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Double Life  作者: Toki.
48/60

9−6


バタン!




朝、8時。


俺は家の異変に気づいた。


「明日香…?」


明日香の部屋の私物がなくなっている。


所謂、夜逃げ。


って、違う。


明日香は、昨日の夜に何処かに行った。


全く音はしていなかった。


俺に気づかれないために、そこまでするか。


「だから、違うって言ってるだろ」


無性に寂しくなり、俺はテレビや箪笥等以外無い明日香の部屋でそう呟いた。




今日は学園祭3日目。


土曜日。


俺は、何をするでもなく、制服に着替えて学校へ向かった。


外はいつも通りの朝。


人は殆どいなくて、時々通る車を避ける。


たかが数分の道のり。


俺の中ではいつも通りではなかった。


明日香がいなくて、この道が何時間も長く感じた。


準備中という看板がかけられた、猫耳メイドカフェに着く。


もしかしたらここに、明日香がいるかもしれない。


会ったらなんと言おう?


「戻って来いよ」とか、人前では絶対いえないし、他に言う言葉も見つからない。


けど、勘違いしたまま明日香は飛び出した。


まずその誤解を、とかなくては。


店の中に一歩踏み入れた。


「風紀遅〜い!!」


幸助が右手に持っている物体で俺を殴ろうとする。


ぱっと見ハリセンだな。


俺は、その場を冷静に判断し、ハリセンの軌道からずれハリセンを避ける。


そして、そのまま幸助の右手をつかみハリセン没収。


体制を崩している幸助の頭に、そのままハリセンを振り下ろす。


バシコーン!


と、言う音とともに「痛ぇ〜!」という幸助のさび声が上がった。


「ハ、ハリセンってそんなに痛かったのか…」


幸助の痛み具合によると、HPが97減っただろう。


「ごめんごめん! ちょっと、寝坊してな」


痛みを抑えながら、幸助が俺の方に向き周りを見渡す。


「あれ? 明日香ちゃんは?」と、言った。


俺は、何も答えることができずに、着替える部屋へと歩いていく。


勿論、ハリセンを持って。


俺が部屋に入るときに「ハリセン!」という幸助の叫ぶ声がしたような気がしたのは、気のせいだろう。


着替えが終わった俺は、厨房に入る。


開店まではあと少し。


そのとき、沙希が俺の所までやってきた。


顔が少し曇っていた。


そして、紙が一枚握られていた。


「風紀」


その一言だけ俺に投げかけて、紙を一枚俺に渡す。


ピンク色の紙。


ラブレターという言葉は一切思いつかない。




文化祭終了後、校門前で。




達筆で書かれていた。


言っちゃ悪いが、あいつが書くと恐いな。


今日は一日、厨房に入らなければならない。


明日、一日休みという条件付で。


何故、明日一日休みなのかというと、映画公開日。


一日限定。


一回限りの大イベント。


右手にあった紙をポケットに突っ込み、大きな一息着く。


何故大きな一息つくかというと、明日香が居ないからだ。


いつものあの笑顔が無い。


不思議がっているやつ等も居る。


明日香は、仕事をサボるような奴じゃないから。


クレープ仕事に、手がつかず今日一日ボロボロだった。


注文は間違えるし、クレープの生地を焦がすし、火傷はするし。


泣きそうだった。


明日香が居ないだけで、俺はこんなにもボロボロに。


明日香が居ないだけで、俺は、泣きたくなるほどに。


今日一日の仕事が終わり、着替えて校門前へ行く。


そこには沙希が待っていた。


「おっす」


俺は沙希に近づき挨拶をした。


だけど沙希の顔は曇ってる。


沈黙の風が流れた。


「何だよ?」


まだ、沙希の顔は曇ってる。


「それは、こっちのセリフ」


…へ?


「明日香に何したのよ?」


「いや、明日香には何もしてない」


「嘘付け! 明日香は昨日私の家に来て、ずっと泣いてたんだ! 朝まで泣いてたんだ!」


沙希が勢いで俺の胸倉をつかむ。


「何したんだって聞いてんだよ」


沙希さん? 少しばかり…。


いや、少しどころじゃない、すごく恐いんですけど。


俺は、昨日の出来事を一字一句間違えずに沙希に説明した。


数秒置かれた後、沙希は一言、言って俺をその場に置き去った。




「…馬鹿」




と。
















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