秋本明日香 中学生Lief!!!
今回の話は、秋本明日香の中学時代のお話。
Double Life 3章(詳しくは3-5)で出てきた、明日香と大和君の付き合うまでのお話です。
明日香は昔から可愛かったのですが、この人の存在のおかげで誰からも告白されていなかったみたいですね。
***明日香視点です。
「ほら、また大和君ってば明日香のこと見てるよぉ?」
弥生は毎朝、私をそうやってからかってくる。
「ち、違うよっ!」
それは弥生が、私は大和君を好きだって知っているから。
中学生になって、もう半年が過ぎていった。
ちなみに、大和君とは私たちの幼馴染の男の子だ。昔から何でも出来て、いつだってみんなの中心にいる人。
「明日香」
ニッコリ笑って、大和君は私に近寄ってきた。
「や、大和君!」
大和君が近づいてくると、私の鼓動は早くなる。これが恋なんだなと気付いたのは、小学生の高学年になったころだった。
「今日も一緒に弁当食べようぜ。4限目が体育だから、着替えが終わったらいつものところに来てくれよ」
「う、うん! 分かった!」
「あまりラブラブしないでね? 私がいるってこと忘れちゃ困るんだから」
そうそう、この弥生って子は、2組にいる私の大の友達なの。いつも学校では一番に近い成績をとっていて、将来が有望なんだってさ。それに美人だし、いつだってモテてるの。よく男の子と話しているの見かけるし、きっと弥生にも彼氏っていう存在がいるんだろうなぁ。
「お前のことなんか気にしねぇよ。それより明日香、もう今日は弥生連れてくるんじゃねぇぞ?」
「なんでぇ?」
「な、なんでってな…。ほら、弥生も彼氏とかと一緒にご飯食べたいに決まってるだろ?」
「あんたが、明日香を食べたいだけでしょうが」
弥生のその言葉に、大和君はうっとうろたえていた。
「私は食べ物じゃないんだけどな…」
そう呟くと、大和君と弥生は一瞬見合わせて、ぷっと笑い出した。どうやら、私はまたおかしなことを言ったらしい。
よく、こういう場面がある。昨日だって、プリンに醤油をかけて食べると、いくらの味がするんだよって言ったら、今日みたいに笑われたの。
「ま、まぁ、明日香待ってるからな」
大和君はニッコリ笑うと、友達のところへ戻っていってしまった。
「あんた達、いつになったら引っ付くのよ?」
弥生は私をじろっと見て言う。
「え!? 引っ付くなんて恥ずかしいよ」
「はぁ…、いつになったら付き合うのよって言ってるの」
弥生は呆れたように頭を抱え、再びそう言った。付き合うのと引っ付くのは、ちょっと意味が違うんだと思うんだけどな。
「付き合うなんて、絶対にないよ? なんたって、大和君はカッコイイんだし、私とじゃ釣り合わないよ。弥生ぐらい可愛くなきゃ、絶対に付き合うことなんて出来ない」
弥生はまた、頭を抱える仕草を見せた。
「どうしたの?」
「いや、あんたって言う奴は、いつになったら自分の素晴らしさに気付くのかなって思って」
「私?」
「あんた、すごい可愛いのよ?」
「そんな、お世辞はやめてよ! けど、弥生からそういわれたら嬉しいな、ありがとね♪」
小さな声で、もういいやって言ってたけど、気にしちゃいけないのかな。
あれからも私と弥生、そして大和君とはずっと一緒にお昼も食べていたし、よく大和君と二人で遊びに行っていたりもした。
そして、私たちが中学校2年生になると、大和君が少しずつ私避けていくようになった。
「大和君、どうしたの?」
たまに一緒に帰宅するとき、私は大和君に問い詰める。一緒にいられないのが寂しかったから。
「べ、別に何もねぇよ」
これが、最近の大和君が使うお気に入りの言葉。
「そればっかぁ」
むすっと拗ねた不利を見せると、大和君は慌てて何かを言い始めた。
どうやら謝ってくれているらしい。早口すぎて、よく何を言っているか分からないけど。
「なぁんちゃって♪」
笑って見せると、大和君は安心したのかほっとした顔になった。
「ねぇ、私なにかしたかな?」
ちょっと不安になった私は、大和君に聞いてみた。だけど、やっぱり返事はない。
「ねぇ、大和君!」
ちょっと声を張り上げた。私はそんなことを、あまり大和君の前ではしなかったから、大和君は驚いていた。
「私が、何かしたならはっきり言って! じゃないと、私、私・・・」
そうやって言っているうちに、どんどんと視界が涙でゆれていった
「あ、明日香…」
いきなり、歩道で立ち止まる大和君。
「ど、どうしたの?」
怒っちゃったのかな。そう思った瞬間、私のゆれていた視界は真っ暗になった。
「や、大和君!?」
どうやら私は、大和君の腕の中にいるみたいだ。ビックリして、涙も止まってしまった。
私、すごい心臓がバクバクいってる! これ、大和君に聞こえちゃうかな?
「ドキドキ言ってる…」
「え!?」
聞こえちゃってたの!?
「俺の心臓の音聞こえるか? ドキドキ言ってんだろ?」
な、なんだ大和君のか。
私はふぅと息をはいて、大和君の心臓の音を聞くと、確かに早く動いている気はした。
「どうしたの? 走った?」
「お前、ずっと一緒に居ただろうが」
「そうだよねぇ」
アハハ、と私が笑うと、私を包んでいる腕の力が一層に強くなった。ちょっとぎゅぅってなりすぎて痛い。
だけど、幸せ。
「や、大和君?」
「明日香、好きだ」
「え?」
「付き合ってくれないか?」
「や、大和君?」
つ、付き合うって? その、彼氏、彼女の関係になるってこと!?
「俺、ずっとお前が好きだったみたい…」
「や、大和君」
大和君の一言、一言がしっかりと私の耳に入り込んでくる。何よりもそれが嬉しかった。
その言葉が嬉しかった。
「私も大好きだよ」
両手でしっかりと大和君の背中を包み込んだ。そしてゆっくりと顔を、大和君を見るように上へ向けた。
「初恋、叶っちゃった」
ニシシ、と笑うと大和君は俺もだよ、と呟いてくれた。
きっと、このまま幸せに暮らしていけると思ったのに、現実はそう甘くなかった。
それからまた、数ヶ月たったある日、あの事件が起きる。
大和君に、新しく好きな人が出来たのだ…。
読んでくださってありがとうございました。
今回の話は楽しんでいただけたでしょうか?
凛と風紀の話はあまり思いつかないんですよね。
では、また会いましょう。