表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

66/102

【#65】地下6階・第一話:終わらぬ悪夢の回廊

 足を踏み入れた瞬間、違和感を覚えた。

 壁、天井、床——すべてがどこか歪んでいる。

 朽ちた街灯が立ち並び、空には巨大な三日月が浮かんでいる。

 まるでハロウィンの夜そのものだ。


「……また妙な場所に来たな」


 俺は剣を握り直し、慎重に進む。


 すると——


「た、助けて……」


 声が響いた。

 影の向こうから、よろめく人影が現れる。

 だが、その姿を見て、俺は眉をひそめた。


 ——人間と、魔物が融合している。


 手足は人間だが、胴体は膨れ上がり、背中には無数の触手。

 顔は涙を流しながらも、目だけは獣のように光っている。


「助け……殺して……助けて……ッ!」


 次の瞬間、そいつは叫びながら襲いかかってきた。

 俺は迷わず剣を振るう。


 ズバッ!!


 刃が魔物の身体を断ち、鮮血が飛び散る。


「ぐ……あぁ……!」


 倒れた魔物は、最後まで「助けて」と呟きながら絶命した。


「……クソッタレ」


 エルゴスの仕業だろう。

 奴らはこんなことをしてまで戦力を増やしているのか。


「どうする?」


 ミスティが問いかける。


「どうすることもできないだろう。全部斬る他にない」


 そう答えながらも、心の片隅では打算的な考えを巡らせていた。

 もしも俺に縁のある者が魔物化していれば、ミスティの力になる。地上に帰還し、エルゴスの本部を破壊する、という目的を第一に考えるなら、分の悪い話ではない——

 自分はここまで冷酷で狡猾だったのか、と嫌になる。だが、自己嫌悪に陥っている暇はない。


 再び周囲を警戒しながら歩を進める。

 しかし——気づけば、俺は同じ場所に戻っていた。


「……なるほどな」


 このフロア、適当に進んでいると元の場所に戻る仕掛けか。

 どこかに”正しいルート”があるはずだ。

 と、その時だった。


「トリック・オア・トリート!」


 突然、上空から声が響く。

 見上げると——

 カボチャ頭の魔物が宙を舞っていた。


「ハッピーハロウィン!」


 ——ドンッ!!


 カボチャ頭が何かを投げつける。

 それが地面に着弾した瞬間——

 視界が一変した。


「ッ……!?」


 俺はいつの間にか、暗い空間に閉じ込められていた。

 周囲は石造りの牢獄。


「……クソ、やられたか」


 異空間に飛ばす能力か。

 だが、こんなところで足止めを食うわけにはいかない。


「ミスティ、ぶち破るぞ」

「ええ、やってみましょう」


 俺は魔剣を構え、一気に振り下ろした——。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ