【#31】地下13階・第二話:回る床
追跡者を天井の罠で潰したとはいえ、時間を稼いだにすぎない。あいつは必ず復活する。俺は迷わず先へ進むことにした。
通路は依然として回転床と落下する天井のギミックだらけだ。慎重に進まなければならない……が、そんな余裕は与えてもらえなかった。
ゴゴゴゴ……ッ!!
奥の通路から、ずるずると蠢く影。
魔物の群れが現れた。
それも、ただの雑魚ではない。
——鉄棘獣。
全身が鋼鉄の棘で覆われた四足獣。こいつらは並の剣では傷一つつかない上、動きも素早い。そして、数が多い。
「……ふむ」
俺は一瞬で状況を把握し、戦略を立てた。
このフロアのギミックを利用する。
まともに戦えば消耗するだけだ。回転床と落下天井がある以上、無理に戦う必要はない。
俺はわざと後退しながら、魔物を誘導するように動く。
奴らは棘を逆立てながら突進してくる。
その勢いのまま、回転床へ——
グルンッ!
魔物が踏み込んだ瞬間、床が大きく回転し、数体がバランスを崩す。そして、そのすぐ上には……
「——潰れろ」
ドゴォンッ!!
天井の巨大な岩が落下。鋼鉄の棘を持つ獣たちを一瞬で押し潰した。
だが、まだ終わらない。
後続の魔物たちが立ち止まり、俺を警戒している。知性がないわけではないらしい。だが、それならそれでやりようはある。
俺はミスティを構え、一歩前へ出た。
そして、足元の床を思い切り蹴る。
——ガシャンッ!
瞬間、回転床が逆回転。俺は後方へ跳び、魔物たちは意図せず前へ押し出される。
そして——またしても、天井が落ちた。
ズドォンッ!!
響く轟音とともに、魔物たちが瓦礫の下敷きになる。
……上出来だ。
ほとんどの魔物を罠で一掃し、残った数体は弱っている。これなら仕留めるのは容易い。
俺はミスティを振り、最後の敵を切り伏せる。血は流れず、ただ静かに崩れ落ちる鉄棘獣。
「さて……次は……」
戦闘の余韻も束の間、背後から嫌な気配が迫る。
——追跡者だ。
潰されたはずの”俺”が、ゆっくりと瓦礫の中から起き上がる。傷一つない。
やはり、こいつは何度でも復活する。
俺は舌打ちしつつ、次のエリアへと足を踏み入れた。
だが、その先にはさらなる罠が待ち構えていた。
——落下天井と回転床の”複合トラップ”。
「……本気で殺しにかかってるな」
だが、そんなものに怯むつもりはない。
俺はすでに、この階層の攻略法を見つけている。
——ギミックを利用して、敵を出し抜く。
再び追跡者を罠へと誘い込みながら、俺は出口を目指して駆け出した。