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Double Life  作者: Toki.
30/60

6−2


風紀が、この教室から姿を消した。


担任の小百合先生が入ってくるなり出て行った。


…先生が原因ではないだろう。


多分、この生徒が原因なんだ。


美人。


その言葉が似合うような顔持ち。


私は、その子をじっと見ていた。


「ねぇねぇ」


その子が私の方を向き、何か聞きたそうな声…いや、発言をしている。


「さっきの、風紀…香坂君だよね?」


「はい」


初対面の人にタメ語とは何事だ〜!


「付き合ってるの?」


「付き合ってないですけど」


「そっかぁ」と呟き、その生徒は廊下を見た。


風紀を探しているのだろう。


先生が先ほどの話をまた話題に持ってくる。


「けどねぇ、香坂と明日香ちゃんって仲いいんだよ?」


クラスの自慢のように話す先生。


「そういえばまだ紹介してなかったわね。こちらが、今日から転校してくることになった、木村 凛さん。明日香ちゃん仲良くしてあげてね!」


ウッフッフ〜ン♪ と言わんばかりのテンションで私に話しかけてくる。


「は、はぁ・・・」


溜息なのか、返事なのかよく分からない声を出してしまった。


時は過ぎる。


今の時間は8時38分を示している。


未だに隣にいるはずの風紀が戻ってこない。


凛って言う人は、担任室で待つように言われたらしい。


沙希はいつも通りの雰囲気。


そういえば、夏休みも3回しか遊ばなかった。


今更、後悔。


皆も、久しぶりに会えた嬉しさなのか、夏休みに入る前とは全く違う雰囲気。


「どうしたの、明日香?」


ふと、沙希の顔が私の視界全体に入る。


「ううん。何も無いよぉ」


エヘヘと笑って誤魔化した。


その笑いと共に、チャイムが鳴る。


結局…風紀は戻ってこなかった。


先生が来ると同時に、皆は自分の席に戻る。


ガラッとドアが開く音。


それから3秒後には「おぉぉぉ!」と男子の声が聞えてきた。


委員長が「起立! 礼!」といい、一日が始まる。


「え〜と、この人は木村 凛さん。親の用事があって、転入してきました。じゃあ、凛さん何か自己紹介を。何でもいいわよ。好きな子でも、好きな部分でも」


好きな子…好きな部分を紹介してどうするんですか先生。


って! 好きな部分って…え? どういう意味ですか!!


「え、え〜と。この学校のある一部の人とは知り合いです。例えば…香坂君とか」


そのとき、クラスからはザワザワとした声が聞える。


先生の「しっ!」と言う言葉と同時にシ〜ンとなった。


「これからよろしくお願いします!」


ペコッと頭を下げて誰から見ても可愛い挨拶の終わり方。


先生は、凛さんの席を一番後ろの右から2番目の席を指定した。


そんなことよりも、風紀が心配だ。


ホームルームも終了し、先生に風紀の居場所を聞いた。


保健室。


私は次の授業に間に合わないと思うが、保健室へと走った。


…ぅぅ。


直ぐ息が切れる。


1階に着く頃にはもうばてていた。


保健室のドアを開く。


「こんにちは…」


今にも倒れそうな声を出す私。


恥ずかしい〜!


「明日香ちゃん! 今…ちょっと取り込んでて」


いつも保健室に遊びに行くと居る先生が、私に中を見せないようにして外へ追い出してきた。


「ど、ど、どうしたんですか?」


「あのね今、中に香坂君が居るんだけど、何か様子が変なの」


「風紀が…ですか?」


先生は頷き、「もう家に帰すつもり」と言って教室に戻るようにと促した。


私は、保健室の前で立ち往生。


「風紀大丈夫なのかなぁ」


そう呟いた後、私は一限目の授業をする場所に向かった。


その日一日。


とてもつまらなかった。


いつも私の視界にいた風紀がいない。


そんな寂しいことは今あって、現状にあって…。


心に穴が開いた感じがしたんだ。


下駄箱に向かう。


下駄箱を開き、靴を取り出す。


毎日のように入っている手紙。


まず、名前を見て誰かわからない。


そういうものは捨てろと親に教えられた。


ゴミ箱にそれを捨て、いつもより歩幅を広げ、歩くスピードを2倍にする。


風紀に会いたい。


その一心で。


自分の家に着く。


右手でゆっくりとドアノブに手を掛け、ドアを開ける。


「ただいまぁ!」


シ〜ン。


…。


シ〜ンって何なんですかシ〜ンって。


風紀のドアを開ける。


「風紀!」


…誰も居ない。


家の中を探し続ける。


「…風紀」


すごく寂しい気がした。


気がつけば、手に携帯を握っている。


亮平君なら何か知ってるだろう。


アドレス帳を開き、亮平君に電話する。


「はい、もしもし?」


亮平君の声だ。


「りょ、亮平君! 風紀の居場所知らない?」


しばらく沈黙。


「ん〜、知らないな。何かあったの?」


「家に帰ったら見つからなくて」


「まぁ…そのうち帰ってくるだろうから、家の中で待っていてよ」


「うん」


「じゃ」


プープープーと携帯の悲しい音が流れる。


家の中で待っていてって言われてもそんなに待てないよ。


自分の部屋に行き、私はベットにドシッと倒れた。


風紀の元彼女の凛って言う人。


美人だった…。


風紀は過去に何があったのだろうか。


風紀の力になりたい。


そう考えても埒が明かなかった。


…私は涙を流した。







力になれなくて。
















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