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【#27】地下14階・第二話:鏡の中の追跡者

 俺は鏡の中の”俺”——追跡者を睨みつけた。

 鏡の中で、奴もまた俺と同じように睨み返してくる。

 だが、決定的に違う点がある。


 ——奴は鏡を自在に移動できる。


「……どこから来るつもりだ」


 俺が一歩踏み出した瞬間、鏡の中の追跡者が消えた。


 ——否。


 鏡の中を滑るように移動し、別の場所から現れたのだ。


(クソッ……想像以上に厄介だ)


 これがもし、単なる瞬間移動能力なら、動きを読めば対処できる。

 だが、奴は常に鏡の中を移動し続けている。

 そのまま俺の真横の鏡から飛び出し、短剣を振り抜いた。


 ヒュンッ!


「——ッ!」


 ギリギリで回避し、即座に反撃する。

 だが——俺の刃が追跡者に届く直前、奴は鏡へと消えた。


「……まるで幽霊だな」


 奴の能力は、単なる鏡のトラップを遥かに超えている。

 鏡の中を”道”のように扱い、好きなタイミングで出現・攻撃を繰り出す。

 しかも、俺の攻撃が届く瞬間には消えることができる。


 ——ならば。


「ミスティ」


 俺は小声で呼びかけた。

 手にした魔剣が微かに震える。


「了解……蓮」


 ミスティは俺の考えを察したのか、淡く輝きを増した。

 追跡者の能力が厄介なのは、実体を持たずに移動できることだ。

 ならば、奴が出現する瞬間を狙って——


「来いよ、鏡の亡霊」


 俺はわざと隙を見せるように立ち止まった。

 当然、追跡者は反応する。

 すぐさま別の鏡から飛び出し、短剣を振りかぶる。


「——今だ」


 その瞬間、俺はミスティを鏡に向かって突き刺した。


 ザンッ!


「——!!」


 追跡者が飛び出す直前、その”通路”を潰したのだ。

 破壊された鏡の破片が飛び散り、追跡者は別の鏡へと逃げ込む。

 しかし、攻撃のタイミングが狂ったせいで、俺への攻撃には繋げられなかった。


「……なるほどな」


 鏡がなければ、奴は移動できない。


 だったら——


「片っ端から割ってやる」


 俺はミスティを振り上げ、一気に鏡を破壊し始めた。


 バキィンッ! ガシャァンッ!


 鏡が割れるたび、追跡者の逃げ場が減っていく。

 奴は慌てたように移動するが、明らかに行動が鈍っていた。


「どうした? さっきみたいに好き勝手に動いてみろよ」


 挑発しながら、俺はさらに鏡を砕いていく。


 ——そして、ついに。


 鏡の数が減り、追跡者が出てこられる場所が限られた。


「……終わりだ」


 俺は最後の鏡を破壊するべく、ミスティを振り上げた。


 だが——


「……!」


 その時。


 割れかけた鏡の向こうで、“何か”が動いた。

 それは、追跡者とは違う”何か”だった。


 ——鏡の中に潜む、別の魔物。


「……面倒だな」


 俺は息を吐き、ミスティを構え直した。


 このフロアの攻略は、まだ終わりそうにない。

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