9−4
私は、今まで色んなものを見てきた。
その見たもの全て、信じられる物…だと思う。
何故、『だと思う』なのか…。
心、すごく揺れてる。
何で、私は逃げたの?
何で、こんなに苦しいのだろう。
「凛ちゃんと風紀が…」
キスしてた。
心、すごく揺れてる。
何で、私はこんなに動揺してるの?
何で、私は涙流してるんだろう?
何故。
気付かなかったの?
今まで、この気持ちに気付かなかったのだろうか。
原因不明の病気?
そんなんじゃない。
先生の言葉がようやく分かったような気がする。
人に言っては駄目なんだって。
自分で気付かなくては駄目なんだって。
私、
風紀のことが好きなんだって事を。
廊下を思いっきり走る。
息切れをしようが構わない。
涙を拭く瞬間、バランス感覚を無くしてこけた。
それでも、風紀は私を追いかけてきてくれない。
私は、また立って走り出す。
涙は…永久に出てくる感じ。
悲しみが沸き起こってくる。
胸が痛くなって、心がはち切れそうで。
風紀を見ていられなくて。
どうしようも無く、急に一人になりたくなって…。
走りながら家まで帰った。
マラソン大会でも出したこと無い記録が出たのは間違いないだろう。
自分の部屋に駆け込む。
風紀が帰っても、この顔じゃ話す言葉が見つからない。
風紀…のことが…好きなの? 私。
もう…男の子を好きになるなんて、認めたくなかったのだろうか。
非常識かな?
私は、愛すことが出来ない女の子だった。
大和君の事件があって…。
涙が止まらなくなった。
そして、あの時風紀に出会って、変わった自分が居る。
それは、お母さんにも言われた。
「明日香、変わったね。いいことでもあったのかしら?」と。
そのときは、特に変わったと思ってなかった。
あの時、風紀が私の話を聞いてくれたとき。
あの時には、もう好きだったのだろう。
気付いてた、自分も居た。
だけど、それを心から否定していた自分の方が大きかった。
気付くのが遅かった。
もう、凛ちゃんと風紀は。
元の関係に戻っただけなのだろう。
そのうち、凛ちゃんも私が風紀と同居しているって言うことを知ることになるだろう。
邪魔…。
私は、また邪魔者だ。
あの時と同じ、邪魔者なんだ!
もう…邪魔者扱いはもう勘弁だ。
そうならないうちに家を…。
ガチャ。
玄関のドアが開く音がした。
そして、バタンと閉まる音。
パタパタと音がして、私の部屋の前でその音が止まった。
コンコンと誰かがノックする。
「明日香居るか?」
風紀の声だ。
「う、うん」
力ない返事をする。
「ば、晩飯どする?」
こんなときに…そんなことかい!
もうちょっと、違う言葉は無いの?
こんな私を気遣ってくれはしないの?
「……」
無いのね。
「ご、ご飯作ってない…」
「じゃあ、俺が奢ってやるから、どこか食べに行くか?」
風紀の声からありえない言葉が聞えた。
「……」
「……」
「…うん」
「よし、行こう!」
「けど、ちょっと待ってて! ちょっと、顔が・・・じゃなくて、服装が駄目なの! 制服じゃまずいでしょ?」
「別に、まずくないけど…」
「私は駄目なの!」
そう言うと、わかったよと言って風紀も自分の部屋に入って行った模様。
私服に着替えて、深呼吸する。
風紀の邪魔者にはならないからね…。
心の中で呟いて、自分の部屋のドアを開けた。
読んでいただき、ありがとうございます。
もうそろそろ第一章もクライマックスを迎えました。
あと数話で、第二章へと移ります。
最後までどうかよろしくお願いします。