗いぐらいの空間で、そこにともる一つの光がある。

暗い中に灯る光。

すると、前に出した右手に魔力が集まっている感じがした。

ゆっくり目を開けると、右手の上に先ほどのライトよりも弱弱しいが、小さな光りの玉が浮かんでいた。

先ほどまで、頭の中で創造していた光が。右に動くことを考えると、玉も右に動き消えることを考えると消えてしまった。


「魔術?でも、術式が現れていなかった。嘘、魔法?ユウ様!あれは魔法ですか!」


リサが一人でボソボソ言ったと思ったら、こちらに勢いよく振り向いた。


「いや、分からん。あの光りを創造したのは確かだけど、それが魔法かは分からん。」


「おそらく、それが魔法です。術式無視の創造する力。まさか、魔法を使える方がいるなんて。」


そういうと、リサはまた一人でボソボソと言い、考え事を始めてしまった。


「さすがお兄ちゃんです。童貞の想像力はさすがですね。」


「童貞関係なくない!おかしいな!褒められた気がしないぞ!」


そういいながら、俺と沙耶は童貞の想像力についての話を始め、リサは一人で考え事をしていた。


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