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騎士ですが、奈落道を行きます  作者: PuRi
始まりの記憶
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プロローグ





ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド




地鳴りのような音がして、数キロ先の建物が崩れ落ちたのだと気づく。崩れ落ちた建物から、瓦礫やら破片やらが舞い降り、砂埃が辺りを覆い被る。その近くにいた人々はつんざくような悲鳴を上げ、瓦礫の下敷きになっていった。ある人は、破片が体に刺さっても余力を尽くして逃げ周り、ある人は上手く避け続け、ある人は母親の名を叫び泣き続ける。この世の終わりのような、地獄のような光景だった。



敵軍が、残った人々を捕まえ始める。逃げ回るものには銃を、抵抗するものには鞭を。捕まったもの達は、馬車へと乗せられた。抵抗できないよう眠らされ、次々と馬車へ詰められる。

悲鳴、絶叫、泣き叫び…………。




空は、血のように真っ赤に染まっていた。まるで地獄絵図のような光景が繰り出されている。誰が、この地獄を終わらせてくれるのか。いつまで、この地獄が続くのか。人々が嘆き、悲しむこの世界に。







希望など、まるで感じさせなかった。









___________________________________



「司令官様、どういたしましょう。」

司令官様、と呼ばれた王国の騎士、セヌは王国軍の基地で、地図に駒を置いては駒を取る、を繰り返していた。


どうにも、押されている。これまで2000年もの間、我が王国は戦争において敗けを期したことなどただの一度もないと言うのに。ましてやここ数年で軍事力も他国と比べ髄分と抜きん出ていたはずなのだ。

それが、どうして。

軍事力も、国勢もさほどない敵国に、押されることなどあるだろうか。


なにかが、違うのだ。なにかが、原因で、なにかが、狂っている。


セヌが握っていた駒が、パキャンと音を立てて砕けた。

冷静に、ならなければ。

セヌは母親譲りの黒曜石のような純黒の瞳をそっと閉じた。最近は瞳を閉じると、なぜだか無性に実家が懐かしくなる。近頃忘れかけていた暖かみ……。ああ、こんな戦場なんてほっぽりだして、家に帰りたい、、、。



「セヌ様………。」



ひと休みなんてさせないとでも言うように、横から忌々しい女性の声が聞こえる。ああ、女はついてくるなと言ったのに……。ましてや王国軍本部室にいれるなんて……。


セヌは、目をそっと開けて王国の第二王女を見た。戦場用にと動きやすく作られた男物の召し物を身につけ、長い髪を高い位置で人括りにしている。女性入室禁止のはずが、なぜか王女には許可されていることに、なかなか納得がいかなかった。セヌににらまれたと思ったのか、王女は肩をビクリとさせたが、言葉を続けて発した。


「このままでは我が軍は負けますわよ。」


そんなの、わかっている。


「そうなれば、我が国は歴史上始めての敗北を期すことになるわけでありますわ。」


それも、わかっている。知らないとでも思っているのか。


「あなたは責任を負わされ、騎士のくらいを剥奪されるでしょう。挙げ句、伯爵と言う身分にさえも泥を塗ることになりますわ。」


だから、何だと言うのだ。どのみち、この戦いが終われば騎士など、やめてやるつもりだったのだ。

彼が、いない騎士団なんて……。



彼が、いなくなったから。彼が、その王国に背を向けると言うから。彼が、彼であったから-----。



セヌは低い声で言った。

「もう、お休みください。」

王女は忠告に耳を傾けないセヌにムッとしたのか、先程よりきつい声で嫌よ、と言った。

「あなた、どういう状況かお分かりになって??余裕をこいている場合ではなくてよ??」

ああ、もう。なにもかも、面倒だ。


セヌが、思わずうるさい、と言おうとした、その時---。







「敵の襲撃です!!!!王国軍の基地へ襲撃です!!!!直ちに逃げる準備を---。」






向こうから、来た。バタバタという音がして、騎士達が駆けていくのが視界に入った。なぜ騎士なのに逃げるのか……と、疑問がよぎったが、まだ体制が整っていないこの時期だからこそ、ひとまず逃げて体制を立てなければならないのだろう。


「お逃げ下さい。」

セヌは足をバタつかせる王女を横抱きにして、そばにいた衛兵に投げた。ぞんざいな扱いに、無礼だと思われるかも知れないが、どうでもよかった。


「私が行こう。」


向こうからやってくると言うならば、行ってやらねば。


「あっ、司令官様ッ……!」

セヌは鎧をすぐさま身に付け、逃げ惑う騎士達の流れに逆流して襲撃犯目指してかけていった。軍のテントがいくつか焼かれている。方向的に、武器庫を狙ったようだ。バァンと砲撃の音がする。血の匂いがした。


セヌが駆けつけたとき、現場では何人かの騎士が襲撃犯に立ち向かっていた。が、数秒もたずあっけなく殺される。

騎士達を脅かせた襲撃犯は、一人だった。一人で、王国軍の基地にはいり、襲撃をしたのだ。



彼が、セヌを見た。



プラチナブランドの光輝く金髪。血を固めて作ったかのような、真っ赤な瞳。唇はただれ、こめかみからは血が流れている。それでも、その美しい容姿は際立っていた。

セヌは、彼に出会った頃を思い出した。まだ幼さの残る彼が、毎日苦悩しながら王女の護衛をしていた、あの頃。セヌの後に続いて仕事をしていたあの頃。セヌと共に戦場を駆けた、あの頃。



今は、我が国の背信者だと、しても。



昔とは変わった姿をしていても、それでも、彼は、彼なのであり、彼と言うことに、変わりないのだ。


ああ、やっと、会えた。


彼の名前は、




「アベル……。」




悪魔の子だ。



これから様々な展開をいれていくつもりですので、付き合っていただければ嬉しいです!

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