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第五話 ルームメイトが異性なんて展開は主人公に回せ。……いややっぱ有り難く堪能します

 王女サマの制止を振り切って逃走に成功した俺は無事に自分の住む寮の部屋へとその身を預けることに成功していた。ああいうのは構うだけ無駄なんだ。ただでさえ今日は色々あって疲れたというのに、体力消耗に拍車をかけたくはない。で、今自室にいるんだが……少々困ったことになっていた。


 話は変わるが、この学園に置いて一般生徒の寮部屋は同学年の誰かと共同使用ーーつまるところ相部屋となる。狭くはないが広くもない一室、トイレや風呂に簡易的なキッチンなどが一部屋一部屋に揃っているのはちょっぴり豪華だ。自炊しない人のための食堂なんてのもあり、許されるならばずっと借りていたいと思わせる。

 さて、脱線してしまったが話を戻すと相部屋とは見知らぬ誰かと同じ部屋で生活するということであり、その人物と友好関係を結ばねば学園生活は悲惨になることは明らか。昨日は手続き中だからと寮で同室の人とご対面は叶わなかったが、今日はもう手続きが完了したため正式入寮となる。

 本当なら緊張するのだろうが、生憎と王女サマに追いかけられたせいで息も絶え絶えな俺は心を正して緊張しながら入るくらいならさっさと入ってベッドなりソファーなりに身体を投げ出せと脳が訴えていたこともあり、呆気ない程簡単に鍵を開けて同室者と対面した。


「あ、すみません部屋間違えました」


 ガチャ、バタン。

 ここまで十秒の半分もかからなかった。号室は202、間違いない。表札にだって東堂とかかれた紙が差し込まれてる。よーし確認完了。つまりここは紛れもなく俺の使用する部屋で、俺が間違えてるってことはない。ついでに同室者の表札も確認したが残念ながら扉の向こうにいる相手は不法侵入ではなく合法的に入室していることも判明。


「なんで相部屋の相手が貴方なんですかねぇー!?」


「その抗議は学園に言った方が建設的だと思うぞ? ようこそ202号室へ。歓迎するよ実」


 ブレザーの上からエプロンを着、両手に鍋を抱えたままこちらを見てさりげなく俺の名前を呼ぶその人。しかも流暢だった。てっきり相部屋は信濃かと思っていた俺からすれば寝耳に水どころかガソリンを直接注入されたかのようなショックを感じてしまう。


「ネロさん……! なんで異性が俺と相部屋なんだよ……」


 ーーギャルゲなんて目じゃあない、クラスメイトの猫耳侍、ネロさんがそこにいた。



 という訳で俺は非常に困っている。異性と一つ屋根の下なんて憧れるだろう? とか言うけど、実際にそうなるんじゃあメリットより色々なことに対する心労の方が大きい。しかもその相手が恐らく同い年、艶やかな黒髪の凛々しいお方で猫耳である。ぶっちゃけると俺の好みドストライクだった。

 ちなみに言えば相部屋の組み合わせというのは余程のことが無い限り卒業まで続く。つまり俺はこれから三年近く、己の欲望と戦わねばならなくなったということ。学園は何をやってくれちゃってんの?


「ネロさんも今日会ったばかりの男と一緒なんて嫌だろうに……」


「そうでもないな」


「ぬあっ! ノックぐらいしてください!」


 まさか独り言に返事が来るとは思うまい。予想外の声に肩を跳ねた。もちろん、この家に俺以外の人間はネロさんしかいない。一応扉は閉めていたはずなのだが。

 非難するかのような俺の言葉に、ネロさんは何度もしたさと少し心外そうに答えた。あれ? 俺それが聞こえなくなるくらい集中してた、のか?


「話を戻そう。そもそも学園でも男女が相部屋なんてそう珍しくないからな。一年だけでも二十組近くはあるはずだ」


「はぁ!?」


「見たところ、実は私を襲うような性格でもないだろうし、襲ってきたとしても対処が可能な強さ」


「死んでも襲いません」


 対処が可能、と言いつつ自身の背中に手をやるネロさん。その姿に教室にあった彼女の武器を思い出して反射的に頷いた。覗きなんてしようものなら斬られるよこれ。


「ふふ、素直なのはいいことだよ。それからせっかくルームメイトになったのだから、お互い敬語はなしにしないか?」


 ほら問題ない、と笑うネロさんは次に俺にとってありがたい申し出をしてくれた。元々敬語を使う質じゃない俺には願ってもないことだった。けど確かにルームメイトに敬語ってのもおかしな話だし、当然と言えば当然かもしれない。


「あぁよろしくネロ」


「こちらこそ、よろしく頼むよ」


 こうして、相部屋問題については一定の納得をすることにしておしまいにした。信濃がネロに変わっただけだと思えばむしろ楽しめるかもしれない。なんてったって制服エプロン、いつかメイド服だって着てくれるかも……! 夢が広がるぞ!

 とても本人に言えるような思考でないのは重々承知だが、思うだけならタダだ。後々気を使わなきゃいけない事で一杯一杯になるだろうからな。


「ちなみに私との仲が進展したら猫耳が触れる日も来るかもしれないな」


「マジで!?」


「少なくともメイド服よりはそちらの方が早い」


「すいませんした……」


 思考読まれたでござる。微笑みながらジョークを交えるネロに俺は謝ることしか出来なかった。



 余談ではあるが、本日の夕食はネロが作った具が男らしい大きさのカレーとポテトサラダだった。料理は得意なんだと余り無い胸を張る彼女の言う通り、美味しかった。これからの夕食が楽しみでなこりゃ。

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