始まりの始まり
うああああ!、キャアアアアッ!、シニタクナーイ!、辺りには乗客やクラスメイト達の悲鳴や絶叫で阿鼻叫喚の地獄絵図になっている。
(ドゴォンッ)
その音と共に、大きく床が傾く。乗客達にも緊張が走り、更に混乱を加速させていった。
「これで、3回目・・・完全にエンジンが逝ったな、それに翼が損傷したのか?どっちにしろ、このままじゃ助かりそうにないな。」
少年は窓を見ながら呟いた。
傍から見れば、どうしてこれ程までに冷静でいられるのか疑問に思うだろう。
俺こと、紅羽 九郎は生まれて初めての絶体絶命に陥っていた。
一体、何が俺の身に降りかかったのか・・・それを順に追って説明するならば、まずは今朝の出来事から話そう。
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季節は夏。皮膚を焦がす様に照り付ける太陽に、眉を歪ませながら担任の指示のもと、修学旅行の目的地である、沖縄空港へとバスを降り向かっていた。
なぜ、バスで入口まで向かわないかと言うと、俺達の学校はそこそこ規模が大きい為。
修学旅行に参加する、二年の生徒だけでも101人もいるのだ。
「熱い・・・もうすぐ10月も終わるって言うのに、どうしてこんなに暑いんだよ」
額から流れ落ちる、汗も袖で拭いながら、忌々しそうに呟く。
そこへ、隣りを歩く男子生徒が話しかけてくる。
「よかったじゃねぇーか、折角の沖縄だぜ?海で遊ぶには最高だろ」
俺の独り言に反応したのは、見るからに体育系という様な、高身長で日焼けが目立つ男子生徒だった。
名前は北条 力也、俺の小学校からの親友だ。
「・・・お前、俺がカナズチだって知ってて言ってるだろ」
「あれ?お前まだ泳げないんだっけ?」
「・・・・・」
無言で、ジト目を向ける俺、力也は若干気まずそうに苦笑を浮かべる。
「・・・、ま、まぁ気にすんなって」背中親友にバシバシと叩かれながら、空港のロビーへ到着する。
中は、エアコンが効いており、外とは違い快適だった。
一息付いた所で、少し自分のスペックについて話そうと思う、よくあるご都合解説みたいな物だ。
改めて、俺は紅羽 九郎、高校2年生で現在修学旅行中。
さっきも言った通り、カナズチで運動音痴、更にイケメンでも無く、頭脳明晰でも無い。
更に、中学でイジメられた経験があったせいで、若干コミュ症気味な面もある。
唯一自慢できる所が有るとするならば、ガンオタである事だけだろう。
まぁそんな感じに、スペックは一般人以下な訳だ、あれ?自分で言ってて悲しくなってきた。
隣の奴もオマケで説明すると、名前はさっき紹介した通り、北条 力也、運動神経抜群で顔も上の中、正義感も厚く女子からモテモテのリア充だ、どうしてこんな奴と親友やれてるのか、偶に疑問に思うこともある。
そんな感じに誰に説明しているのか、自分でも疑問に思いながら、空の玄関を通り、飛行機に乗り込むのだった。
飛行機が出発してから約2時間が過ぎ、あと一時間弱で空港が見えるという所で事件が起きた。
「おい、外がヤバイぞ!」
一緒のクラスの男子生徒が血相を変えて窓に張り付きながら言った、それに釣られるように窓側の生徒達が窓の外を見る。
俺も釣られて外を見ると、外は灰色の雲に覆われており、時折蒼白い閃光が室内を照らす。
そんな、見るからに危険な状況を、俺の隣から見た力也も確認したのだろう。
「九郎、これって乱気流って奴じゃないのか?」
若干顔を歪めながら、聞いてくる。
「う~ん、天気予報で嵐や台風が近づいてるって事は言ってなかったが」
「それに、乱気流に巻き込まれたぐらいで、そうそう飛行機は落ないだろう」
「それも、そうか」
俺も内心穏やかでは無いが、乱気流に巻き込まれても、そうそう落ちる事は無い事を知ってる自分にはまだ、少し余裕があったのだ。
俺の言葉に少し安心したのか、力也はマニュアル通りシートベルトを装着した。
俺もそれに習い、シートベルトを装しようとした所で・・・・・・
(ドゴォンッ!”)
”雷が右エンジンに直撃したのだ”
機体は大きく揺れ傾き、機内アナウンスが流れる。
『乗客の皆様は、乗務員の者の指示に従ってください』
その言葉と共に、機内はパニックに陥った。
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「・・・とまぁ、現実逃避してみたが状況は何も変わらねぇ・・・・」
現実逃避の為の回想も終わってしまい、どうしようか考え始める。
カナズチの自分は海に墜落した時点で、まず助からない。
内心パニックだが、助からないという事が分かったら何故か、落ち着いてきている自分がいるのだ。
ふと、隣を見ると親友と目があった、死ぬかもしれないこの状況で、力也も自分と同じ心境なのだろう、二人とも苦笑した。
「死ぬのなら、童貞卒業してから死にたかったな」
こんな、状況でも冗談を飛ばして来る親友に、こちらも苦笑いを浮かべながら言う。
「俺は、11月に発売する、ラノベの最終巻を読みたかった・・・」
「は~、俺達本当に死ぬのかな?」
「俺は、兎も角お前らは助かる望みはあるんじゃね~か?」
「無事不時着したら、お前を担いで言ってやるよ」
「頼りにさせてもらうか」
あと少しで死ぬ事は分かってる、だからこそ俺達はいつも通り、会話を続けた。
そして、その時が訪れた・・・
激しい衝撃の後、俺達は海水に飲み込まれ、意識が途絶えた。
どうも作者の紅月シンラです。
一話のあとがきということで、注意だけでも書かせて貰おうと思います。
この作品が自分の初執筆、初投稿でございます。
誤字、句読点、読み難い等は確定的に明らかなので、其処ら辺は感想等で教えてもらえれば、修正していきたいと思っています。
ストーリーもその場で考えて書いているので、「どうしてこうなった」等の事があると思いますが。出来れば皆さんに楽しんで貰えるように、書いていきたいと思います。
それでは、直接聞きたいことは感想で。では皆さん、プロローグでまた逢いましょう。それでは