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【#79】地下4階・第三話:骸王の最期

 リッチロードの杖が振り下ろされる。


「——冥府の業火よ、全てを呑み尽くせ」


 漆黒の炎が渦巻き、俺と追跡者を飲み込もうと襲いかかる。


 だが——


「遅い」


 俺は迷わず前へ踏み込んだ。

 ペンダントが光を放ち、呪いの炎が霧散する。


「何……?」


 リッチロードの骸骨の顔に驚愕の色が走る。


「まさか、また……!」

「何度やっても無駄だ。お前の呪いは、俺には届かねえ」


 黒い剣閃が闇を裂く。

 ミスティが唸り、リッチロードの腕を斬り飛ばした。

 骨が床に転がる。

 だが、奴はまだ笑っていた。


「フフ……甘いな」


 切断された腕が黒い靄とともに再生する。


「我が魂は永劫不滅。死を超越した存在に、お前の刃が届くとでも?」


 俺は無言で剣を構え直した。


「ミスティ、いけるか?」

「……可能だ」


 ミスティの声がかすかに響く。


「蓮、私の力は既に高まっている。奴の核を断ち切れば、完全に消滅させられる」

「核、ね……」


 リッチロードの体を見つめる。

 不死の存在は、大抵どこかに弱点を持つ。

 この場合、間違いなく——


「——その胸の奥か」


 リッチロードの胸部、ローブの奥で淡く光るものが見えた。


「……ほう、気づいたか」


 骸骨の顔が不敵に歪む。


「だが、貴様ごときに届くかな?」


 魔力が収束する。


「——冥獄の門」


 空間が裂け、無数の骨の手が伸びる。

 俺を捕らえ、冥府へ引きずり込もうとする黒き腕。

 だが、俺は——


「……そんなもんで、止まるかよ」


 剣を振るい、全てを斬り払う。

 その瞬間——


 ——俺の背後から、影が迫った。


「……チッ!」


 追跡者だ。


 奴は俺がリッチロードに集中している隙をついて、剣を叩き込もうとしていた。

 だが、俺もそんな間抜けじゃない。


 ——すれ違いざまに、ミスティを振るった。


 黒い刃が追跡者の肩を裂く。


「……ッ」


 僅かに怯んだ隙を逃さず、俺は床を蹴った。


「終わりだ、リッチロード」


 骸王の胸部めがけ、全力でミスティを突き立てる。


「——断て、黒閃!!」


 深々と突き刺さる魔剣。


「……が、ッ……!?」


 リッチロードの体が痙攣し、黒い光が弾けた。


「バ、カな……! この私が……!」


 奴の体が崩壊し、骨が砕け、粉々に散っていく。


「ぐ、あああああああああ!!!」


 断末魔の叫びとともに——


 リッチロードは完全に消滅した。


 ——しかし。


 辺りには、なおも黒い霧が漂っていた。


「……何だ、これは」


 消えたはずのリッチロードの残滓か?

 それとも——


 黒い霧は濃度を増し、俺と追跡者を遮った。俺は僅かに警戒を強めながら、その場から動かずにいた。

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