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第11話:キャラクタークリエイト

 鏡に映っていたのは、超絶イケメンな青い髪の男だった。


 な、何だこれ!? いくらなんでもイケメンすぎないか!? 陰キャの僕にこの顔はちょっとミスマッチすぎるって!


「ベール様、どうしましたか?」


「何やねん急に大声出して」


 僕が発した素っ頓狂な声に反応して、ユーナとジャッジマシンが近づいてくる。


「いや、だって僕の顔、ちょっと怖いくらいかっこいいから、びっくりしちゃいまして……」


「ああ、なるほど。たしかにベール様の顔は非常に整っていますよね。パーブルー王国を救う英雄ベール・ジニアスは、他を寄せ付けない圧倒的な文才と、群を抜く美貌を持ち合わせると神話に書かれていました。神話通りですね、とてもかっこいいですよ」


「男前やなぁほんま。妬けるわぁ」


「神話通りっていうか、ちょっと、これはさすがにやりすぎじゃないですかね……」


 元いた世界の僕の容姿は、中の中くらいだった気がする。イケメンの同級生やタレントを見て、「僕もあれくらいイケメンになりたいなぁ」と思ったことは何回かあるので、異世界転生したことで図らずもその願いは現実になったといえる。


 しかし、これはちょっと度が過ぎている。身長はどうやら元々の170センチと殆ど変わってないようだが、顔があまりにも違いすぎる。何なんだこれ。キャラクタークリエイトが可能なゲームで30分以上かけて作成した最強イケメンキャラみたいだ。髪型はツーブロック風味で、怖いくらい均整がとれた顔に見事にマッチしている。


「かっこええに越したことはあらへんやろ? 何やねんその複雑な表情」


「物事には限度ってものがあるじゃないですか。これはやりすぎですよ。顔が整いすぎていて逆に怖いです」


「ワテにはその辺の塩梅はよう分かれへんなぁ。もうええやろ? はよ国王様の所へ行こうや」


「ああ、はい……」


 僕は再び歩き出したが、鏡に映った自分の顔が脳裏に焼き付いて離れなかった。超絶イケメンになれたのに、そこまで嬉しくないのは何故だろう。


「あ、そうだ、ベール様に神話について説明しておきましょう」


「はい」


「神話の正式名称は、パーブルー神話です。この世界が誕生した時から今に至るまで、脈々と語り継がれている神話になります。世界の創造、神々と人々が織りなす長い歴史、神々と戦士の最終戦争、世界の終焉などが主なテーマですね。その神話の中に、パーブルー国が存亡の危機に瀕した時、異世界から英雄ベール・ジニアスが降臨し、国を救ってくださるという記述があるんですよ」


 歩を進めながらユーナは神話について説明をしてくれた。


 なるほど、どうやらこの世界にもちゃんとした神話があるらしい。以前神話を題材にした小説を書いた際、色々な神話を調べたためなんとなく神話についての知識はある。神々と戦士の最終戦争、というのはなんとなく北欧神話に似ている気がする。あれは神々と巨人の戦いだったけど。


「ほんまに、ベールはんが来てくれて助かったで。最近のうちの代表はめっさ調子が悪ぅてしんどいからなぁ」


 床の上をすーっと移動しながらジャッジボックスは声を出す。


「代表って何ですか?」


「王国の代表のこっちゃねん。この世界にはビットっちゅうエネルギーがあって、そのビットの配分量をテートルで決めんねん。代表が王国を背負って戦うっちゅうわけやな。代表選手になると特別報酬がもらえんねんで。めっちゃの大金やさけ、皆代表選手になりたがっとる」


「代表が国を背負って戦うってワールドカップみたいですね。えっと、パーブルー王刻は負け続けてビットが減ってるらしいじゃないですか」


「せやで。バトルに勝った王国はより多くのビットがもらえて潤い、バトルに負けた王国はもらえるビットが減って弱る。最近パーブルー王国はバトルで負けてばかりやねんで。せやさかいめちゃくちゃ弱ってんねん。代表の選手の調子がどうも悪ぅて、おもろい小説が全然書けてへんねんなぁ。加えて他の王国の代表が強なってんねん。例えば最近イーエロ王国にめちゃくちゃ強い新人が現れてんで。その新人が他の人に小説の書き方のノウハウを教えてしまっとるみたいで、ただでさえ強かったイーエロ王国がますます強なってんねん」


「なるほど……」


 めちゃくちゃ強い新人、か。バトルをジャッジするジャッジマシンがそう表現するのだから、本当にとんでもない文才を持ち合わせているのだろう。


「ベール様、ビットを見てみませんか? すぐ近くにビットが貯蔵されている非常倉庫があるので、ちょっと寄っていきましょう」


「あ、はい」


 歩くこと1分ほど、僕たちはビットが貯蔵されているらしい非常倉庫の前に辿り着いた。外見は、よく家の裏に置いてあるような小型の倉庫だ。倉庫を構成している金属の色は灰色。照明の光を受けて鈍く輝いている。


「ここです。有事を想定して王宮の至る所にビットが保管されているんですよ」


 ユーナはそう言い、倉庫の扉を開けた。


「わああ……」


 思わず僕は声を漏らした。倉庫の中には、延べ棒のような形状をした金色の物体が所狭しと並べられていた。


「いつ見ても綺麗やんなぁほんまに」


「これがビットですか……すごいですね……」


「せやろ? これがこの世界のみなを支えとんねんな。ワテもこれがあるから動けとる。逆にこれが無かったら何も出来ひんっちゅうわけですねん」


「触ってみてもいいですか?」


「勿論です。どうぞ」


 好奇心に駆られ、僕はおずおずとビットに手を伸ばした。長さ30センチ、幅10センチ、高さ5センチほどのビットは、信じられないほど軽かった。まるで風船を持っているかのようだ。ビットの見た目は金色の琥珀のようで、内部には光る粒子のようなものが無数に存在しているのが見て取れる。


「軽い……」


「そうなんですよ。何故かとても軽いんです」


「今は固体の状態ってことですよね?」


「そうです。場合によって気体や固体になります」


 ビットの表面を撫でてみる。スベスベしていて触り心地がいい。加えて、上手く表現出来ないが、触っている箇所からほのかな力のようなものを感じる。ほんの少しだけ手が痺れてくるというか、そんな奇妙な感覚だ。


「ありがとうございます、よく分かりました」


「よかったです。では国王様のところへ行きましょう」


「行くで〜」


 僕はビットを倉庫に戻し、再び歩き出した。ビットを触ってみて、なんとなくすごさが分かった。あれは普通の物体じゃない。そして、そんなビットの配分量がテートルの勝敗によって決まってしまうのはなかなかワイルドだな、と今になって思う。


「着きましたね」


 程なくして僕たちは重厚な扉の前に辿り着いた。扉は青い金属で構成されており、ほのかに輝いている。


「この中に国王様がいます。少し変わっていますが、いい人なので安心してください」


「ベールはん、国王様はめちゃくちゃかわいいから期待しとってな!」


「あ、はい、分かりました」


「では行きましょう」


 ユーナが扉に触れると、ごごご……と音を立ててゆっくりと扉が開いた。それと同時に「来たな!」と張りのある凛とした声が飛んできた。


「よくぞ参った! 妾はそちらの到着を今か今かと待ち侘びていたぞよ!」


 だだっぴろい部屋の中央に、紫色の着物を纏った少女がぽつんと佇んでいた。

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