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須磨
見しはなくあるは悲しき世の果てをそむきしかひもなくなくぞ経る
かつてお仕えした方は亡くなられ、生きている方は悲しい身の上。出家した甲斐も無く泣き暮らしています。
※藤壺の歌で「見しはなく」は桐壺院、「あるは悲しき」は光源氏の事。
唐国に名を残しける人よりも行方知られぬ家居をやせむ
唐の国にその名を残した人よりも、行方も知らぬわび住まいをしなければならないのだろうか。
※唐国に名を残しける人は屈原だと思われる。重用されていたが、陥れられ流浪の身となり、最後には自ら命を絶った。都を追われた自らと重ね合わせた光源氏の歌。
故郷をいづれの春か行きて見むうらやましきは帰る雁がね
故郷を何時の春に見るだろう。羨ましいのは帰って行く雁です。
あかなくに雁の常世を立ち別れ花の都に道や惑はむ
思いを残したままの雁は常世から立ち別れますが、花の都への道にも迷うでしょう。
※光源氏と都へと帰る頭中将の歌。後に政敵になりますが仲の良さが感じられます。




