【#51 】地下9階・第四話:二度目の掃討
──ズキリ。
頬をかすめた傷がじんじんと痛む。だが、それも長くは続かなかった。
ミスティの力が、俺の傷を癒していく。
剣を握る手に微かな温もりを感じる。
エナジードレインの効果で、流れた血が逆流するように戻り、傷口が塞がっていった。
「相変わらず、便利な能力だな……」
俺は息を整えながら呟いた。
──だが、状況はまだ終わっていない。
エルゴスの戦闘員たちは依然として俺を包囲し、じりじりと間合いを詰めてくる。
それだけじゃない。
もうすぐ”死神の掃討”が来る。
「蓮、どうする?」
ミスティの声が頭に響く。
「死神の攻撃まで、あと1分もない」
俺は魔法陣の位置を確認しながら、周囲の敵の動きを読む。
──普通の敵なら、こんな場所で戦おうとは思わない。
だが、彼らは悠然と構えたまま、逃げる素振りを見せない。
「……なるほどな」
俺は戦闘員の腰元を見て、気づいた。
護符。死神の攻撃を軽減するアイテムを持っている。
「お前ら、死神の掃討をやり過ごすつもりか」
一人の戦闘員が無言で護符を掲げて見せた。
その表情には余裕すら浮かんでいる。
「残念ながら、俺はその手は使えねぇ」
俺は低く息を吐き、次の瞬間──駆けた。
魔法陣へ向かって、一気に突破する!
「止めろ!」
戦闘員たちが一斉に動き、刃が閃く。
だが、俺はミスティの加護を頼りに、最小限の動きでそれを躱す。
「邪魔だ──!」
俺の剣が一閃し、最も近くにいた戦闘員の胸を貫く。
血が噴き出し、奴は苦悶の表情を浮かべて崩れ落ちた。
「次!」
俺はさらに踏み込み、もう一人の首を狙う──が、その瞬間、地面が震えた。
──死神の掃討が始まる。
俺は迷わず魔法陣へ跳び込んだ。
同時に、黒い波動がフロア全体を覆い尽くす。
即死攻撃。死神の浄化の波動。
エルゴスの戦闘員たちは護符を掲げ、防御態勢に入った。
護符の光が彼らの周囲にバリアを張り、攻撃を軽減しているのが分かる。
だが──完全無効化ではない。
「が、ああ……っ!」
戦闘員の一人が膝をつく。
護符の力は強力だが、死神の攻撃を完全には防げないらしい。
「なるほどな……」
俺は魔法陣の中で息を整えながら、彼らの様子を観察した。
この護符がなければ、奴らも死神の掃討に耐えられない。
次の15分後。
俺は奴らを護符ごと消し去る手を考えながら、剣を握り直した。




