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Double Life  作者: Toki.
33/60

6−5


「ありがとう亮平」


俺は、亮平に駅まで送ってもらった。


ゆっくりとホームへ向かう。


そのまま電車に乗り、自分の家。明日香が待っている家へと向かう。


そうだ。俺には明日香という支えがあるんだ。


くじけることは無い。


まだ、凛のあの思い出は消えていない。


吐き気さえもする。


だけど、何かしなきゃ前に進めないんだ。


俺は、大きく右手を握り締め405号室のドアに手を掛けた。


ガチャといつも聞いている音が響く。


中は真っ暗。


だけど、明日香の靴は玄関に散乱しているが、一応この家に存在しているようだ。


時計に目を向ける。


只今の時刻18時3分。


そのままその視線を中へと向けた。


俺の部屋のドアが開きっぱなし。


「…泥棒か?」


そう呟きながら家の中に入る。


リビングに行ってみると、明日香の鞄が放置してあるだけで物をあさった形跡は無い。


その前に明日香は何処に行った?


明日香の部屋の前まで行く。


そこまで行くのに思い足取りだった。


今日は…あまり話していないな。


凛が出てきたせいで、明日香にも迷惑かけた。


「ごめん…」


ドアに自分の頭をもたれさせながら目を瞑る。


コンコンと右手でドア叩く。


その叩いた衝動が、自分の頭にまで響き渡った。


いつもなら明日香は元気良く開けてくれる。


だけど今日は…


音が無い。


誰も居ない。


…呆れて出て行ったのか? 明日香。


ゆっくりとドアノブに手をかける。


ひんやりと冷たい感触が自分の神経に伝わった。


ドアノブを回す。


そのドアノブを回すという動作だけで全部の筋肉を使い果たしたみたいだった。


ドアを開けようとする俺。


ギギギギギギと音が鳴る。


そのスピードは遅く、自分の心の中を表している模様。


勝手に入ろうとは思わない。


見るだけだ…と、自分の心に言い聞かせた。


完全にドアが開ききるまでは目を瞑ったままだった。


ガチャっと音がして、完全に開いたのを教えてくれる。


ゆっくりと目を開けた。


「…明日香」


明日香はベットの上でうつ伏せになっている。


寝ているのだろう。


小さい寝息が聞えた。


「明日香…」


近くによって見る。


べ、別に襲うとかそんなんじゃないんだぞ!?


ただ、近寄るだけ。


明日香の顔を見たかったのだ。


うつ伏せになっているものの、明日香は顔を右に曲げ、息が出来るようにしている。


また、そこが可愛い。


そっと顔を覗き込んだ。


あまりにもその安らいだ顔に俺は全体の力が抜け、ストッと隣に座り込む。


明日香の寝顔が俺の視界いっぱいに写りこむ。




そしてあの日以来、始めて俺は自ら女の子に触った。




頭を撫でるという行動。


何故か、身体自体は拒否らない。


逆に心が落ち着くようだった。


そのとき、「風紀…」と小さく聞えたような気がした。


誰か呼んだ?


周りを見渡すが誰も居ない。


「風紀…風紀…」


よく聞いてみると明日香の声だった。


「明日香」


自分の名前を呼んでいる。


どんな夢を見ているんだ、お前は。


何故だか笑みがこぼれた。


おかしくて。


何故か笑えて来た。


心から笑えて来た。


その笑い声は、半径2Mぐらいまで聞えない程の笑い声だったが、久しぶりに笑った感じがした。


「ククククククククク」


駄目だ止まらない。


笑いが止まらないんだ。


止まらなさそうだったので、一度大きく息を吸って心を落ち着かせた。


それでも笑えてくる。


明日香の顔をもう一度見ると、幸せそうに笑って寝てやがる。


だから、お前はどんな夢を見ているんだ。


頭を撫でるスピードははるかに遅いスピードだったが、ここにいる時間は永遠のように思えて、短く感じた。


ベットに頭をおく。


明日香との顔の近さ、大体15cm。


最初、会ったときだったら、こんなことは出来なかっただろう。


明日香じゃなかったらこんなことは出来無かっただろう。


そうだな。明日香にはいつか、お返ししなくては。


そう思い、明日香の寝息を聞きながら目を瞑ってしまった。







「う…」


目を擦る。


「朝か?」


そう呟いてその場に立つ。


すると、背中に感じていた重たいものがするっと落ちた。


布団。


明日香か。


また、笑いがこみ上げてきた。


只今の時刻20時。


ガチャっと明日香の部屋のドアを開く。


キッチンからは料理をする音が聞えた。


「あっ! おはよう! 今ご飯作ってるから、待っててね!」


と明日香が満面の笑みで俺に言う。


「おう」


といつも通りの返事。


ご飯も出来上がり、ご飯を食べる格好になった。


明日香と向かい合いながら座る。


「風紀?」


そと明日香の口が開いた。


「何?」


「あの…ごめんね?」


……。


何で明日香が謝ってるんだ?


「風紀の力になれなくて…」


…何言ってるんだよ、明日香。


「私…」


そういいながら、明日香の声は泣きそうな声に変わっていく。


「何言ってんだよ。明日香は、俺の支えだから。お前は居てくれるだけで十分なほどに、力になってくれているから」


少し照れくさい。


そのまま俺はご飯を口に運んでいった。


「明日香?」


そっと思いつく。


「何処か行きたいところある?」


明日香の箸が止まった。


「え? ん〜と遊園地かな」


遊園地か。


「じゃあ今度の日曜日、遊びに行くか? いつものお礼ってことで」


…。


「そこまで引かなくてもいいだろ」


俺がそういったのは、明日香の椅子がいっきに後ろへと下がったからだ。


そこまで驚かれると結構ショックなんですけど。


「う、うん」


微妙だって、その返事…。


「行くってことでいいですか? 明日香隊長?」


「はい。それでよい風紀軍曹よ」


軍曹って何ですか軍曹って・・・。


心の中でツッコミを入れた後、俺はご飯を食べ終わった。
















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