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【#77】地下4階・第一話:呪われし光の中で

 階段を上りきると、ひやりとした空気が肌を撫でた。


 地下4階——呪いの光が満ちるフロア。


 ぼんやりと漂う紫がかった光が、まるで霧のように空間を覆っている。

 何の前触れもなく、全身がじわじわと蝕まれるような感覚が広がった。


「……なるほどな」


 これは、いるだけで生命力を削られる類の呪いか。

 ミスティを握る手に力を込めながら、前方に目を凝らす。

 歪んだ柱や崩れかけた石壁の間から、アンデッドたちがぞろぞろと現れた。

 鎧をまとったスケルトン・ウォーリア、腐敗した肉をぶら下げたゾンビ、這いずる亡者たち——。

 それぞれが、明確な殺意をもって俺を囲むように迫ってくる。


「……こいつらに囲まれたまま呪いに削られるのは、さすがにマズいな」


 ミスティを振るい、前衛のスケルトンを一刀のもとに両断する。

 黒き魔剣が煌めき、敵の魔力を吸収しながら俺の傷を僅かに癒やした。

 だが、次々と現れるアンデッドたちは数が多すぎる。


「蓮、前方に強い魔力の反応——」


 ミスティの声が警戒を帯びたその瞬間、闇の奥から禍々しい気配が膨れ上がった。

 ゆっくりと姿を現したのは、リッチロード——この階の主だ。

 全身を黒と紫の法衣で包み込み、骸骨の顔に邪悪な光を宿す存在。

 片手には魔導書、もう片方には腐食した杖を握っている。


「……フフフ、亡者となることを恐れるか?」


 低く響く声が、ダンジョンの奥へと重く広がる。

 リッチロードが杖を掲げると、紫色の魔法陣が浮かび上がり——


 ——瞬間、呪いの波動が俺を直撃した。


 ——はずだった。


 だが、俺の身体に何の影響もない。


「……?」


 違和感に気づき、首元のペンダントを手で確かめる。真新しい魔力の残滓があった。


「……シエナのか」


 15階で拾ったシエナのペンダントが、微かに輝いている。

 リッチロードの魔法を、完全に無効化していた。

 自身の意思で力を引き出し、障壁を張らなければ役に立たないと思っていたが——


「……自動発動か。なるほど、これはありがたい」


 俺は口元にわずかな笑みを浮かべ、ミスティを構え直した。


「じゃあ、気にせず——叩き潰すとしようか」


 リッチロードの瞳が、不気味な光を放った。

 だが、俺に迷いはない。


 ——地下4階の主との戦いが、今、始まる。

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