【#67】地下6階・第三話:ハロウィンの狂宴
——視界が歪み、次の瞬間には牢獄の外へと放り出されていた。
咄嗟に構えを取る。
ここがどこかもわからない。転送装置があったとはいえ、俺を安全な場所に送るとは限らないのがこのダンジョンのクソなところだ。
「……ここは?」
薄暗い光が灯る通路。床には赤黒いカーペットが敷かれ、壁には不気味な装飾が施されている。まるで、“ハロウィンの館”とでも言うべき雰囲気だ。
——そして、通路の奥から、異形の者たちがこちらを見つめていた。
「トリック・オア・トリート?」
カボチャの頭をした奴が、ゆっくりと首を傾げる。
その隣には、ミイラと化した修道女、狼の頭を持つ貴族風の男、背中にコウモリの羽を生やした子供のような影……
どいつもこいつも、まるで”仮装”したかのような魔物たちだ。
だが——
「……助け……て……」
微かに、“人間の声”が混じっていた。
「クソッタレが……!」
またかよ。
こいつらも、“融合体”なのか。
俺の前に立つカボチャ頭が、ゆっくりと両腕を広げる。
「さぁ、楽しい夜の始まりだ」
——次の瞬間、空間が歪んだ。
ギィィィィィンッッ!!
耳を裂くような音が響き、俺の足元に魔法陣が浮かぶ。
「っ!?」
即座に後方へ飛び退る。
その瞬間、俺のいた場所に巨大なカボチャの手が叩きつけられた。
「おいおい、これが”トリート”か?」
俺は冷笑しながら剣を構える。
「なら、こっちも”トリック”で返すとするか」
ミスティが淡く光を放つ。
「……ふふ、ハロウィンにはお菓子よりも血が似合うわね」
俺は一気に駆け出した——。




