【#3】地下20階・第三話:死地を越えて
閉じ込められた通路の中、俺はゆっくりと息を吐いた。
「蓮、前方に敵影があります——クロウラースパイダー3体、ダークウォーカー2体、ヘルハウンド1体」
ミスティの冷静な声が響く。
……なかなかの組み合わせだな。
クロウラースパイダーは素早く、毒を持つ。
ダークウォーカーは影を利用して回避する。
ヘルハウンドは魔炎を操る上に耐久力が高い。
だが、問題はない。俺のやることは変わらない。
「——まとめて潰す」
俺はミスティを構え、一直線に駆け出した。
——まずはクロウラースパイダー。
3体が一斉に飛びかかってくる。
素早いが、動きは単調だ。
「邪魔だ」
ミスティを横薙ぎに振るう。
ズバンッ!!
刃が鋭く閃き、3体の蜘蛛が一瞬で両断される。
「エナジードレイン、回復効果が発動しました」
ミスティの無機質な声と共に、傷ついた体が回復していく。
「次——」
ダークウォーカーが剣を構え、影の中に消えた。
どこから襲ってくるか分からない厄介な敵。
だが、影に潜んでも——俺の直感は誤魔化せない。
「——そこか!」
振り向きざまに剣を突き出す。
ザンッ!!
影から現れたダークウォーカーの胸を貫き、そのまま引き裂く。
「エナジードレイン、効果増大」
全身に力が漲る。
「最後は——ヘルハウンドか」
黒炎を纏った魔犬が、低く唸りながら突進してきた。
——速い。だが、それだけだ。
「ミスティ、対応する」
「了解しました」
剣を構え、真正面から突撃。
ヘルハウンドが牙を剥いた瞬間——
ズバァン!!
俺の刃が、魔犬の喉元を一閃する。
血飛沫が舞い、ヘルハウンドが崩れ落ちた。
「敵を殲滅しました」
「ふう……」
魔剣を握り直し、周囲を確認する。
もう、魔物はいない。
「ミスティ、階段までの経路は?」
「今のところ障害物は見当たりません。進行可能です」
「よし——行くぞ」
俺は息を整え、階段へと向かう。
暗闇の奥、階段が静かに待ち構えていた。
地下19階への階段は、目前だ——。