彼、皆の人気者Life!!
さて、今回はある人気者の話です。
神様視点というか、なんというか…ちょっと変わった書き方をしたつもりです。
では、楽しんでいってください。
「やぁ、おはよう! 皆の衆!」
朝、彼が教室に入って第一声にいう言葉はこれだ。最初は誰もが、その台詞に笑っていたが、1年も一緒にいた今となっては、それが普通になってしまった。
「山田君、日直だぞよぉ?」
ドアの前で、片手をあげた状態で止まっている彼の頭をコツンと叩く先生。
「あ、先生おはようございます!」
「おはっよっうぅ!」
ちなみに、この先生はよく分からない人だ。テンションがおかしいというか、頭がおかしいというか。
彼はそんな先生のことが大好きらしい。というか、女と聞けば好きになるらしい。この彼こそが、無類の女好きというやつだ。
「あ、おはよう! 風紀、亮平!」
彼のその言葉に、目の前の二人は全くの無視である。ビクリともその彼の言葉に反応する素振りは見せなかった。
「おはようだっていってんだろぉおお!!」
ちなみに、彼は無視をされることが大嫌いである。そのため、どんな人にでも絡んでしまうのだ。
「あ、幸助いたのか」
そんなことを呟くのは、彼の友人であろう風紀。であろう、と書いたのは、そう思っているのは彼だからだ。風紀にとって彼の存在は、あまり大きくないらしい。
「亮平っちもおはよう!」
彼は風紀の隣に座っている亮平にも絡み始めた。亮平はウザそうな顔をして、はいはいお早う。と答える。だけど、彼はそれで十分なのだ。無視さえされなければ。
そんな彼はクラス全員に挨拶をする。その日、その日でテンションが全く違うが、いつだってクラスを明るくさせようと頑張っている。
授業が始まると、彼はいつものように必死にノートを取り始めた。勉強は出来ないほうだ。正直なところ、成績は学年では下から数えたほうが早い。
そんな彼にも長所がある。
それは決して心が砕けないことだ。…いや、ごめん。これも嘘かもしれない。毎日のように女の子に振られては、そのたびにショックを受けている。
まぁ、女のこの方は相手にもしてないのだが。
「あ、明日香ちゃん!」
休憩時間になると、とりあえず女の子のところへ行く。明日香とは、この学校で一番の美少女と言われている女の子だ。もちろん、彼の中でも明日香の可愛さはTOPクラス。
「今日も可愛いねっ!」
そんなことを恥ずかしがらずに言えるのは、もしかしたら長所なのかもしれない。
「ありがとー♪」
そして、明日香は満面の笑みで返事をした。だけど、彼は知っている。明日香の彼氏は風紀ということを。だから、明日香にはあまり深く関わらない。偉大な鑑賞物という認識が強いのだ。
休憩時間が終わると、授業が始まり、またノートをとる作業に戻る。
彼がこの学校で楽しみにしていることといえば、一年に一度ある文化祭、体育祭、映画の撮影だ。
そして、毎日の楽しみは、昼食の時間。いつもは映画研究部仲間の悠太とご飯を食べている。
悠太は優しい。こんな彼をいつも笑って、全ての話しを受け止めてくれる。もしかしたら、受け流しているの間違いかもしれないが。
大変な授業が終わると、次は映画研究部の活動時間に入る。
彼はこの時間も大好きだ。
この映画研究部には美女が揃いに揃っている。明日香はもちろんのこと、学校で明日香の次に美女と言われている、ひとつ学年が上の由美、その妹の静香。そして、大人しそうに見えるのに、本当はとっても強い五十鈴。
しかし、彼にも怖いものがあった。それは、部長の沢美保という存在。
何かあるごとに、彼をストレス発散道具として使ってくるのだ。その痛みに毎度のごとく、彼は耐えている。
この前の文化祭のとき、彼はその沢美保に色々と嫌がらせに近い何かをされた。
その苦痛のせいか、次の日は下痢で大変だった。
しかし、それももう終わった。
文化祭が終わり、三年生の二人が引退したのだ。今年からは由美が部長になる。
不気味な存在として、光男という男をあげておこう。まぁ、そんな光男にも彼は、当たり障りなく接していくのだが。
「今日は何見るのぉ!!」
ドキドキしながら、彼は特別教室の一番前にあるスクリーンに目を向ける。
「今日は…」
そして、今日の映画の説明を部長になった由美が始める。彼はその言葉一つ、一つをしっかりと聞いていた。
なんたって映画が大好きなのだ。
小さいときから、親と一緒に映画をよく見に行く。最初に見た映画は、ホラー映画だった。
ものすごい印象深い作品で、その作品はどうやら何か大きな賞を取ったらしい。
彼は食いつくように映画を見ていた。物語を楽しむ。それが映画を見る側にとって大事なことらしい。
彼が前に語っていた。
映画も終わり、部活が終わると、あとは流れ解散となる。
映画が始まる前に帰宅する人もいるが、彼は決してそんなことはしなかった。
家に帰っても何もすることがないからだ。
帰り道は寂しい。そんな表情をしながら彼は毎日歩いている。たまに、寄り道をしてゲームセンターに寄るが、毎回のようにお金をはたくだけで、とくに何も得るものはない。
帰ると、家の机の上には今日の晩御飯が用意されていた。
親は共働きで、あまり会話をする機会が無いらしい。そんな寂しい家に一人でいるのは悲しいのだ。
ご飯を食べて、お風呂に入ると、次の日に備えて、いつも早めに寝る。
そして、彼は朝登校する。
教室のドアの前に来ると、いつものように笑顔を作った。
そして、あの言葉を言う。
それが彼、自称、皆の人気者山田幸助の一日。
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