第17話 まちあわせ
「ねぇ、先輩。明日、映画にいきましょうよ」日課となった先輩との電話中にわたしはいつものように先輩を誘った。これはいつものようになんだけど、いつもとは違う意味をもったお誘いだった。つまり……
「付き合ってからの初デートにいきましょうよ」鈍感な先輩のために、わたしは言いなおす。ここまで、はっきり言わないとわからない。鈍感彼氏だった。
「いいぞ。なにをみる?」先輩は余裕をもって答えようとしていたが、少し声が震えていた。そして、顔もほんのりと赤くなっていた。
「よくCMでやっている<What is your name?>とかどうですか?」
「ああ、あの恋愛アニメ映画か」
「そうです。やっぱり、正式につきあったので、ラブラブな恋愛映画がいいかなって?」言っていて自分が恥ずかしい。
「アニメ好きなのか?」
「嫌いではないですけど……」
「けど?」
「とにかく、観たいんです!」(ガチガチの恋愛映画だと、ラブシーンとかあったら気まずいじゃないですか)という本音は言葉にはださなかった。
そして、次の日、わたしたちの初デートがはじまったのだった。
わたしは先輩を待っている。
「待ち合わせ時間よりも、1時間早く着いてしまった……」
すこし駅前をウィンドウショッピングしようと思ったのだけど……
ワクワクして、頭に何も入ってこないのだ。
わたしはあきらめて、ジュースを飲みながら彼を待つ。
時間はまだ15分くらいしか経っていない。
先輩と会えば光のように過ぎる時間が、ここでは永遠のように感じてしまう。
「時間って不平等だな」
わけがわからなくて、変なことを口走ってしまう。
まるで、不思議ちゃんだ。
先輩に似たひとをみつけると目で追ってしまう。
まだ、来るわけがないのに。
「幸せってこういう時間のことかな」
わたしはつぶやきながら、空をみた。
雲ひとつない青空だった。