73番から76番
かりそめのうきよの闇をかき分けて羨ましくもいづる月かな 前権中納言匡房(大江匡房)
仮初めのこの世の闇をかき分けて、羨ましい事に出る月なのでしょう。
※周防内侍(67番作者)が出家したと聞いて送った歌。月は周防内侍の事でしょう。辛く儚い俗世から離れた彼女を羨ましいと思ったのでしょうね。
赤染衛門(59番作者)の曾孫に当たります。幼少の頃から文才があったようで、「洛陽田楽記」「本朝神仙伝」等多くの著書があります。
故郷は散る紅葉葉にうづもれて軒の忍ぶに秋風ぞ吹く 源俊頼朝臣
故郷の家は散る紅葉に埋もれて、軒の忍ぶ草に秋風が吹いている。
※荒れた家に紅葉が散っている様子が描かれた障子を詠んだ歌です。「忍ぶ」から荒れた家で恋人を待つ女性の姿が思い浮かびます。
源経信(71番作者)は父親、俊恵法師(85番作者)は息子。始めは楽人として活動していたようです。
歌会で歌の中に自分の名前「としより」を読み込んだ逸話があります。凄いですね。
風に散る花橘に袖しめて我がおもふ妹が手枕にせむ 藤原基俊
風に散る橘の香りを袖に染み込ませて、私が思う愛しい人の手枕にしよう。
※橘の香りと言えば、昔を懐かしむ事に結び付く物です。「我がおもふ妹」は昔の人なのでしょうか?しかし、歌には「昔」であると断定出来ないので、「今」の人だと良いですね。
限りなくうれしと思ふことよりもおろかの恋ぞなほまさりける 法性寺入道前関白太政大臣(藤原忠通)
限り無く嬉しいと思う事よりも愚かな恋の方が勝っている。
※関白まで昇りつめた忠通が限り無く嬉しい事である「出世」よりも恋が上だと言っている歌。丸谷才一の「新々百人一首」に選ばれています。
息子に慈円(95番作者)、孫に九条良経(91番作者)が居ます。




