表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Double Life  作者: Toki.
15/60

3−5





明日香視点となります。ご注意ください。






私が実家に帰ったのは2つ理由があった。


ひとつはお母さんが帰っておいで。と言ったから。


もう一つは…大和君に会えるかもしれないと思ったから。


その2つ目の大和君になんと…出会った。


そのとき心が揺らいだ。


涙が出そうになった。


何も考えられなかった…。


私、傷ついているのに。


あなたのせいで。


「や、大和君」


と呟いた私はその後何も出来なかった。


放心状態になった。


誰かが私に「大丈夫か?」と聞いてくる。


大丈夫?


そんなわけが無い。


中3の終わりに、あんな出来事があったのだから。









私は、2年生の夏休みから付き合っている子がいた。


その子とは幼馴染で、昔から好きだった。


私の初恋はその子で、彼の初恋も私だと言うことが中2の夏知った。


「明日香…俺、お前が好きなんだ。付き合ってくれないか?」


大好きな大和君からその言葉を聞いたとき、私は天まで登りそうなぐらい好きだったのに…。


あんなことが起きるなんて。


私達はなんにも危険も無くただ普通に付き合っていた。


しかし中3の終わりごろ、私は大和君に公園に呼び出された。


最近何か変。


それは気付いていた。


だから、今日は気分治しに一緒に喋ろうと思っていたところだ。


公園に着くまでの10分間私はいろんな妄想を広げていた。


何が起こるのかな?


大和君にまた会えるんだなぁって。


けどその思いは公園に着いたとき一瞬にして飛んでいった。


そこにいたのは大和君…と女の人。


噂では聞いていた。


一つ上の美人な優しい先輩。


私が来たのを確認すると、大和君とその先輩は手を振ってさよならをしていた。


そのさよならをした後の大和君の顔が悲しそうに見える。


どうしたの…?


何でそんな悲しい顔をするの?


彼女が来たというのに…。


「よっ、明日香」


手を挙げてこっちによってくる。


「やっほ。大和君。」


3秒ほど沈黙。


「明日香今日は…」


その後をなんとなく聞きたくなかった。



「そうそう知ってる? 2組の弥生ちゃんがね、県統一テストで一番の点数取ったんだって! すごくない?」


私はわざと、大和君の話を止めた。


「へぇ…」


「それでね、弥生ちゃんったら…」


その後の言葉が出てこなかった。


何故か急に涙が出てきて。


「弥生ちゃんったらね、自慢…し、してく……くるの…」


涙が出てまともに喋れないよ。


「明日香…」


そう言って大和君は私の頭を自分の胸に引き寄せた。


だけど、私は大和君を突き放してしまう。


「…明日香」


何を言われるかは分かっている。


私はうつむいたまま、涙を流している。


「俺、他に好きな人が出来たんだ」


…分かってるよ。


分かってたんだよぉ…。


「だから俺と…」


私は、大和君の言葉を遮った。


「嫌! 嫌嫌嫌! 大和君と離れるなんて…嫌なの」


涙が止まらない。


「明日香…」


「嫌!!」


そのまま私は地面に座ってしまった。


足の力が抜けて立てないのだ。


「ごめん明日香」


大和君の声が聞えてくる。


「私は大和君の事好きなのに! 何で…何でよぉ」


「明日香…俺もお前が好きだけど。」


なんでそんなに大和君は私に優しくするの。


ただ…ただ辛くなるだけ。


「大和君の馬鹿」


そう言って公園は私の泣き声で埋まっていった。


大和君が近くにいるのはまだ感じる。


人生でこれほど泣いたことはないだろう。


今、天から地に落ちた…気分。


「明日香…分かってくれ」


そう言って大和君は私の前に座った。


「明日香…」


私の頭を触る。


「何でよぉ…」


涙が止まらなかった。


止まるまで家には帰れないと何故か今だけ冷静になっている。


冷静になっているが、涙が止まらない。


今気付いた。


私はここまで好きだった。


大和君はそこまで好きじゃなかった。


…そう思って自分を納得させた。


その日以来私は学校へは行かなかった。


大和君と喋りたくなかったし、会いたくも無かった。


受験勉強に集中して、第一希望の遠い学校へ進学した。


そこではある男の子と二人で暮らすことになってしまう。


その人を見るとなんだか落ち着くの。


大和君にどこか雰囲気が似ていて…。







そして今日、大和君に出会った。


その近くにはあの女の人がいて、何も出来なかった。


本当に会いたかった。


だけど、大和君の幸せを邪魔したくなかった。


「ん? その人、新しい彼氏?」って聞かれたときは少し悲しかった。


平然とした顔でそのことを言うから。


悔しくて本当は彼氏じゃないのに「そ、そう…だから近寄らないで!」と言ってしまった。


その後、落ち着きたくて風紀の服をつかんだ。


…落ち着く。


「そうか。元彼の俺が出る幕じゃなさそうだな。また、会えたら会えたで話してくれよな!」と言って大和君は彼女の元へ戻って行った。


涙が出そうになった。


だけど堪えた。


ここで泣いて、まだ心残りがあるなんて大和君に知ったら…。


我慢して、我慢して、やっと家に着いて自分の部屋で泣き崩れた。


3人は雰囲気を察してか、私の部屋に入ろうとはしなかった。


あり難い。


今はどうしようもなく一人になりたかった。
















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
感想、評価お待ちしております。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ