【#45】地下10階・第四話:強制転移、そして戦闘
視界が歪んだかと思った瞬間、強烈な光に包まれた。
──転移する。
足元が抜ける感覚とともに、意識が引きずられるような感覚が襲い、次の瞬間──俺は巨大なクリスタルの輝きの前に立っていた。
「……戻ってきたか」
地下10階の大広間。
ランダムテレポーターの効果で、独立した記録保管空間からここへ飛ばされたのだろう。
「さっきの記録……どういうことだ、ミスティ」
俺はミスティを見下ろしながら尋ねた。
エルゴスの実験体に志願し、機密情報を持って逃亡したSランク覚醒者──ロザリンド。
彼女はエルゴスに射殺されたはずだった。だが、記録には「死によって術が完遂された」とあった。
そして、俺の手にはミスティがある。
その人間形態は、ロザリンド・E・アルムガルトの顔写真によく似ている。俺の記憶から抜け落ちた師匠の顔──
「……ミスティ。お前はロザリンドじゃないのか?」
ミスティは沈黙する。
やがて、小さな声が響いた。
「……私にも、確かな記憶はない」
「嘘をつくな」
「本当よ。ただ……記録にあった”死によって完遂された術”という言葉には、心当たりがある気がする」
「それは……」
その瞬間だった。
──ギィィィンッ!!
甲高い金属音とともに、周囲の暗闇の中から無数の影が現れた。
「っち、魔物か……!」
炎をまとった飛行魔物、影のような瘴気を放つ異形の獣、そして──
「またお前か……」
俺と同じ姿の追跡者。
漆黒の剣を構えた”もう一人の俺”が、静かにこちらを見つめている。
「蓮、来るわ」
ミスティの声と同時に、魔物たちが一斉に襲いかかってきた。
「上等だ!」
俺は剣を振るい、迎え撃つ──!




