7番から10番
天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山にいでし月かも 阿倍仲麻呂
はるか大空を見上げてみると月がとても美しい。あの月は故郷の奈良の春日にある三笠山の月と同じなんだろう。
※小倉百人一首と同じ歌です。この方、漢詩は見つかれど和歌が見つからない・・・
土佐日記では「天の原」が「青海原」になって載っています。意味は「青々とした海」です。大空と青い海、どちらも美しい情景が浮かんできます。
木の間より見ゆるは谷の蛍かもいさりにあまの海へ行くかも 喜撰法師
木々の間から見えるのは谷間の蛍だろうか・・・それとも、海へ行く漁舟の漁火だろうか。
※伝わるのがこの歌と百人一首の二首という喜撰法師。個人的にはこちらの方が好きです。
幻想的な光景が頭に過ぎります。今の様な光源が無かった時代の「灯」が偲ばれます。
それにしても、この喜撰法師・・・百人一首に選ばれ、六歌仙に選ばれ・・・凄いお方ですね。
岩のうへに旅寝をすればいと寒し苔の衣を我にかさなむ 小野小町
石上ならぬ岩の上に旅寝をすれば肌寒くてなりません。貴方の苔の衣を貸してください。
※石上寺に参詣した小町がそこに僧正遍昭(12番の作者)が居ると知って贈った歌。
「苔の衣」は僧衣の事。つまり、遍昭は出家しています。一見、遍昭の道心を試した様ですが、実際は出家しても風流を忘れていないかを試したのでしょう。
遍昭の返事は「世をそむく苔の衣はただ一重かさねばうとしいざ二人寝む」残念ながら法衣はたった一重しかないので寒さをしのげないが、貸さなければ冷淡・・・ならば二人で肌を寄せて寝ましょう。
六歌仙同士の手練れた問答に惚れ惚れします。
世の中はとてもかくても同じこと宮もわら屋もはてしなければ 蝉丸
この世の中ではどういう生活をしても結局は同じことだ。華やかな宮殿も粗末な藁屋も、最後にはなくなってしまう。
※作者不明の歌集もありますが、新古今和歌集等多くの歌集に載る歌。第三句を「ありぬべし」あるいは「すぐしてむ」とする本も。
この歌は蝉丸が粗末な藁屋に住んでいたのを笑われて詠んだものです。彼は盲目の琵琶の名手であったと伝わります。




