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【#69】地下6階・第五話:影が踊る夜

 ——魔物たちの宴は、まだ終わらない。


「くっ……!」


 俺は跳躍し、崩れかけた足場に着地した。

 赤黒い液体が跳ね、血の匂いが鼻を刺す。


 追跡者が迫る。


 海賊の三角帽を被り、黒いコートを翻しながら——俺に酷似した”影”が、無表情のまま剣を振るった。


 キィン——!!


 ミスティを迎え撃たせ、激しく火花を散らす。


「チッ……しつけぇな……」


 こいつは、“俺”だ。

 ならば、俺の戦い方も手の内も知り尽くしている。


 ——“普通にやり合えば”、長引く。


 なら、こっちも”普通”じゃない手を使うしかない。


「ミスティ、行くぞ」

「ええ、“吸わせて”」


 俺は一瞬だけ背後を振り返る。


 そこには——


 瀕死の魔物たち。

 無数の悲鳴を上げながら、助けを求めるかのように手を伸ばしていた。


「……悪いな」


 俺は刃を振るう。

 肉を断つ感触とともに、ミスティの黒刃が赤く染まった。


「……ッ、く……!」

「エナジードレイン効果を確認」


 ——力が、満ちる。


 心臓が高鳴る。

 視界が研ぎ澄まされる。

 筋肉が、骨が、血流が、戦闘に適した状態へと最適化されていく。


「っ……ハハ、こりゃすげぇな……」


 追跡者が動く。だが、遅い。“見える”——!


「お前の動きは”俺”が一番知ってるんだよ!!」


 俺は床を蹴り、刃を振るう。

 ミスティの刃が追跡者の腕を断ち切る。


「——ッ」


 表情こそ変えないが、追跡者の動きが鈍る。


「今度は……こっちの番だ」


 俺は更に踏み込み、連撃を繰り出した。


 ——一閃。


 ——二閃。


 追跡者の身体が裂け、血が舞う。


「……ッ」


 その場に膝をつき、静かに霧散していく影。

 追跡者、消滅。


「ふぅ……」


 息を整えた、その瞬間——


 ドドドドドッ!!


 ——階段の方から、重い足音が響いた。


「……今度はなんだ?」


 俺が顔を上げると、そこには——


 エルゴスの戦闘員たち。


「蓮……やはり生きていたか」


 先頭に立つ男が、俺を睨む。


「お前たち……」


 見覚えがある。


 かつて俺がSランク覚醒者だった頃、共に任務に就いた連中だ。


「悪いが……お前はここで死んでもらう」


 男が剣を構えた。


 ——“縁”がある。


 俺と彼らの間には、過去の因縁がある。

 そして、ミスティは——


「蓮、“食べて”いい?」


 黒刃が妖しく光る。


「……ああ。いいぞ」


 心の中でほくそ笑む。やっとアタリが来たか。

 刃を握る手に、力が入る。


「——さぁ、始めようぜ。久々の”仲間割れ”をよ」


 血戦の幕が、今、上がる——。

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