幸せは、お金じゃ買えない
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ーー幸せは、お金じゃ買えない。僕が言いたいのはそれだね。
100万円のフォアグラを食べて、君は喜べるかい? ああ、喜べるかもね。でもさ、そんなものよりも、実家で婆ちゃんが作ってくれた煮物の方が、こう……ジーンとくるだろ?
つまり、そういう事だ。
僕の友人に3億円の宝くじが当たった人がいたんだけど、なんと2日後に、行方不明になっちゃったんだ。おっかない話さ。僕は彼のように宝くじを当たったとは言いふらさなかったけど、どちらにせよ、3万円で誘拐を企てる人はいないよね。僕はその3万円、家族旅行に使ったよ。
さて、3億円の彼と3万円の僕。一体どちらが幸せだったかな?
ーー幸せはお金じゃ買えない。つまりこう言い換えれるね。幸せはお金じゃない。
もっと視野を広げてほしい。朝日を見た事はあるかな都会っ子諸君? 海から顔を覗かせた太陽。山の谷間への引っ込む夕日も見た事がないんじゃあないのかな?
ファミレスで「ご注文は?」と聞いてくる人間が若い女性だったら幸運さ。道端で財布を見かけたら交番に届けよう。その時のおまわりさんの顔を見るだけで、僕は幸せになるはずだ。
ーー幸せは無限大。
1人1人が意識する事が大事なんだよ。僕はさ、子供の頃に考えた事がある。世界中の人から、たった1円をもらうだけで、たちまち億万長者になれるってね。その時の悪魔的考えは今でも僕の誇りさ。
塵も積もれば山となる。とか、まさにそれだよ! 君が幸せになれば、周りが幸せになる。そしていずれは、世界中が幸せになる。
僕は君たちに伝えたい。幸せとはなんなのかを。無限大の可能性を秘めた、お金では決して買う事のできないその意味をーー』
パタン、とここで本を閉じた。
著者の名は〈はすたろう〉……ふーん、内容に比べて名前は随分と大人しめだな。それにしても、幸せはお金じゃ買えない、か。
……ま、少しは為になったかな。そうだね、少なくともこの本は、680円の価値があったと僕は思うよ。
……宝くじ当たりてえ。