【#25】地下15階・第五話:墓場の回廊
エレベーターが使えない以上、残された道は一つしかない。
——階段を探し、上へ進む。
俺はダンスホールを後にし、静寂に包まれた回廊を進んだ。
ここはまるで墓場のような雰囲気だ。
壁には無数の燭台が並び、青白い炎が揺れている。
「……臭うな」
鼻をつく腐臭が漂っている。
やがて、前方に見えてきたのは広間——そして、そこにたむろする異形の影。
「……アンデッドか」
朽ち果てた鎧に身を包んだ戦士たち。骨だけになった騎士や、膨れ上がった死体が、俺の気配に気づき、振り向いた。
その瞬間、一斉に襲いかかってくる。
「……まとめて片付けるか」
俺はミスティを構え、駆け出した。
まずは、前方のスケルトンナイト。
錆びた大剣を振り下ろしてくるが、その動きは鈍い。
「遅いッ!」
ザンッ!
ミスティの刃が胴体を貫き、一撃で砕く。
次の瞬間、左右から腐敗したゾンビ兵が迫る。
「まとめて消し飛べ!」
俺は剣を横薙ぎに振り、エナジードレインの力を込める。
ミスティの刃が闇の波動を纏い、黒い衝撃波がゾンビどもを飲み込んだ。
「グギャアアア……!」
断末魔とともに、ゾンビたちは崩れ落ち、闇の塵となる。
だが、まだ終わりじゃない。
奥から、一際巨大な影が現れる。
「……これはまた随分と厄介なヤツが来たな」
黒い甲冑を纏った死霊騎士——デスナイト。
コイツは並のアンデッドとは違う。
強固な防御力に加え、高い戦闘能力を誇る強敵だ。
デスナイトは無言のまま、大剣を振り上げ、一気に振り下ろしてくる。
「——ッ!」
俺は紙一重で回避し、ミスティを構え直す。
コイツを倒すには、力押しじゃダメだ。
ならば——
俺はわざとデスナイトの剣圧を受けながら、間合いを詰めた。
「これで終わりだ——ミスティ!」
刃を逆手に持ち替え、デスナイトの首元に突き刺す。
その瞬間、ミスティが闇の波動を放ち、デスナイトの身体が崩壊していく。
「……消えろ」
最後の一撃を叩き込み、デスナイトを完全に消し去った。
「ふぅ……」
戦いが終わり、俺は息を整える。
そして、目の前には階段があった。
青白く光るエルゴスの紋章が刻まれた階段。
エレベーターの扉にもあったこの紋章は、俺が通るたびに反応する。
——やはり、コイツが追跡者の発生装置になっているのか。
だが、今は考えても仕方ない。
俺は紋章を横目に、階段を上がる。
その瞬間、背後で青い光が赤く染まった。
だが、特に何も起きない。
「……まあいい、進むしかない」
俺は深く息を吐き、地下14階へと足を踏み入れた。




