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私選和歌集  作者: 如月瑠宮
中古三十六歌仙より
58/73

その肆

つらからば人に語らんしきたへの枕かはして一夜ねてきと 藤原義孝

 貴方がつれないのならば人に語ろうと思っていました、枕をかわして一夜寝たのだと。


※一見、女性と交わした歌のように見えますが「修理大夫惟正が家にかたたがへにまかりけるに、いだして侍りける まくらに、つとめてかへるとてかきつけ侍りける」とあるので方違えで行った上位の人の家で綺麗な枕を使わせて貰って感動し戯れに詠んだのでしょう。




めづらしき光さしそふ杯はもちながらこそ千世もめぐらめ 紫式部

 素晴らしい月光が差し込む杯は人々の手から手へと千世巡るでしょう。


※詞書は「後一条院うまれさせたまひて七夜に人々まゐりあひて、盃いだせと侍りければ」となっています。紫式部が仕えた藤原彰子に親王が産まれた事を祝った歌です。




歌欠落 道綱卿母


※歌は欠落してしまっていますが、彼女の事を少々。「蜻蛉日記」の著者で「本朝第一美人三人内也(日本で最も美しい女性三人のうちの一人である)」と書かれている書もあります。藤原兼家の妻の一人で日記には兼家との結婚生活も綴られています。「更級日記」の作者、菅原孝標女は姪です。




雪をうすみ垣ねにつめるからなづななづさはまくのほしき君かな 藤原長能

 雪が薄くなってきたので垣根に摘んだナズナの花のように貴女と慣れ親しみたいと思います。


※ナズナの花を付けて女性に贈った歌。ナズナは春に白い花を咲かせるので雪と譬えているのでしょう。ちなみに道綱卿母は姉、菅原孝標女は姪に当たります。




かりそめの別れと思へどしら川のせきとめがたき涙なりけり 藤原定頼

 仮初めの別れと思いますが白河の関を越える貴方を思うと止め難い涙です。


※詞書によると橘則光が陸奥守に任じられ、任地に向かう彼に送った歌です。昔の移動手段から考えると暫しの別れとは言え、友人と会えなくなるのは寂しいでしょうね。




思ひやれ霞こめたる山里の花まつほどの春のつれづれ 上東門院中将

 思いやって欲しいものです。霞立ち込める山里で花を待っている春の徒然を。


※「長楽寺中将」と呼ばれる「長楽寺にすみ侍りけるころ、二月ばかりに人のもとに言ひつかはしける」歌。手持ち無沙汰に花が咲くのを待っている自分を思いやって欲しいと言っています。都に居る人に寂しいから訪ねて来て欲しいという思いを伝えているのでしょう。

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