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Double Life  作者: Toki.
17/60

4−1


「おはようございます部長」


「おはよう明日香ちゃん亮平君! それと風紀」


只今9時。特別教室入り口。


いつものように中途半端な挨拶を部長はしてくる。


顔が可愛い明日香と格好いい亮平は可愛がっているのだが、俺はよく軽蔑される。


まぁ、自分でもそこまで格好いいとは思わないが、そこまで格好悪いとも思わない。


いくら部長でも、そこまでされると結構ショックなんですけど。


「おはようございます部長」


明日香と亮平は愛想がいいのか俺だけ嫌われていることに気付いていないのか…。


何故かいつもハキハキと挨拶をしている。


今日の部活は夏休み始まってから初めての部活である。


休みの時に部活というのはこの映画研究部には珍しい。


まぁ、これから時々あるのだが。


何故亮平が一緒にいるのかというと、亮平が意味もなく朝早くから俺たちの家に来た。


もう一緒に住んでいることはばれているのだから怯えることも無いのだが、朝8時だぞ?


俺はまだ起きていない時間だ。


明日香は朝食を作るために起きている。


その時間に亮平は人の家に上がってきたのだ。


迷惑な奴め。


お前のせいで俺の素敵な朝が台無しではないか。


特別教室に着いて椅子に座る。


「おい風紀。なんか機嫌が悪いぞ?」


「そうか」


朝、お前に起こされたのだからな。不機嫌なのは当然だ!


俺の朝は明日香の素敵な声と共に始まるというのに…。


はぁ…と大きな溜息をつく。


「風紀溜息つくと、幸せが逃げるよ?」


明日香が本気の顔でこちらをみながら言う。


「ご忠告ありがとう」


笑みを作って俺は言う。


「どういたしまして」


悪意の無い笑顔でその返事が返ってくる。


「あのぉ…俺を挟んでイチャイチャしないでほしいのですが」


困った顔で亮平が言う。


考えてみれば俺たちの座っている順番は黒板に向かって明日香、亮平、俺なのだ。


ん?と言うかその前に


「「俺たち(私達)はいちゃついていない!」」


なんと明日香と俺の声がはもった。


「うぅ…」


亮平はもっと困った顔をしていく。


はぁ…とまた溜息をついて周りを見渡した。


只今この教室に居るのが


神藤(しんどう) 由美(ゆみ)先輩。一つ上の先輩で去年のエースでもあり、女の子人気裏投票では2位という実力の持ち主だ。


それでその隣に居るのが


神藤(しんどう) 静香(しずか)。由美の妹だ。俺たちと同じ年である。


結構人気はあるのだが姉とは逆で、大人しい感じなのであまり目立たない。


五十鈴は真面目な子なので俺たちより前に来ている。


まぁ俺たちが、ぎりぎりすぎるのかもな。


幸助は未だに来ていない。


当たり前のように副部長の龍先輩も。映画マニアの光雄先輩と悠太は映画をじっくり見ている。


はぁ…微妙な部活。


残り10秒で部活が始める。


その時、廊下からものすごい音がした。


そしてそれに続きガン! とドアが開く大きな音が。


「おはようございます!!!」


幸助だ。


「おはよう幸助君」


何事も無いかのように入り口で部長が挨拶。


残り3秒。


2秒。


1秒。


「は〜い、部活始めます! 皆さん席について!」


部長が九時きっかりにそういった。


あの人は確実にA型だろう。


ガラ。


ドアが開く音。



「おっはよぉ」


「おっはよぉ。じゃないわよ龍!! 7秒遅刻!」


「7秒ぐらいいいじゃねぇかよ」


「…はいはい。早く席について」


7秒というのはドアが開いた瞬間の時刻だろうか? …部長恐るべし。


「まず台本を渡すわね」


部長が教壇の上においてある、いかにも台本って感じの本を手に取る。


そして俺たちに渡す。


「まずぱっと目を通してみて」


初めての台本。


何気に緊張しているのは俺だけだろうか?


明日香は感動した目で見ているし、亮平は面倒くさそうに片手で持ちながら眺めているだけ


まずは誰がどの役かを見る。


…ん?


「誰がどれを演じるんですか?」


悠太が部長に問う。


そう、台本にあるはずの演じる人の名前が無い。


それに、登場人物の人数は11人以上。


この部活の人数をはるかに超している数だ。


「えっとそれはねぇ、これから決めていくの」


「そうなんですか…」


「まぁ悠太君は初めてだからね。あまり緊張しなくていいのよ」


部長が優しい笑みを作った。


あの顔なら結構もてるだろう。


…その性格がなければ。


「いつもどおり監督は龍に任せるから」


教壇の前に立って部長は言う。


その日の部活は台本を見て終わった。


部長は「どの役を演じたいか自分で決めてきて」


とは言っていたが、特にやりたい役も無い。


部活も終わり、今は明日香と食料の買い物。


その時、聞き覚えのある声が聞えてきた。


「明日香ちゃん?」


「部長!!」


部長だった。


「あら、風紀君も居たの。二人で何しているの?」


部長がニヤニヤして聞いてくる。


「たまたまそこで会って、ちょっと話していただけですよ」


俺は早く行け! という感情を押さえて、顔全体を使い笑みを作る。


「そうそう、二人ともどんな役がしたいか決まった?」


「私はまだですけど」


「俺も」


「まぁ、明日一通り役をやってみるからそれから決めてもいいわね」


うんうんと頷きながら聞いている明日香。


「部長はどれがしたいんですか?」


なんとなく部長に聞いてみた。


「私? 私はねぇ、コレかコレ。なんか面白そうだから」


ニヒヒと笑いながら自分のカバンに入っている台本を取り出して指を指す。


あなたはいつも台本を持っているのですか。


まぁ、どちらとも内容的には脇役なのだが、大切な役だ。


「まぁ部長に…あってますね」


これが俺の本当の感想。


「ありがと。」


部長はそう言って俺の頭をつついた。


「じゃあ、私はお二人の邪魔をしないように、もう戻りますかね」


そう言ってタッタッタッタと行ってしまった。


「俺たちも会計終わらそうか」


「そうだね」


ただ呆然に、部長の走る姿を目で追いかけていた。



















本日は、4話更新となります。






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