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みじかい
さして面白くもないドラマの再放送を食い入るように見詰めている少女を俺は見詰めていた。ガラスの器に盛りつけたパイナップルのアイス食い入るがただの甘い液体になるのを伝えようにも、年頃の少女の興味関心は液晶画面にあって俺にはない。すこし腹立たしさを覚えて、俺はだいぶ柔らかくなった黄色いアイスクリームを一掬い、口に入れた。溶けていなくともそれは、つんとした刺激と探さなければならないくらいの苦みがあって、あとは舌に纏わり付くような甘さが殆どだった。生温くないだけましかもわからないが俺の味覚では美味とは捉えがたく、俺はテーブルの上のペットボトルを開け冷たいミルクティーを咥内へ流す。少女はそこでやっと俺を見たが、僅かに眉を顰めた。ペットボトルを差し出すと、彼女は少し間を空けてから受け取り口を付ける。それは間接キスじゃないのかなんてからかって、だから何ですかと冷めた目で見られたのは何時だったか、もう慣れきった現状に笑いそうになる。
少女が此方に視線を遣ったのは、コマーシャルに入ったかららしく、軽快なテーマソングと共に主人公の叫ぶ声が耳に入るや否やその視線は色の白い俳優へと向けられる。悲痛そうにヒロインへの愛を募らせる様はいっそ愚かで、煩わしい。
「楽しいの、それ」
「……まあ、まあ」ぼんやりと答え、彼女は画面をじっと眺めていた。何かを吸い取るようにして、探すようにして、彼女はその台詞や表情、動作を見詰めていたのでまあまあではなく楽しいのだろう。彼女にも年相応の趣味がある事に若干安堵しつつ、俺は自分のアイスクリームを掬いとる。ぴりっと爽やかな辛さとチョコレートの甘味が混ざって、すこし不思議な味がした。