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松風と薄雲と朝顔
雲の上のすみかを捨てて夜半の月いづれの谷にかげ隠しけむ
雲の上の住処を捨てて夜半の月は何処の谷に光を隠してしまったのでしょう。
※亡くなった桐壺院を月に喩えた右大弁の歌。
浅からぬ下の思ひを知らねばや猶篝火の影は騒げる
浅からぬ愛情の深さをご存知ないから、未だにあの篝火の灯りのように気持ちが騒ぐのでしょう。
※明石の君の歌に対しての光源氏の返歌。娘と離れて暮らしている明石の君が鵜飼を見て須磨や明石での暮らしを思い出した歌に対して互いの愛情を確かめ合うような遣り取りに大人の安定感を覚えます。
人知れず神の許しを待ちし間にここらつれなき世を過ぐすかな
人知れず神のお許しを待っていた間、こんなにも長く情けない日々を過ごしました。
※光源氏から朝顔の姫君への歌。賀茂の斎院であった姫君の在任期間は八年で、長年待ち続けた気持ちを伝えるもの。




