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【#22】地下15階・第二話:ダンスの相手は

 ダンスホールの中央に立つエルゴスの戦闘員たちが、静かに俺を睨んでいた。

 護衛対象であるシエナが離脱したことで、彼らの役目は変わったのだろう。


 ——俺の始末。それが今の優先事項というわけだ。


 黒い戦闘服に身を包んだ兵士たちは、それぞれ武装している。銃器を持つ者もいれば、近接戦闘用のブレードを構える者もいる。だが、ここは通常の戦場とは違う。


 ——この死霊のダンスホールでは、下手に動けば自滅する。


「おいおい、本気でここでやるつもりか?」


 俺は軽く肩をすくめながら、周囲を見回す。


 半透明の骸骨たちが、音楽に合わせて優雅に踊っている。直接攻撃してくることはないが、触れるだけでダメージを受ける厄介な存在だ。

 そして、ホールを取り囲むように広がる溶岩の海。熱気が肌を刺し、底知れぬ赤黒い光がゆらめいている。

 戦闘員たちは俺を警戒しつつ、ゆっくりと間合いを詰めてきた。


 ——そのときだった。


 ゴポン……ゴポポポ……


 鈍い音が響く。


「……っ!?」


 溶岩の海が泡立ち、何かが這い出してくる。


 真紅の甲殻に覆われた巨大な魔物。


 六本の脚を持ち、鋭利な鎌のような腕を構えるその姿は——まるで地獄から現れた巨大なカマキリのようだった。

 俺の視線がそちらへ向いたのを見て、戦闘員の一人が呟く。


「……《ヘル・スコルピオン》か」


 その名の通り、魔物の尾にはサソリのような毒針がついている。溶岩の中を移動しながら、ステージの端に這い上がり、ゆっくりとこちらを見据えた。


 ——厄介なことになった。


 溶岩の海から現れる魔物は大抵耐久力が高い。しかも、この狭いホールでは機動力を発揮できない分、一撃の重さが鍵になる。

 だが、俺だけが狙われるとは限らない。


「……どうする?」


 俺はエルゴスの戦闘員たちに問いかけた。

 彼らも一瞬躊躇する。


 ——俺を優先して倒すか、それとも魔物を排除するか。


 答えを出したのは、《ヘル・スコルピオン》の方だった。


 ブシュッ!!


 魔物の尾が大きくしなり、毒針が一直線に戦闘員の一人へと飛んだ。


「ぐっ……!」


 戦闘員は咄嗟に回避したが、針はそのままダンスホールの床を貫く。


 ——すると、そこにいた骸骨が反応した。


 半透明のままゆっくりと振り向き、腕を伸ばす骸骨。その手が戦闘員の肩に触れた瞬間——


「が、あぁぁぁ!!」


 彼の身体が炎に包まれ、地面に崩れ落ちた。


「……ほう」


 骸骨は、魔物の攻撃にも反応するのか。

 となれば、この戦闘——利用できる。

 俺はミスティを構え、駆け出した。


「まずはお前らだ」


 剣を振るい、戦闘員の一人へ斬撃を浴びせる。


「くっ……!」


 間一髪で躱した戦闘員が反撃しようとした瞬間、背後の骸骨が動いた。


 バシュッ!!


 戦闘員の腕が骸骨に触れ、その瞬間、燃え上がる。


「ぎゃあぁぁぁ!!」


 悲鳴を上げる戦闘員を尻目に、俺はさらに動いた。

 《ヘル・スコルピオン》の攻撃も計算に入れ、骸骨を挟んで敵を追い込む。


「……っ、くそ!」


 生き残った戦闘員たちが焦り始めた。

 だが、その隙を俺は逃さない。


「ミスティ」

「……了解」


 魔剣が唸り、閃光が走る。


 ——そして、数秒後。


 残った戦闘員は全員、骸骨の炎に飲まれて消え去った。


 ……さて、次は。


 視線を《ヘル・スコルピオン》へ向ける。

 戦闘員を片付けたことで、俺が唯一の標的になったらしい。鋭利な鎌が構えられ、毒針が突き出される。


「さあ、踊ろうぜ」


 ミスティを構え、俺は魔物へと駆け出した。

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