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第16話:一緒に寝る!?

「え!? は!? 毎晩一緒に寝る!?」


 驚きのあまり僕は目を丸くした。ユーナは一体何を言ってるんだ!?


 ユーナは頬を赤く染め、短く切り揃えられた青い髪を右手でいじりながら体をもじもじさせている。どうやら、一緒に寝るというのがどういう行為なのか、その行為がどういう意味を持っているのかは分かっているらしい。分かっているなら、何でそんなことを言うんだ?


「ちょ、どういうことですか? 嘘ですよね?」


「嘘ではありません。私はベール様に心と体を捧げる運命なんです。この家で一緒に生活して、一緒に寝るのは当然です。2回ハグをした仲ですし」


「い、いやいやいや! ちょっと待ってください! 当然じゃないですよ」


 僕は両手をぶんぶん振りながら言葉を返す。心臓がどくんどくんと脈打つ。頬が、全身がかーっと熱くなっていく。


 彼女いない歴=年齢、ばきばき童貞の僕が、絶世の美女であるユーナと一緒のベッドで寝るなんて心臓に悪すぎる。心臓がもたずに破裂してしまうかもしれない。ユーナは何を考えているんだ? そんなに童貞の僕を殺したいのか?


「当然です。神話には従わなければなりません」


「待って待って! おかしいですよ! その、男女が一緒に生活するとか、1つのベッドで寝るっていうのはすごく特別な行為だから、そんなおいそれとは出来ないんですって!」


 高鳴る胸を右手で押さえながら僕は叫ぶ。


「特別な行為だということは私も分かっています。しかし、神話で定められている以上、私はベール様と一緒に生活し、一緒に寝る必要があります。私はベール様に心と体を捧げる身ですから。この家にこのベッド以外の寝具は何もありませんし」


「訳分からないですよ! そもそも心と体を捧げるって何ですか!? 僕に捧げるってことですか!? 別にいいですよ捧げなくて!」


「だから神話には従う必要があるんですって! 私は今から職場に戻る必要があります! 午後8時には戻ってきますから、それまでこの家でゆっくりしていてください! 食事は帰ってきてから私が作るので心配なさらず! あ、キッチンの床下にビットを分配するための配管が通っていますので、興味があったら見てみてください! では!」


 ユーナは早口で言い、足早に階段を駆け降りた。


「ちょ、ちょっと待ってください! まだ話は終わってませんよ!」


「何も話すことはありません! 書斎の本は全て自由に読んでいいですからっ!」


 ユーナはどたばたと家から出て行った。1人残された僕は、白いベッドに視線を向けて溜め息をついた。


 困った。いや、困ったというか、混乱だ。まさかユーナと一緒のベッドで寝ることになるなんて。あれだけの美女と一緒のベッドで眠るなんて悪い気はしない、というかめちゃくちゃ嬉しいのだが、唐突すぎてどうしても混乱してしまう。


 ベッドに横たわり、僕を手招きするユーナを想像すると、なんだか股間の辺りが熱くなってきた。僕はぶんぶんと首を振って妄想を振り払い、階段を降りてキッチンに向かった。ビットが分配されている配管とやらに興味が湧いたのだ。


「どれどれ……お、これかな?」


 キッチンの床に視線を向けた僕は、小さな取っ手があることに気付いた。取っ手を掴んで引っ張ると、ハッチのようなものが開き、床下の様子を見られるようになった。


「おお……」


 床下には幾つもの透明な配管が張り巡らされており、その配管の中には液体状のビットが流れていた。恐らくこの国のあらゆる家庭にこうしてビットが分配されているのだろう。


 先程王宮で見た時には延べ棒のような形をしていたビットが、今目の前で液体になって配管の中を流れている。固体、液体、気体と流動的に変化すると聞いて水を思い浮かべたが、元の世界では人間は水が無いと生きていけなかった。


 そしてこの世界では、ビットが無いと人々は生きていけないのだろう。水とビット。なんだか不思議な繋がりを感じる。満足した僕はハッチを閉じ、書斎をチェックするべく3階に向かった。


「うおお……!」


 思わず声が漏れる。そこには、大量の本棚、そして2階の書斎の本の量を遥かに上回るものすごい数の本が所蔵されていた。


「すごい……」


 呟きながら、僕は本棚に歩み寄った。小さな本、大きな本、分厚い本。薄い本。多種多様な本が保管されている。


 幼少期、父親に幾度となく連れて行ってもらった図書館の様子を思い出した。沢山の本に囲まれ、胸が躍ったのをよく覚えている。


 ここは家の一角だが、本の量的に小さな図書館と表現しても違和感はない。自由に読んでいい、とユーナは言ってたし、何か読んでみるかと思い僕は読む本を吟味した。


「あ」


 思わず声が漏れる。古びた分厚い青い本の背表紙には、『パーブルー神話』と書かれていた。


 ユーナは事あるごとに、神話という言葉を口に出している。その神話とやらについて詳しく知りたいと思っていたのだ。僕は本を取り出し、近くのソファに腰を下ろした。


「えーっと、なになに……」


 まずは表紙を捲る。パーブルー神話、というタイトルが書かれており、次のページには目次が記載されていた。


 1.世界の創造とビット

 2.文才と英雄ベール・ジニアス

 3.神々と人々

 4.最終戦争

 5.終焉

 6.輪廻転生

 7.再生


 どうやら7章構成らしい。僕は早速文章に目を通してみた。


「文章はけっこう洗練されてるな……えーっと、なになに、はじまりの無の空間にアルマスとベルティーニがまず生まれ、そこから火と水、緑、光と闇の5大エレメントが生まれた……へええ、なんかそれっぽいな」


 呟きながら僕は本を読み進めていく。


「エレメントは膨張して互いに融合し、やがて時間と空間の概念を生み出し、宇宙が誕生した……なるほど……って、あれ?」


 そこでとある疑問が頭に浮かんだ。


 何で文章が読めているんだ?

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