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【#46】地下10階・第五話:暗闇の果て、待ち構える影

 闇が視界を埋め尽くす。


 俺は剣形態のミスティを片手に、静かに息を整えた。この暗闇のギミックは、ダンジョンの環境に適応できない者には致命的な障害となるが、俺には関係ない。覚醒者としての能力のひとつ──「闇視」のおかげで、視界は完全ではないものの、黒の濃淡として周囲の輪郭を捉えることができた。

 問題は、俺以外の連中もこの暗闇の中にいることだ。


 ガッ──


 背後から迫る気配に反応し、瞬時に身を沈めた。

 直後、追跡者の腕が俺の頭上をかすめて通り過ぎる。奴らもこの環境に適応できていないらしいが、勘だけで襲いかかってくる。動きに迷いがないのは流石といったところだ。

 俺は剣を振るい、追跡者の腕を斬り落とした。手応えがあった──が、すぐさま別の殺気が背後から迫る。


 ──今度は魔物か。


 ギョロリと光る瞳が暗闇の中に浮かび上がる。魔物はこのギミックの影響を受けないらしく、正確に俺の位置を捉えていた。四つ足の異形の影が地を滑るように接近し、鋭い爪を振り下ろす。

 俺はミスティを盾にするように構え、魔物の爪を受け止めた。だが、その隙を狙ったかのように、追跡者が横から突進してくる。


 ──クソが。


 瞬時に魔物を蹴り飛ばし、同時にミスティを横薙ぎに振るう。刃が追跡者の胴体を断ち割り、闇の中に血飛沫が散った。


「蓮、囲まれてる」


 ミスティの声が剣から響く。

 分かってる。だが、ここで時間をかけるわけにはいかない。地下9階に続く階段へ向かわなければ。

 俺は魔物たちの包囲を突っ切るように走り出した。暗闇の中で目を光らせる魔物どもが襲いかかってくるが、全てを相手にしていたらキリがない。最小限の回避と迎撃で距離を取り、俺は一直線に階段を目指した。


 やがて、階段が見えてきた。


 だが──そこには既に「奴ら」が待ち構えていた。


「やれやれ、ずいぶんと乱暴な逃走劇じゃないか」


 暗闇の中、男が姿を現す。


 かつて俺が所属していた国家防衛特務局(NDSB)の上官──マーカス・レインズ。


 NDSBは政府直属の組織であり、覚醒者の管理・指揮監督を担う機関だ。覚醒者は強力な力を持つが故に、時に政府にとっても制御不能な存在となる。その監視役として、また対エルゴスの前線部隊として、NDSBは機能していた。

 だが、問題なのは、マーカス・レインズがエルゴスと内通していることだ。


「久しぶりだな、蓮」


 マーカスは薄く笑う。その背後には、エルゴスの戦闘員たち──魔物と融合した異形の兵士たちが控えていた。彼らは理性を保ったまま強化された戦闘部隊であり、エルゴスの忠実な駒だった。


「随分と騒がしくしてくれたじゃないか。だが、お前はもうSランク覚醒者ではない。もはや我々にとって、“管理対象”ですらないんだよ」

「……それで、どうするつもりだ?」


 俺は剣を構えながら問いかける。

 マーカスは肩をすくめ、軽く手を振った。


「決まってるさ。お前を”処分”する」


 暗闇の中、エルゴスの戦闘員たちが一斉に襲いかかってきた。

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