王女様と会ってしまいました
沙耶の言葉に固まり、ルクスを見ると、こちらを見て苦笑いをしてすぐに手を離した。
「そ、それでは我々に着いてきていただけますか?」
若干引いてるじゃんか!俺ノーマルだからね!
心の中で叫んだ。
「ふふっ。」
良なりにいる沙耶は、普通に笑ってんじゃん!俺をどうしたい気なのこの妹様は!
「待って下さい!」
そんな会話をしながら、ルクスについて行こうとした時、馬車の方から声がした。
俺たちは声がした馬車を見ると、扉が開き中から女の子が出てきた。
金色の髪を長く伸ばした見た目は、15歳ほどの可愛い女の子だった。
「この人は…」
俺が近くにいるルクスに聞こうと思い振り返ると、ルクスは片膝を地につけて頭を下げていた。いや、ルクスだけではない。重傷を負った騎士以外は皆そうしていた。
「皆様、頭をあげて下さい。それぞれの仕事を継続して下さい。」
少女がそういうと、騎士は立ち上がり元の作業に戻った。
そして、少女は近づいてきた。
「私は、ミラージュ王国第二王女“リサ=ミラージュ”です。この度は助けていただきありがとうございます。貴方様の加勢がなければ、騎士はもちろん私も助かってはいなかったでしょう。貴方様の駆けつけて戦う姿とても素晴らしかったです。馬車の中から見ることしかできませんでしたが、あの戦いは目に焼き付いております。」
ミラージュ王女はこちらの目をじっと見ながら話す。
その目は、蒼く透き通りような瞳でとても綺麗だった。とかくで見ると整った可愛らしい顔をしている。俺よりも背が低いせいで、少しむあげるように話してくれるが、可愛らしい。撫でてあげたい。
まさか王女だとは思いもしなかったが、助けた甲斐があったというものだ。
でも、ここはできるだけ低姿勢で行かないとだな。
「いえ、俺はただ通りすがっただけです。その間、騎士の方達は貴方を守るために戦い続けました。お礼と労いの言葉はその騎士たちにかけてあげて下さい。」
そういうと、ミラージュ王女は驚いた顔をしたが、すぐに柔らかい笑みを向けてきた。
「もちろんです。騎士の方々もこの度の戦いご苦労様でした!私は守られて見ているだけでしたが、その戦いの姿はしかと見届けました!この戦いで亡くなった者たちも立派でした!ミラージュ王国の誇り高き騎士たちよ、貴方たちは私たちの誇りです!そして、ここに散ってしまった誇り高い騎士を皆で見送りましょう!立派な騎士だったと!私たちはしっかりとその誇り高い騎士の戦いを覚えています!私たちの騎士は国の誇りです!」
ミラージュ王女は騎士の方に振り返り叫んだ。どこからそんな声が出てるのかと思うぐらいに。
透き通るような声は、作業を行なっていた騎士たちに届いていた。王女の言葉を耳にしなく者、亡くなった騎士に叫ぶ者様々だった。
だが、俺はこう思う。
なんだこの茶番は。同じことを何回も言ってるようにしか聞こえなかったぞ!ここまで話が入ってこないのは元いた世界の校長の話以上だぞ。
だが、流石にそんなことも口にできるはずもない。
すると、先ほどまで叫んでいたミラージュ王女はこちらに振り返り、こちらに満面の笑みを向けてきた。
「貴方様は自分の名誉よりも騎士たちのことを想われるなんて、お優しいのですね。」
ミラージュ王女がこちらに向ける視線には何か熱がこもってるよに思えた。可愛らしい無邪気の笑みにどう答えようかと思い、俺も笑顔で返した。
「っ⁉︎」
突然体に痛みが走った。横を向くと沙耶がお尻を抓っていた。
「茶番ですね。というか、お兄ちゃんいつまでニヤニヤしているのですか?正直気持ち悪いです。小さい子ばかりにニヤニヤして、ロリコンなのですか?死んでからやり直してきてください。死んで治るものならいいのですが。」
沙耶はそう言って俺を見ていたが、目に光がない!いやいや怖いから!まじ怖いから!
「ニヤニヤなんてしてねぇよ!それにロリコンちがうわ!まだ2回しか女の子に会ってないのに、それがたまたま幼女だっただけで、俺は悪くないし、ノーマルだ!」
「だといいのですが…」
沙耶と言い争いながら、目の前にいるミラージュ王女を見ると、満面の笑みで固まってしまっている。
「茶番とはなんですか?」
硬い動きで首を動かしながら沙耶の方を見た。
「初めて私を見ましたね大根役者。茶番だから茶番といったのですよ。あなたを想う騎士の方達ならその言葉を正直に受け取ってしまうかもしれません。ですが、酷すぎますね。あの言葉があなたを守った騎士たちへの労いですか?片腹痛いですよ。」
おいおい、マジかよ。
沙耶のやつ王女相手にも容赦ないな。
「なっ!貴方こそ何様ですか!ただ見ているだけで何もしておられなかったではないですか!」
あらら、売り言葉に買い言葉。ミラージュ王女言い返しちゃったよ。
「そうですね、それがお兄ちゃんの役目だからです。私がお兄ちゃんの役目を取ってしまうと、お兄ちゃんはダメになってしまうので。お兄ちゃんは役目を果たした。そんなお兄ちゃんへの労いは“お疲れ様”の一言でいいのです。信頼しているからこそのこの関係で、この労いですよ。」
「ぐっ!」
沙耶はそういいながら、胸を張っているが、沙耶が胸を張るところはどこもない気がするのは俺だけだろうか。
それにミラージュ王女はして普通に反論できるでしょう。何が“ぐっ!”ですか。納得できる部分なんてどこにもないじゃん。
「お兄ちゃんも、この人が大根役者でいうに耐えないほどの労いで“ハッ何いってんだこの嬢ちゃんは、笑わせんな”とか思っていたのでしょう。」
「え?」
妹様よ、なぜこっちに話を振ってくるかな!
それにそこまで思ってねぇよ。
てか、そのキャラなんだよ!俺そんなキャラだっけか!
ミラージュ王女が泣きそうな目でこちら見てくるんだがどうしたらいいんだ!
「そ、そんなことないぞ。労いは戦ったものへの言葉で戦ったものがよければそれでいいんだ。」
「お兄ちゃん正直に言ってしまえばいいのに。ですが、お兄ちゃんのそ言葉はカバーしきれてないどころか、むしろ墓穴を掘ったと思いますよ。」
沙耶がこちらをため息をつきながら見る。
「お兄ちゃん的にどうなのかって聞いたのに、それは騎士たちへの言葉でその方達さえ良ければいいと言いましたね。それは、その他にいる方達はどう思ってるのでしょうか?例えば、私たちとか。もっと言えば、お兄ちゃんはそれをよくは思わなかったと言うことですよ。」
なんだ、沙耶はいつもは途中で止めるのに、今回は徹底して止める気がない。それに今回は、目的にしているのが、明らかに俺ではなくミラージュ王女だ。
沙耶の機嫌が悪すぎる。どこでそんなに悪くなったんだ。
「貴方が王女とはほんと笑わせないでください。」
沙耶の最後の言葉が効いたのか、ミラージュ王女は静かに涙を流した。
沙耶はそれをただ見下ろしていた。
沙耶が本気ならこの程度で終わるはずがない。
「そのくだら…」
沙耶の言葉を手で遮った。
「そこまでだ沙耶。流石に言い過ぎだ。悪いなミラージュ王女。あんたは立派だよ。王女としてそうさせるのか、その思いは本物だ。沙耶が言い過ぎた。申し訳ない。」
俺がそっと沙耶を見ると、沙耶はミラージュ王女を見た。
「すいません、言い過ぎました。少し腹が立ってしまって、大人気なかったです。ですが、言ったことは本当ですので、弁解することはしませんよ。」
沙耶は不満そうだが、素直に謝った。
「私は立派に王女でしたか?」
先まで涙を流してたはずのミラージュ王女は涙が引きこちらをじっと見つめていた。
「は?」
沙耶が怒った声で言った。
流石にこれ以上はやばい。
俺が何か言わなければ!
「あぁ、さすがミラージュ王女だ。立派だったよ。」
そう言って、ミラージュ王女の頭をそっと撫でた。
すると、ミラージュ王女は顔を赤くしてそっと俯いた。
「リサです…リサって呼んでください!」
「は?」
ミラージュ王女は俺を見つめてきた。
そして沙耶の本日2回目の怒りの“は?”頂きました。
「わかったよ、リサ。」
「ッ!」
そういうと、リサはまた俯いてしまった。
横を見ると、不服そうに怒りを抱いてる沙耶がいた。
「沙耶?」
「死んでください、お兄ちゃん。」
満面笑みで妹様に言われた。
瞳の奥が笑ってないだけにこれは怖いな。
いつか夜道で刺されそうだ。
そういうやり取りをしている間、騎士たちは出発の準備を整えていた。
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