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第10話:王都

「ベール様、王都が見えてきましたよ。王都の中央に王宮がありますからね」


 ユニサスに乗って飛ぶこと30分弱。ユーナが前方を指差した。僕は前方に視線を向け、「すご……」と呟いた。


 ものすごい数の建造物が目に入ってくる。建造物の高さや大きさ、数は先程立ち寄ったメルビーの街のそれとは比べ物にならない。そして、建造物を構成している材料もメルビーの街のそれとは少し異なるように見える。


 あれが、王都。僕がもといた日本で例えるなら、田舎町と都心ほどの差がある。それほどまでに王都は先程のメルビーの街とは全てが異なっていた。


「すごいですね、王都って」


「パーブルー王国の首都ですからね。この国の中枢を担う様々な機関がこの王都に存在しています。王国内のあらゆる機能が集中しているとても重要な場所なんですよ」


「ワテが王都に来るんは久しぶりやなぁ。相変わらずとんでもない場所やでほんまに」


「昔はもっと栄えていたんですよ。今ではビットの配分量が減少している影響で、皆おとなしいというかあまり元気がありません。さあ、王宮に降りますよ。ベール様にはまず国王様に会ってもらいますからね」


 それからユニサスはしばらく飛び、やがて一際大きく、荘厳な建物の目の前に降り立った。僕、ユーナ、そしてジャッジマシンがユニサスから降りると、疲れた、とばかりにユニサスは短くひひんと鳴いた。


「長時間お疲れ様でした。ゆっくり休んできてくださいね」


 ユーナがユニサスの体をそっと撫でると、ひひーん、とユニサスは甲高く鳴き、どこかへ走り去っていった。


「えっと、あのユニサスはこれからどこに行くんですか?」


「専用の厩舎です。王都の中には複数の厩舎が点在していて、業者が多数のユニサスを管理しています。あのユニサスさんは今から自分の厩舎に戻り、疲れを癒すというわけです」


「なるほど……」


 ユーナの説明に頷きを返し、僕は目の前の巨大な建物に視線を向けた。


 なんとなく、建物の雰囲気は日本の国会議事堂に似ている。以前政治を題材にした小説を書いた際、国会議事堂の外見などを詳細に調べていたのを思い出して懐かしい気持ちになった。


 入り口と思わしき部分の前に複数の円柱が連なっている点や、さながら中央塔のようなものがある点、横に長く建物が続いている点などけっこう似ている部分は多い。


 しかし大きさが違う。高さは100メートル以上、長さは500メートル以上あるだろう。青い石のようなもので建物全体が構成されている。巨大な青い円柱が壁面に沿うように大量に連なっており、神殿とも表現出来そうだ。


 そして、至る所に高射砲や迫撃砲、機関銃のようなものが設置されている。戦闘に備えているのだろうか。いや、そもそも脅威となる敵がいるということか?


「では、行きましょう」


「よっしゃ行くで〜」


「はい」


 僕はユーナと並んで歩き出した。ジャッジマシンはすーっと地面の上を移動している。思わず僕は「え!?」と声を出してしまった。


「どうしましたか?」


「いや、その、ジャッジマシンの移動の仕方がなんか……」


「なんやねん」


「どういうことですか? 浮いてるってことですか?」


「せやで」


 顔文字が書かれている面を僕の方に向け、さも当然といった様子でジャッジマシンは言葉を返す。先程バトルをしていた時は気付かなかったが、どうやらジャッジマシンは僅かに地面から浮いているようだ。


「そっか、浮いてるんだ、す、すごいですね……」


「大したことおまへんで。他のジャッジマシンも皆同じやで」


「いやいや、大したことですよ。僕の世界では物体が浮いてるのは普通じゃないです。どういう原理で浮いてるんですか?」


「原理なんて分からへんわ。なんとなく1レンチ浮いとんねんな」


「レンチ? この世界の長さの単位はレンチなんですか? それってどれくらいの長さなんですか?」


「レンチはレンチやからなぁ、説明がややこいな」


 ユーナは1レンチの長さを2本の指で示してくれた。どうやら元の世界の5ミリほどの長さのようだ。つまり、2レンチ=1センチ。さらにレリ、レートルという単位もあるらしい。名前が絶妙に似ているだけに慣れるまでは混乱しそうだ。


 僕はこの世界について殆ど何も知らない。状況が落ち着いたらユーナにこの世界の基礎知識を一通り教えてもらいたいな、と思った。


 王宮の周りにはあまり人がいなかった。時折目に入るのは、刀や槍を装備している兵士のような人間だ。視線を感じながら幅の広い道を進んでいき、やがて巨大な扉の前に辿り着いた。「止まれ」と近くの兵士が僕たちに声をかけた。身長が高く、髪を刈り上げている強面の男だ。軍服のような服を身に纏い、腰から刀を提げている。


「身分証を」


「どうぞ」


 ユーナは懐から小さなカードのようなものを取り出して兵士に見せた。兵士はカードに視線を向け、小さく頷いた。


「ユーナ・キーブルーだな。要件は何だ」


「国王様に謁見を賜るべく参上しました。こちらの方を早急に国王様と面会させる必要があります」


 ユーナは僕を手で示した。兵士はじろりと僕を睨んだ。眼光の鋭さに思わずたじろんでしまう。


「誰だこの男は」


「ベール・ジニアス様です。我々がずっと待ち望んでいた英雄が、先程祠に降臨したんですよ」


「ベール・ジニアスだと? それは本当なのか?」


「ほんまやで! さっきのバトルでワテが100点を出したんやから間違いおまへん! 文階は脅威の12617や!」


「100点……12617……そうか、神話は本当だったというわけか。ベール様、どうかパーブルー王国を救っていただきたい。バトルで勝利して多くのビットをもたらしてくださることを切に願っております」


「あ、はい……」


 僕がベール・ジニアスだと分かるやいなや、兵士は態度を一変させて僕に頭を下げた。巨大な扉が音を立てて開き、僕たちは王宮の中に足を踏み入れた。ユーナが先頭を歩き、僕とジャッジマシンが後に続く。


「はああ、とんでもなく広い建物やなぁ。ユーナちゃんに案内されなんだら、迷ぉてまうでこんなん。よほどのことがあれへんと王宮の中には入れへんねけど、ワテは前から一度王宮に入ってみたいと思っとったんやで。ベールはんとユーナちゃんについていけば入れるんとちゃうかな、と思っとってんけど、大正解やったで!」


 ジャッジマシンはぴょんぴょんと飛び跳ねている。どうやらテンションが上がると飛び跳ねるようだ。


 王宮の中を進んでいく。建物の材質はコンクリートに似た何かに見える。ここだけ見ると日本のどこかの建物の中にいるようだ。しばらく歩いていると、壁に全身鏡が立てかけてあるのが目に入った。自分の姿形を確認するチャンスだ。


「ちょっと、あの鏡で自分の姿を確認したいんだけど、いいですかね? この世界に来てから、まだ一度も自分の姿を見てないので」


「いいですよ」


「かまへんで」


 僕は早足で全身鏡に近寄り、自分の姿を確認した。そして叫んだ。


「な、何じゃこりゃああああああ!!!!!」

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