【#40】地下11階・第三話:灼熱の迷路
炎の海に囲まれた細い足場を進みながら、俺は前方の様子をうかがう。
浮遊する足場は一定の間隔で移動し、回転するものもある。飛び移るタイミングを誤れば、足を滑らせて炎の海へ真っ逆さまだ。
だが、それだけではない。
「……また出てきたか」
燃え盛る炎の中から、飛行魔物が複数体浮かび上がる。
鳥のような姿をしたものもいれば、人型の影が炎をまとって浮遊しているものもいる。
物理攻撃が通じない厄介な相手──だが、対処法はある。
「ミスティ、行くぞ」
「ええ、準備はできてるわ」
俺はミスティを構え、魔力を込める。
次の瞬間、ミスティの刃が淡い光を帯び──冷気が周囲に広がった。
「凍れ──《フロスト・エッジ》!」
炎の魔物に対する最も有効な手段、それは”熱を奪う”こと。
魔剣ミスティは魔力を込めることで氷の刃へと変化し、周囲の熱を一瞬で凍結させる。
「──ハァッ!!」
渾身の一閃を振るうと、冷気が炎の魔物たちを包み込む。
飛行魔物の動きが鈍り、燃え盛っていた体が凍りついていく。
──カチンッ!
一瞬の静寂。
そして──
──パキィィィン!!
凍りついた魔物が砕け散り、炎の海に消えていった。
「……よし」
完全に倒し切ったわけではないが、一時的に戦闘不能にはできた。
時間を稼ぐには十分だ。
俺は足場の先に目を向ける。
消える橋がいくつも点在し、炎の海の上に浮かぶように並んでいる。
ただし、どの橋がいつ消えるのかは不明。渡るタイミングを間違えれば、そのまま炎の中へ落下することになる。
「慎重に進むしかないな……」
俺は深呼吸し、消える橋へと足を踏み出した。
──だが、その瞬間。
「遅いじゃないか」
背後から聞こえたのは、俺自身の声。
振り向くと、そこには俺と全く同じ姿の追跡者が立っていた。
服装も髪型も、顔も体格も、何もかもが俺と同じ。
そして、その手には禍々しい魔力を帯びた剣が握られている。
「……やはり復活したか」
俺が飛行魔物を利用して炎の海に突き落としたはずの追跡者。
だが、やはりそれだけでは倒し切れなかった。
「今度は、俺の技を見せてやるよ」
追跡者が剣を構えた瞬間──その刃が淡く光り、俺の《フロスト・エッジ》と同じ冷気が漂い始めた。
「……コピー能力、か」
俺のスキルまで真似できるとなると、今まで以上に厄介な相手だ。
「さて、どうする?」
俺は剣を構え、追跡者と向かい合う。
灼熱の迷路での戦いが、再び始まろうとしていた。




