馬車内で(1)
動き出した馬車の中では、何故か右隣にピッタリくっついて、満面の笑みでいるリサとそんな俺を前に座る沙耶が冷たい視線で睨んでくる。
いやいや妹よ、兄をそんな風に見ないでくれ。不可抗力なんだ。
そう、この柔らかいものが腕にあったてるのも不可抗力だ。俺的にはありがとうございます!
「お兄ちゃん鼻の下伸びてますよ。」
「っ!そ、そんなことないぞ!至って普通だ。それよりも、馬車の中はリサ一人だけだったんだな。」
やばかった。沙耶のたった一言に悪寒が走ったぞ!
「それが普通の顔だとしたら、気持ち悪いですよ。はぁー分かりやすいほどに話をそらしますね。いいですけど。」
なんか、沙耶の機嫌めちゃくちゃ悪いんだけど!
なんか、怖いんだけど!
「私は、〝リント村″という村に視察に行っていたのですよ。その村が魔獣の被害にあり被害が出ているとのことでしたので、その状況把握のために行っておりました。そして、今がその帰りということです。」
リサ、沙耶の事無視して話し始めちゃったよ。
というか、リサの話だとおかしくないか。
子供1人で、しかも王女様に魔獣がいるかもしれないところに見に行けっていうのか?
それも、護衛は言っちゃ悪いが質と量どちらも少なすぎると思う。
いや、これは考えすぎか。
こちらの世界ではこれが普通なのか。
「村の被害はどうだったんだ?」
「村には特に目立った被害はありませんでした。周囲を騎士たちにも調べさせましたが、魔獣除けの結界はちゃんと働いてましたし、問題ありませんでした。なので、誤報が来たのだと思います。」
「魔獣除け?」
「魔獣除けは、どこの村にも設置されていますよ。魔術師が施す魔術の一種で、村によっては、村にいる魔術師が結界をはったりしますが、大抵は王都から派遣される魔術師によって結界をはります。定期的にはり直しも行ったりしており、村の安全を魔獣から守るのには必須なのですよ。
貴方様の住んでいたところにはなかったのですか?」
マジか!そんな便利な魔術があるのか!
「俺達の住んでたところにはなかったな。
…というより、貴方様ってなんかおかしな感じするから、名前で呼んでくれね?」
「申し訳ございません!気に入らなかったですか…なんとお呼びすればいいでしょうか?」
なんか涙目で見つめてくるんだけど!
可愛いんだけどね!
「あっ!そういえばちゃんとした自己紹介してなかったな。悪い。俺は、キサラギ ユウだ。んで、さっきから機嫌悪そうに黙り込んでるのが、妹のキサラギ サヤだ。」
「誰が機嫌悪そうに黙り込んでるですか。いいですが、妹のサヤです。」
なんだ、沙耶が何もいいかしてこないなんて。
「ユウ様にサヤですね。」
「明らかに呼び方に違いが表れてますね。お兄ちゃん、この女格悪いですよ。」
「何をおっしゃりますか。サヤこそ私は王女ですよ。ヤキモチなら女として見にくいですよ。」
「小娘に女を説かれるとか、いやですね。」
なんか、沙耶とリサの間で火花散ってるんだけど!
女怖い!




