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第四話 人に迷惑かけるハーレム要員は許さない。ってか実際に見たらドン引き出来る

 放課後。一緒に帰らないかとネロさんやアークさんが誘ってくれたがそれをお断りしてたった一人で帰り道を歩んでいた。選択授業の時間、重重先生が出した提案は非常に危険な提案だった。


 ーーー皮膚全体に張る魔力、更にそれを維持する量はトードーミノル君にとって無視できません。つまり攻撃を受ける時、意識的にその場所だけに無駄無く張れるようになれば……。


 ーーーいえ、残念ながらこれでもせいぜいクラスの上位になれるかでしょう。本当に強い生徒は、もう次元が違いますから。


 なんだかなぁ……。夕暮れ時の下校は、前の日常と違った悲しみをもたらしてくれる。

 常に大怪我の危険背負ってまで強くなりたいかなんて、そんなの嫌に決まってるんだ。信濃ならまだしもよ。

 つかそもそもな話、魔法を視認してから防御魔法で防ぐなんて一瞬なんじゃないのか? 『攻撃』なんて付くんだから、速度だってそれなりだろうに……。

 野球の打者は相手がボールを放した瞬間に全て判断してバットを振らなければ間に合わない、なんて話を聞いたことがある。攻撃魔法全部がプロ投手の投げる球並の速さという訳じゃあないだろうが、それでも同等かそれ以上の速度を持つ物、速さ以前に地点指定のものだってあるだろう。

 それらに対してどこへどれくらいの魔力を巡らせるか、なんてのを瞬時に判断出来る能力を俺は持ってなどいない。そういう意味では重重先生提案は実に無茶なものであった。例えそれが俺に対して必要なことだとしても。

 なんだかんだ言っても俺は信濃の親友、同じ場所にいるのだからその横で支えてやりたいとは思う。勇者の横に立とうなんて村人A役にゃおこがましいかもしれんがな。


「東堂 実ですわね?」


「んあ?」


 先生の提案を受けようーーそう決めた直後のことだった。俺の後方から、もう聞いただけで嗚呼……と思えるような声が聞こえたのは。

 誰だと振り返ってみると金髪のドリルみたいな髪型をし、目を吊り上げたドレス姿の女の子が立っていた。しかもその顔にはどこか見覚えがあるような、ないような。

 ぶつちゃけ無視したかった。およそ初対面の人間に取るような態度じゃない。むしろどこか敵意を含んでいるような気すらする。


「どうして貴方なんかが信濃と同じクラスなんですの!?」


 ……知らんがな。


「っていうか誰だあんた? 信濃の知り合いみたいだが……」


「私はエクリシア王国第二王女、エレン・アーネスト・エクリシアですわ! 信濃がこの世界へ帰ると言っていたから付いて来たというのに……何故こんなところへ連れ去られ、クラスが別なのですか!?」


 知らんがな……。っていうか言われて思い出した、こいつ信濃と一緒に俺の部屋に異世界転移してきた奴じゃねーか。あん時は何言ってっかサッパリだったのに何で今は通じてんだろう。お陰で酷い言いがかりくらってんだけど。

 というかその文句、言うならあのチビっ子学園長に言うべきだろ。クラス分けとか俺の関わる事じゃねーしそもそも俺お前らのとばっちりで転校する側になったし。アホくせぇ……帰ろうか。

 相手にするのも馬鹿馬鹿しくなるもので、拒絶の意味込めた溜め息を盛大に吐いた後、くるりとその女に背を向けて止めていた足を再び動かした。いやー、世界が違う今は王女とか心底どうでもいい肩書きなのになー。こいつ、信濃の受けた洗礼を知らないのだろうか?


「ま、待ちなさい!」


「だが断る。クラス云々は俺じゃなくて担任か学園長に言えよ。めんどくさい」


 いっそ清々しくなるくらいバッサリと切り捨てた俺はそのまま帰ーー


「待 ち な さ い」


 たら良かったのになぁ……。がしっと思いっきり肩を掴まれ、王女様が出すとは思えない低い声て強制的に止められた。もう勘弁してくれよ。本当に俺が何したってんだよ。クラス同じか否かどんだけキレちゃってんの? ハーレムって怖い、そう思う。ハーレム夢見てる人は絶対誰か一人だけ攻略しとけ。周りに迷惑かかるから。

 そんな後世の異世界トリップする若者への届くことのない忠告を考えた後、この目の前のお嬢様をどうしようかとの思考に移った時ふとある疑問が浮かんできた。


「そう言う割には、今日の休み時間とか来てなかったようだが」


「同じクラスの方達に捕まってとても信濃の元へ行ける状態ではありませんでしたわ!」


「それはエレンちゃんが皆の質問にいちいち答えるからだよー! 何だかんだ言って律儀に全部答えてたんだから!」


「ぬおお!?」


 パッと俺と王女サマの間に一瞬だけ風のようなものが渦巻き、それに反応して瞬きした瞬間には学園の制服を着る一人の少女が俺と王女サマの狭い間に現れていた。胸にあるリボンは赤色かつ右側に一本の線が入っている。俺達と同じ高等部一年であることの証だ。金髪に負けず劣らずのロングヘアーだがしかしその髪は風に揺られてさらさらと棚引く。CMで女の人が見せつけてるのと同じくらい。手を突っ込んで下に引いても抵抗なくすり抜けそうだな。元気そうな声とは裏腹に目は半開きかって疑えるくらいしか開けてない。そして特筆事項は頭、見ろよ、三角錐の猫耳よりスマートなソレ。……狐っぽい気がしなくもない。


「庶民が王族である私と話せるなんて機会は滅多にないことで、私はそれに対応してあげただけですわ。と言うか毎度言いますけど転移魔法で目の前に現れるのは止めなさい!」


「またまたそんなこと言ってー! ちょっとつっかえながら必死に受け答えしてた癖に!」


「あー、どうでもいいけど、帰っていいか?」


「駄目ですわ!」 「いいよー」


 正体不明の獣人が王女サマに絡んでいる間、話相手を取られた俺は非常に暇になった。異世界人なんて要素は教室のほぼ全員な訳だし、残念ながらこの一日で慣れてしまった。まぁ会話を聞いててちょこっと王女サマの評価を上げたりはしたけど。典型的なまでに素直じゃない。

 これ以上聞いてたら微笑ましくて笑いそうだったし、そうしたら噛みつかれるのは明らかなんで帰ろうと思ったんだが……二人の回答は相反するものだった。


「じゃあ帰るわ。まークラスの事は諦めろ。俺にはどうしようもねーよ」


「あ……東堂 実」


「名前は言って……ないな。あんたも信濃の?」


「うん。見ての通りだけど獣人のフォンって言うの」


 よろしく、と頭を軽く下げる少女ーーフォンさんはどこかの王女サマみたく高圧的でなく、礼儀正しい少女だった。俺も釣られて頭を同じくらい下げる。しかしその頭を上げた時に見たフォンさんの様子は凄くおかしかった。

 細目を伏せ、何かを言おうとしてるのか口を開けているが躊躇う要素があるのだろうか、そこから言葉が発せられる事はない。罪悪感をこれでもかと塗りたくったような表情だし、頭部の耳も力なく伏せられている。な、なんなの……?


「ごめんなさい!」


「えっ」


「その信濃が帰る時に親友さんの目の前に帰ったら面白いんじゃないかなんて私が言ったから……!」


 え、えぇー……。なにそのカミングアウト。要は巻き込んですいませんでしたってことなのだろう。だから言おう。


「……謝る事じゃない。むしろ感謝してるくらいさ」


 そうなんだよ。信濃が帰ってきても俺の前に帰ってこなきゃ再会する前に拉致られた可能性が高い。そのまま会えなくなるくらいならついてった方がマシってもんだろう。

 まぁ拉致直後は入学するしないでグダグダ言ってた気がするけど。そんなのはよく考えれば一択しかないなんてわかりきった事だった。だからその発想に至ったフォンさんにはグッジョブと言わざるを得ない。


「楽観的ですわね」


「これが性分なもんで。ま、そういう訳だから気にしなしていいよ」


 そもそも直接の原因となった信濃なんて喜んでそうだからな。自惚れじゃなければだけど、異常な世界を今度は俺という親友と体験し共有出来る。これは信濃にとって大いに喜べる事に違いない。その裏で俺は生きるか死ぬかのサバイバル状態な訳だが。


 それじゃあね、なんて背を向けて帰り出す俺。ちらっと後ろを覗いたらお辞儀してるのが見えた。信濃には勿体無い、出来た子だな。


「ってま、待ちなさい! 私の話がーー」


 俺は全力で逃げた。

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