表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エロゲの悪役に転生した俺、主人公の邪魔をせず義妹とだけイチャコラしてたら、なぜか主人公とラブラブなはずの正ヒロインが病み始めた  作者: せせら木


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/33

第19話 二人きりの部屋。陽花は葵。

 部屋に入るや否や、言葉通り俺は陽花からキスされた。


 それは軽いものなんかじゃなく、俺の何もかもを奪うような、暴力的で、しかし優しいものだ。


「とらくん……とらくん……私が上書きする……あの女のキス……私が上書きするの……」


 それだ。


 きっと陽花の目的はそれで。


 俺は今、陽花に洗われている最中なんだと思った。


 抵抗することなく、ただ義妹に身を預ける。


 ツインテールが揺れて、陽花の前髪が額に触れた。


 汗ばんでいて、互いの吐息と吐息がぶつかる。


 ごめん、と。


 謝罪するように俺は舌を陽花のものに絡ませた。


「……とらくん……」


 俺の弱々しい積極性を感じたからか、陽花はいったん唇を離して静かに俺の名前を呼んできた。


 その瞳にはどうしようもない興奮が見て取れる。


 俺も溺れたくなっていた。


 この密室の雰囲気に。


 血の繋がりの無い、義妹との絡みに。


「……陽花……俺は……本当のところお前の知ってるお兄ちゃんじゃないんだよ」


「知ってるよ。九条部長にそう言われてたのも聴いてたから」


「……それでも、いいのか?」


 小さな声で問うと、陽花は静かに頷く。


「構わない。どんなとらくんも私は好きだから。私の傍にいてくれて、私を大切にしてくれるお兄ちゃんだから」


 血の繋がりは無いけど。


 俺が付け足すように言うと、陽花は冗談っぽく「幸運だよね」と返してきた。


 血の繋がりがないからこそ、こうして心置きなく好きなことができる、と。


 でも、俺は思う。


 きっと陽花は、血の繋がりがあってもこうして俺を求めてきていたんじゃないか、と。


 それは勝手な想像でしかなく、俺の妄想でしかないのだが。


「……とら……くん……」


 顔と顔が近い。


 抱き合う俺たちは、その一線を越えるかのようにベッドの上へ移動した。


「そういえば……ここはエロゲの世界だった」


 呟くと、陽花は小さく笑い、


「そういうの、今は無し」


 と返してくる。


 俺たちは、そのまま電気をつけずに肌と肌を重ねた。


 二人きりの部屋。


 父さんと母さんが家に帰ってくるまで。






●○●○●○●






 ふと、俺は陽花に尋ねた。


 葵は陽花なのか、と。


 彼女はハッキリした答えをくれない。


 誤魔化すわけでもなく、本当によくわからなさそうにして苦笑するだけだ。


「わかんない。でも、もし私がとらくんの言う葵さんなら、そうだったらいいのになぁ、って思う」


 素肌を晒し、布団にくるまった状態で言う陽花。


 俺は少しだけ間を空けて義妹に返す。


「不思議なんだ。なんで俺はこんなにも陽花のことが好きなのかなって」


 また陽花は笑う。


 そんなの、私が可愛いからだよ、と。


 冗談っぽく言ってきた。


 それは間違いないと思う。


 でも、それだけじゃない何かがあったのだ。


「そういや、九条部長は葵の記憶が無くなってるって言ってたな」


「じゃあ、私なんじゃないの? 葵さん」


「そういう感覚ある? 生まれ変わった感」


「無いよ。あるわけ無いじゃん。生まれた時から私は私だし」


 変な質問だ。


 そう返すしかない。


 俺も自分で笑ってしまった。何を言ってるんだろう、と。


 陽花の髪の毛を指先でいじりながら。


「でも、葵さんにもし会えたとして、とらくんはどうしたいの?」


 上目遣いで問いかけてくる義妹。


 核心をついてくる質問に対して、俺はふと考え込む。


「どうしたいの、か。そう言われると……悩むな」


「伝えたいことがある? 好きだよって」


 別に好きだよに限った話ではないと思うのだが。


 真顔で問われて、いったん俺は否定した。


「好きだよ、に限った話じゃないけど……なんていうか、なんで死んじゃったのかとか、死ぬ前は楽しく生きてたかとか、色々聞きたい」


「色々、ね。そんなに好きなんだ、葵さんのこと」


「好きだな。過去形じゃなくて、たぶん俺はずっと好きなんだと思う。転生してまでこうしてあいつの影を追っかけてるから」


 転生する前はその辺りが曖昧だった。


 いや、曖昧にさせていた。


 正木俊介は臆病な男だったのだ。


 そこまで好きな女の子に対しても想いを伝えられない。


「……今なら言えるな」


「……? 何を?」


 陽花に問われる。


 正直に話した。


「好きな女の子に、好きって言えるよ、って」


 陽花はクリっとした瞳で俺をジッと見つめてくる。


 そして、改めて横になったまま俺に抱きついてきた。


「葵さんだったらいいな、私」


「たぶん葵だよ、陽花は」


「若野先輩じゃない?」


「違う。絶対違う」


「でも、あの人もとらくんに付き纏ってる」


「それはあいつの訳わかんない行動だ」


 言うと、陽花は俺の胸に額をぐりぐり擦り付けてきた。


「監禁しないって言ったけど、したくなってきた」


「それは俺の生活に支障が出る」


「じゃあずっと傍にいたい。とらくんの傍に」


 いいと思う。


 けど、それは何も陽花からばかりじゃない。


「俺も気を付ける。なるべく陽花の傍にいる」


 誓った言葉は、俺の中で深く刻まれた。


 若野瑠香。


 あいつには今後より一層気を付けよう、と。


 強く思うのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ