第2話 お祭り<後編>
「お待たせいたしました。先輩」
「おう、早かったな」
「待ちましたか?」
「いや、いまきたとこ」
わたしは啞然とした顔をする。
「まさか、そんな……」
「どうしたんだよ」
「先輩、悪いものでも食べましたか?」
「はぁ?」
「だって、あの先輩がこんなラブコメのテンプレみたいな会話できるなんて……。まさか、偽物?」
「ハイハイ。じゃあいくぞ」
あっけなく流されてしまう。この反応を待っていた。
「ああ、それと……」
「その水色の浴衣、すごく似合ってるぞ」
「っ……」このひとはこれだから、もう。
「先輩はなに食べますか?」
わたしはタコ焼きを食べながら聞く。
「てきとうに焼きそばがいいかな」
「あ~あのキャベツだらけで、麺と肉が少ないという」
「おまえな~」
「まぁまぁ。1個だけなら食べていいですから、機嫌なおしてくださいよ」
「おう、ありがとう」
はたから見れば、もうあれのような会話をしながらわたしたちはお祭りを楽しんだ。だんだん人が増えてくる。
「人が増えてきたから、はぐれるなよ」
「大丈夫ですよ!先輩の袖、ちゃんと握ってますから」
わたしは小悪魔な笑顔で答えた。先輩の顔が赤くなる。
「いつのまに……」
ゴニョニョ言っていてかわいい。
お祭りももうすぐ終わりだ。最後に少しだけ、花火を打ち上げる。
それをふたりでみたいと、わたしはわがままをいって先輩を連れまわした。
<ドーン>
綺麗な花火が打ちあがる。
「すごいですね」
「そうだな」
<ドーン>
袖を握っていたはずの、わたしの手はいつの間にか先輩の手のなかにいた。