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エロゲの悪役に転生した俺、主人公の邪魔をせず義妹とだけイチャコラしてたら、なぜか主人公とラブラブなはずの正ヒロインが病み始めた  作者: せせら木


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第14話 占いの謎

 昼休みが終わり、午後の授業が始まる。


 四限と五限があって、その時間に設定されている科目といえば、大体が現代国語とか日本史世界史とかの社会科目だ。週の時間割表を見る限り、どうもパターン化されていた。


 それで、この日は四限が日本史で移動教室だったのだが、別教室へ向かう道中、俺は深々とため息をつきながら足取り重く一人で歩いている。


 声を掛けてきて、一緒に別教室へ行こうと言ってくれる奴もいたが、体調が悪いから、と先に移動してもらった。


 申し訳ない。


 残念ながら、今の俺には考え事が多すぎる。


 気を遣って伊刈虎彦を演じる余裕もなかったため、一人にさせてもらった。


「はぁ……」


 止まらないため息。


 頭にあるのは、まず陽花のことだ。


 さっき、昼休みが終わるのと同時になんとか自分の教室へ帰したものの、放課後は絶対に一秒たりとも離さない、と宣言され、俺の自由はまるで無くなってしまったのだ。


 いや、もちろんそれ自体はいい。


 最初から、今日の放課後は陽花と過ごすって決めていた。


 そこはいいんだけど、問題は陽花の様子だ。


 明らかに何かおかしくなり始めている。


 なんと表現したらいいのかわからないのだが、雰囲気が瑠香……いや、葵か……?


 とにかくあいつに近付いていってる気がするし、何よりも勢いが凄い。


 俺のすべてを自分のモノにせんとばかりに密着して、マーキングするように体を擦り付けてくる。


 そんなマーキングなんて大袈裟な、と思われるかもしれないが、さっき実際に「陽花の匂いを付けておく」って言われたばかりだ。マーキング以外の何物でもない。猫かとツッコみたくなった。


 放課後、陽花との距離感について考えておかないといけない。


 好きだけど、俺はそう思って静かに覚悟を決めた。ちゃんとしなければ。


 で、諸々ある中のもう一つ。


 葵のことだ。


 いや、正直なところ『葵』と呼ぶべきなのか、俺はまだ悩んでいるところだ。


 瑠香は確かに自分のことを『葵』だと言っていたが、細かく質問をしてその情報の正確性を確かめたわけじゃない。


 そもそも、なんであいつが俺の境遇について知っているのか。


 転生者であると認知し、そのことについて動揺せず、淡々としていられるのか。


 わからない。わからなさ過ぎる。


 大体、葵は記憶を失ったうえでこの世界に転生してきてるんじゃないのか。


 九条部長の言ってることと葵の……いや、瑠香の言ってることが合わない。


 まるで複雑に絡み合った糸みたいだ。


 どうにかして一つ一つ解いていき、謎を解明しないと。




「――なるほどね。それで、今君はそうやってため息をつきながら歩いていた、と。ふふふっ。よくわかったよ」




 一人で廊下を歩いていた矢先、誰もいないと思っていた左側から声を掛けられる。


「――!?」


 俺は跳ねるようにして驚き、その様を見ている九条先輩は面白げにクスクスと笑った。


「別にそんなに驚くことはないだろう? 休憩時間なんだし、この空き教室で一人佇んでいただけだよ?」


 一人佇むって。


 確かにこの階は三年生の教室があるところだけど、昼休みでもあるまいし、一人で佇む必要なんてあまり無い気がする。


 よっぽど教室にいたくないか、教室で寝たふりもできないかのどちらかだと思う。


 いくらなんでも不自然過ぎた。誰もこんなところに九条先輩がいるなんて予想できない。


「驚きますよ……。なんで四限前のこの時間に一人で佇んでるんですか。自分の教室で次の授業の準備してたらいいじゃないですか」


「してたよ。でも、ふと窓際の席から外を覗いたら、君がこの階に上ってきているのが窓越しに見えたからさ」


「どんな千里眼の持ち主だ……」


「千里眼じゃないって。普通普通。あ、ここ通るのかなーってね」


 それでわざわざ空き教室に待機しておくって、どう考えても普通じゃない。


 どんだけ暇人なんだよこの人……。


「……まあ、何でもいいですけど。じゃあ、俺はここで。おわかりでしょうけど、次移動教室なので」


「待った。いいのかい? 私と二人きりになれるチャンスをみすみす逃して」


 心の中で「は?」と強めの疑問符を浮かべる。


 たぶん顔にはその怪訝に思う気持ちが全面に出ているはずだ。失礼だろうけど、そこはもう遠慮無し。


 当の九条先輩も俺の失礼さを見て苦笑し、それを看過しながら続けてきた。


「私に訊きたいこと、山ほどあるんじゃないのか? それ、今ここで特別に答えてあげてもいいよ?」


「ご自慢の水晶は無いのに、ですか?」


「あんなものはただのまやかしさ。雰囲気を出すだけのおもちゃとでも言おうか。私は何も無しに君のことを読めるんだ。驚くべきことにね」


「本当です。驚いてます。何者なんですかあなたは?」


 九条先輩は笑った。そして返してくる「れっきとした人間だよ」と。


「とぼけないでください。ただの人間がそんな他人の境遇を悟れるなんてことあるはずがないでしょ? そんなことできたら、あんたはとっくの昔に逮捕ですよ」


「ご指摘ありがとう。けれど、私もそこのことろは充分気を付けて生きているからね。君のような存在が出てきた時、すべてを話す気でいた」


「おたのしみだったってわけか」


「そ。おたのしみだったの。おかげで今はとてもワクワクしてるよ。秘密の断片を君に話せるとわかればね」


 断片なのか、と思う。そこまで来たら全部話して欲しい。


「じゃあ、遠慮なく訊きます。瑠香に俺の事情を吹き込んだの、九条先輩ですか?」


 俺が問いかけると、彼女は微笑を浮かべるのだった。


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